都会の匿名性と子育てとの関係性

地方から都会に出てきて驚いたことがいくつかある。
その中の一つとして、都会は匿名性が高いということである。

私は人口が10数万人の地方都市に暮らしていた。
そこでは休みの日に出かけると、必ず知り合いに会うのである。

地方都市では出かけられる場所が限られている。
だから、例えばイオンなど数少ない出かけられる楽しい場所に行くと、同級生、その保護者や兄弟、近所の人など必ず知人に出会うのである。

都会では出かけられる楽しい場所がたくさんあり、また人口が多すぎるので出先で知り合いに偶然会うことはまずない。

新宿や池袋に出かけても、ばったり知人に会うことはほとんどない。

新宿や池袋とまではいかなくても、私が住んでいる東京通勤圏内の地域でも知人に偶然会うことはほぼなかった。

仕事の付き合いからの知り合いは、都会に出てきてからたくさん増えた。

しかし、私の勤務地と居住地はだいぶ離れている。
だから、仕事上の知り合いに居住地の近くで会うことはほぼない。

居住地は早朝に仕事に出かけ、寝るために帰ってくるだけなので、知り合いが増えることがなかった。

地方都市の常に知り合いがいるかもしれないという緊張感がなく、都会って気楽だなと感じて過ごしていた。

しかし子どもができてからはその状況がだいぶ変わってきたのである。

子どもは地域の中で生きているので、そこでコミュニティの輪を私が知らないところで広げている。

子どもを近所の小児科医院連れて行った時にびっくりするのであるが、そこで話しかけられることがよくある。

習い事やママ友関係の知り合いの人が、私の子どものことを知っているので「◯◯ちゃんですよね?」と話しかけてくれるのである。

私は話しかけてくれた人もその子どものこともほとんど知らないのであるが、私の子どもはその人たちのことをよく知っているのである。

また近所のスーパーやショッピングモールに行った後、私の子どもが「保育園の◯◯ちゃんがいたね」などと伝えてくることも最近よくでてきた。

なぜかその場では言わずに後から伝えてくるので、「会ったときに教えてよ!」といつも言っているのであるが。

私はこのような出来事から、都会ならではの匿名性が失われかけていると焦った気持ちになる。

私は知らなくても、私の子どものことをよく知っている人が居住地の近所にはたくさんいるのだと思うと変な気持ちにもなる。

しかし、それも悪いことではないのかなとも思えるようになってきた。

子どもとはこのようにして地域のコミュニティに入っていき、守られつつ育っていくのだと分かったからである。

子どもにとっては居住地は匿名性の高い場所ではなく、みんなから知ってもらえている場所である方が幸せなんだと思っている。

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