見出し画像

車椅子座位での作業活動をするうえで

皆さんは車椅子座位で訓練をする時に気を付けている点はありますか?

・プラットホームに端座位で作業活動が行えなかったり
・端座位訓練では難易度が高く車椅子座位で行う方など
・車椅子座位でのADL獲得を目指す方など
 患者様は病院や施設において車椅子座位で過ごすことがありその中で訓練やADLを遂行される方をみます。

ではその時に理学療法士、作業療法士、言語聴覚療法士は車椅子のメリット、デメリットを理解したうえで環境調整や訓練の難易度を考えていることができるのか。またADLや車椅子からの基本動作に向けた効果判定などを行えているのか。
私自身が学んできた点をお話していきたいと思います。


1.車椅子座位のメリット/デメリット

病院では一時間車椅子座位で訓練、施設だと一時間以上座位をしている様子を見ます。
本来、車椅子という物は座位でを保ち続けるものではなく運搬するために作られた、人を運搬するために使用するものと言われています。
(以前車椅子の歴史を調べたらそう載っていました)
なので車椅子座位で訓練や作業活動、ADLを行うことで作られたわけではないということです。
しかし病院や施設では車椅子に乗らないとリハビリ室に行けなかったり、離床を進めることができないなどあると思います。
ではメリット/デメリットを急性期~回復期~慢性期を経験したうえでの考えを述べていきたいと思います。

・メリット
①移動が自分で困難な方や、端坐位姿勢の保持が困難な場合、車椅子座位なら姿勢を保つことができる。
②急性期だと車椅子に離床することで意識障害の改善、起立性低血圧の予防など図れる。
③寝返りや自分で起きて移動が困難な方だと車椅子座位になることで臥床状態よりは褥瘡や、拘縮の予防が図れる。
④G-upでの座位より車椅子座位のほうが食事がとりやすく、誤嚥しにくい。
⑤自分で移動できないため車椅子で移動しないと会いたくても会えない人に会えない。自分の趣味を行うことができない。
 など他にもたくさんあります。

画像1

デメリット(車椅子の性能により多少違う点もあります)
座面に関して
①たわみ:たわみがあると臀部への圧が分散されずらい、
 座面がまっすぐではないため不安定。
②奥行き:奥行きが長すぎる状態で背もたれにもたれると骨盤後傾位などの円背姿勢になりやすくそこからの動作が行いずらい
奥行きが短すぎると状態だと支持基底面が狭くそれに伴いバランスがとりずらい方もいます(自分で姿勢を自由に変換できれば特に問題はないです)。
③座幅:横幅が狭いとうまく座れなかったり擦過傷などけがをするリスクあり。
横幅が広いと左右の重心移動が困難、左右に対しての内乱や外乱に対して座位能力によってはバランスをとれない方もいます。

フットサポートに関して(足を乗せるところ) 
①高すぎる
大腿遠位後面が浮いてしまい重心が臀部に優位となり、圧の分散ができないことや、過度な股関節屈曲位での保持となり筋短縮の原因となる、支持基底面臀部と足底だけとなりバランスを取りずらくなることもある。

②低すぎる
足底がつきずらい、前方に重心を移動したり前方リーチをする際に
下肢で踏ん張れず重視移動やリーチ動作が行いずらい、支持基底面が足底がない状態となりバランスをとることができないこともある。

アームサポート(肘おき)に関して
①高すぎる
 肘を乗せようとすると肩関節外転位や肩関節2ndポジションをとるため
過度な肩挙上で疼痛が生じる場合あり。

②低すぎる
 肘を乗せようとすると体を丸めないといけないため円背姿勢や体幹前傾姿勢になってしまうことで動作が行いずらくなる。

バックサポート(背もたれ)に関して
①高すぎる
 高すぎると背面にもたれすぎて後方に重心が残りやすくなる。
もたれすぎると臀部が前に滑り落ちるリスクなどもあります。

②低すぎる
 低すぎると車椅子座位姿勢において背面の支持面が少なくなりバランスを崩しやすくなる場合がある。

③背張り
背張りが緩みすぎると骨盤後傾位、円背姿勢となり動作の遂行がやりにくくなる。

④角度
 前方に傾けると常に前方に重心があり前方への転倒リスクに繋がる。
 後方に傾けると後ろにもたれる形になり、前の物が見づらかったり
 活動が行いずらい。

以上のように車椅子座位はメリットもありますがデメリットもあります。
デメリットに関しては自身で除圧したりいざりなど姿勢の変換ができるのであれば問題になることは少ないと思います。 
しかし自分で姿勢変換できないのであれば静的、動的座位において影響を与えている要因だと考えられます。
・車椅子座位になったときに姿勢が崩れている人はいらっしゃいませんか?
・ただただ倒れているほうに何かを詰めている人いませんか?
・詰めても姿勢が直らない人いませんでしたか?

では次はデメリットをどのように解決するか考えてみましょう。

画像2

2.デメリットに対しての解決方法

デメリットをいくつかお話ししました1つずつ私の解決方法を全部お話しするととんでもない量になるので少しお伝えしたいと思います。

座面に関して
①たわみ:座面がまっすぐでないのであればタオルや座布団などを用いてまっすぐにする。
②奥行き:長いのであれば枕やタオルなどを用いて奥行きの調整をする。
基本長いのが多いのですが短いのであれば長くする。(車椅子の再度選択)
③座幅:広いのであればタオルを巻いたりして横に対しての支持面を与えることで車椅子座位での横に対しての動揺の軽減を図る。

フットサポートに関して
①高すぎる低すぎるのであれば高さを調整する。

アームサポートに関して
①フットサポートと同様で高さ調整をする。

バックサポートに関して
①高さ調整は車椅子をそのかたの背丈に合わせた車椅子に調整する。

②背張りは骨盤後傾から起きれない人であれば背張りを張ることで静的な状態でも骨盤が起きた状態で保たせることができる。

③角度はその方の目線になり、物が見やすい、作業が行いやすい目線かどうか確認する。

以上になります。そんだけと思った方。そんだけです。すいません。笑

しかしそのすべての条件を整えることで患者様が動作が行いやすくなったり、お尻が痛くなくなったり、笑顔でご家族やお友達とお話が楽しくできたり、好きなことが長時間できるようになるなど幅がすごく広がった経験を多くしました。

次は車椅子の条件整えたけど何が変わったかよくわからない、逆に整えたら姿勢崩れたり悪くなったなどあると思います。
そこで効果判定は何するの?に移りたいと思います。

画像5

3.車椅子座位における効果判定

効果判定に関してです。環境調整しても実際どこが変わったか、訓練においてもどのような機能を高めるために行うか、ADL、IADL上の何の改善を図るためかを考えないといけないかなと思っています。

では私が効果判定を行う上でみている点です。
①本人が環境調整を行い、不安や恐怖がないか。
 介入前と比べて安心するか。不安や恐怖が軽減、なくなったか。
(心理的負担があることで動作を行わない、行えないということがあります。)
皆さんも前や後ろ、左右に倒れそうと思ったら動きたくないですよね怖かったりしますよねそうゆう感じです。
②静的・動的での姿勢の崩れの軽減や姿勢が崩れることがなくなる。
 体幹前傾、後傾などを行ったり、体幹を側屈させたり内外乱での姿勢の崩れを確認することで転倒予防などの軽減を図る。
③上肢手指を動かしてもらう。もともとの疼痛など負担がない範囲で。
 車椅子座位において上肢手指の活動が多いと思います、
そこでどれくらい肩関節挙上、外転角度などの変化があるか
手指での物のつかみやすさ、握力、食事のしやすさの変化など。
STEFFの点数が変化するもありました。
④上下方、前方や左右へのリーチ距離
 リーチ距離が伸びることで食事の際に遠くの器を取れたり、リーチが必要なものをとることができる。特に床の物を拾おうとして前方に転倒するリスクを減らすことができる。
⑤長時間座位による前への臀部の滑り距離
 本人は起きたいけど前方に滑ってしまう。
(長時間骨盤後傾や背面にもたれていると前方に滑り落ちたり臀部への圧がかかりすぎてしまう。)
だが前方に滑ることがなくなればリスクが少なく起きて活動ができる。
⑥除圧
 除圧のシートがあればよいがない場合は自分は薄いクリアファイルや
ビニール袋を利用して圧がかかりすぎているところがないか見ます。
そこで引っかかるところがなければ一点に圧はかかりすぎていないと判断します(元々褥瘡がある方にする場合は注意が必要)。
⑦駆動距離の延長
 車椅子駆動する方もいらっしゃると思いますが環境調整を行うことで足がつきやすくなったり、手で駆動しやすくなったりなど車椅子駆動のしやすさにも変化がみられます。
⑧全身の筋緊張の変化
 座位姿勢が変化することで過緊張だった筋の緊張が軽減して筋の拘縮や短縮関節可動域制限などの予防もできる。

大きく以上の点を評価、効果判定することで車椅子でのADLやIADLにおいて本人さんが負担なく楽しく行うことができる一つの方法かなと思います。

話が少し変わりますが車椅子座位でここの環境調整したら座位姿勢が崩れなくなって上肢操作もしやすくなったというところがあった場合、
端坐位においても同様に患者様がうまく使えていないとこではないのか、端坐位においてのアプローチの介入のヒントにもなると思います。
・例えば患者さんが端坐位が怖いといってるがそれは日ごろから車椅子座位で支持基底面が狭く、足がついていなかったり、臀部も麻痺側だけや、健側だけしか接地していない習慣で生活していたり
・前方リーチも常に骨盤後傾していて前傾する習慣がなく筋が短縮したり、使用することがうまくできない、足底も接地しにくい習慣だと前方への重心移動やリーチも行いにくく、怖いですよね。
じゃあそこに関して支持基底面を拡大、荷重量を増やしたり、使いずらい筋肉を徒手アプローチや作業を用いて介入、訓練してみようという発想をすることもできます。

そのように車椅子座位からでも端坐位での静的、動的動作の獲得のためのヒントになる点がいくつもあります。

画像4

4.最後に

あくまでも車椅子は座るための物ではなく運搬するためのものです。
そのためにできるだけ早く普通の椅子の変えられるように各職種が協力して座位の獲得を進めていく必要がある。
それでも車椅子座位の場合は患者様の心理的、身体的負担を評価して
車椅子座位での環境を調整する。
車椅子座位を獲得することがゴールではなく、座位で行えることを増やすための過程だと思っています。車椅子座位を獲得することでその人の活動と参加の幅が広がりその人が幸せに感じる瞬間が少しでも増えればよいなと思います。

おわり

画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?