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Erich Fromm『愛するということ』を読んで

こんにちは。
今日は本の紹介をしようと思う。

今日ご紹介する本は紀伊国屋書店の『愛するということ 新訳版』
社会心理学者エーリッヒ・フロムの名著だ。

この本を読んだ経緯としてはFacebookで色々な人から読んで欲しいという無言の圧r…勧められ購入したのだが、紙袋に入れておいたところ我が家の猫がなんと紙袋から中の本を引っ張り出して無言のあt…何やら訴えかけてきたため、および個人的にいろいろ思うところあって読むタイミングは今なのかなと思ったためである。

結論からいうと、本当に素晴らしい本。
2019年に読んだ本の中で一番良かった(まだ終わってないけど)。

一人でも多くの人に読んでもらいたい。
全人類必読の書(と、勝手に位置付ける)。

原題は"THE ART OF LOVING"(愛する技術)となっている通り、愛する技術について書かれている本。
しかし内容はそんな単純な話ではない。

愛について様々な視点(社会学、心理学、宗教学、哲学)からアプローチしている。
訳がとてもきれいで読みやすい。

帯に谷川俊太郎さんが

読む者の人生経験が深まるにつれて、この本は真価を発揮すると思う。

と述べているが、全くその通りだと思う。

この本で述べられている愛の対象は

兄弟愛、母性愛、異性愛、自己愛、神への愛

である。フロムは対象別に愛をこのように分類している。


以下、読んだ内容から感じたことをざっくり箇条書き。

筆者は本書の中であらゆるものの中で愛が最も大事だということを言っている。
ご想像通りそれは必ずしも異性愛だけではない。

隣人愛も含めた無条件の愛、与えることこそが愛の正体だそうだ。

恋をして自分と相手以外の周りが見えなくなることは、実は利己主義が二倍になったものにすぎないというのは盲点だった。

利己的な人は自分を憎んでいるのだということも、今になってすごく腑に落ちる。
自分を大切にすることと人のことを考えることは決して矛盾することではない。
というか、本質的にはどちらも一緒なのだ。

神への愛の部分はかなり複雑で哲学的な話になっているが、読んでおいて損はないだろう。


矛盾しているようだが集中力を身につける、一人でいられる能力こそ愛する能力の前提条件らしい。

①規律②集中③忍耐④愛する技術の習得に最高の関心を抱くことが愛の技術の前提条件なのだという。
さらにナルシシズムからの脱却のために⑤謙虚さ⑥客観性⑦理性を育てていくことが必要になる。
⑧信念⑨勇気も必要だ。
これらが愛する能力の前提条件であるらしい。
他人を愛することができるのは能力であり、高めることができるというのは重要なことだ。

「信じる」ことも愛の技術の習練には必要である。理にかなった信念とは、大多数の意見とは無関係な、自分自身の生産的な観察と思考とにもとづいた、他のいっさいから独立した関心に根ざしているものらしい。
自分自身に対する信念が、誠実性の源だそうだ。
それこそが、他人に対して約束ができるための必須条件なのだという。

最後には、社会心理学者らしく愛と社会の関係で締め括っている。
現代社会はロボットのように愛とはほど遠いものになっているが、人間は経済機械に奉仕するのではなく経済機械から恩恵を与らなければならない。
そのために実現すべきことが前々から提案している「いいね」「スキ」の仮想通貨化だろうと考える。


本書を読んだ人は加藤諦三氏の『やさしい人』や岸見一郎氏の『嫌われる勇気』も併せて読んでみると良いだろう。

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