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牛乳からペンキをつくる。

 DIYをやる方ならお馴染みの「ミルクペイント」。最近はホームセンターの塗料コーナーでも大きく扱われているので目にしたことがあるかもしれません。このミルクペイント、名前の通り「牛乳」から作られるペンキで優しい色合いと艶のないマットな感じがナチュラルなのでとても人気があります。 
 何気なく使ってはいるものの「ミルクが入ってるのか」とか、なんで「つや消しなのか」を理解している人は少ないかもしれません。そこで今回ミルクペイントを手作りしてみて、その風合ができる理由を体感してみるそんなDIYです。

ミルクペイントとは

小さめのバーン(納屋)

失敗から生まれた塗料?

 ざっくり説明すると諸説あるようですが、ミルクペイントはイギリスから一文無しでアメリカに入植してきた人々が現地で手に入るもので作り出した塗料です。たまたま「牛乳」を腐らせてしまったところ、そのドロッとしたところが乾くとプラスティックのように「カチカチ」になることが分かり、そこに「消石灰」を混ぜて白色の「ペンキ」が生まれたと言われています。いつ時代も「失敗は成功の母」というわけです。

独特の色はどこから

 先ほどの白ペンキをベースに身の回りにあるもので「色」をつけていきました。例えば黒は「炭」などを混ぜていたようです。中でもミルクペイントの象徴的な色として「バーンレッド」と呼ばれる褐色の赤があります。バーンとはトップの画像にある「家畜」を育てたり「倉庫」として使う大きな「納屋」のことです。アメリカ各地で多くのバーンはこの赤で塗られています
 
 なんで赤で塗ったかというのはこれも諸説ありますが、一つは広大な土地に雪が降り、一面真っ白になった時に白く塗った納屋が同化して見つけにくくなるため目立つように「赤」で塗ったと言われています。
 もう一つは、白に比べ赤の方が光を吸収し冬でも暖かく過ごせるためだったと言われています。だったら「黒」でもいいじゃないかと思いますが、この赤が人気になった理由は「顔料」が簡単に手に入ったからだったと言われています。では、何を顔料にしていたのか。
 じつはこのバーンレッドの赤はレンガのように錆びた「褐色の赤」です。この色は鉱物からとった「酸化鉄」を使用していたのであのようなくすんだ赤になるんですね。。おそらく鉄鉱石かなんかをドボンと漬けて置いていたら「錆」が出てきたらあのような赤色になったと言ったところなのでしょうか。

血の色

 また、比較的裕福な家は家畜として飼っていた「豚の血」を混ぜてあの色を出していたそうです。血も酸化するのであのような色になったのでしょうか。命を無駄にしないことはとてもいいことですが「血で塗られた納屋」となるとホラー映画のタイトルにもなりそうでちょっとおぞましい感じは否めませんね。 
 さて説明が長くなりました。早速作っていきましょう。


材料

消石灰はホームセンターのガーデニングコーナーで手に入ります。
  • 無脂肪牛乳(低脂肪でもOK)1L

  • 酢(穀物酢だとより良いです)100ml

  • 消石灰 100g

  • 水 100ml

  • 食紅 適量

作り方

2つのタンパク質に分ける

カゼインの固まりがわるければ、酢を足しても大丈夫です。

 ミルクペイントなので何はなくともまず牛乳です。牛乳には「カゼイン」と「ホエー」の2つタンパク質が含まれています。ミルクペイントに必要なのは「カゼイン」のほうになるのでそれを取り出していきます。今回は先ほどの腐らすといった古の方法ではなく、より簡単な「酢」使ったを方法でカゼインを取り出します。
 常温にした牛乳に対して1割程度の「酢」を入れて混ぜたら、一日放置。「カゼイン」は固まり「ホエー」は透明な液体となって分離しているはずです。

撮影時はペットボトルに詰め替えてしまった為に「カゼイン」が細かくなってしまいました。
うまくいくとカゼインの固まりがカッテージチーズのようになります。

カゼイン取り出す

画像のものは蒸し物で使う「蒸し布」です。これは目が粗いのでやめたほうが良いです。

 目の細かい「ガーゼ」で分離した牛乳を濾します。カゼインだけを取り出し軽く水気を切っておきます。その後、ガーゼに載せたまま水で「酢」を軽く洗い流し、再び水気を切っておきます。

消石灰と水を混ぜる

乾燥剤などに使われる「生石灰」は使用しないでください。
生石灰に水を混ぜると熱が発生してやけどの原因となりますのでご注意ください。

 牛乳1Lに対し100gの「消石灰」を水と混ぜる前にフルイにかけます。細かいように見えますが、小さな塊がありこれが水に溶けないのと、塗った時に表面がゴロゴロとして仕上がりがあまりよくならないのです。フルイにかけた消石灰に「水」100mlを混ぜ、なじませる為にしばらく15分ほど放置しておきます。
 ちなみに「消石灰」を入れる理由としては、耐久性の面もあるのですが豚や牛などを飼う納屋など使われるので、動物たちが疫病にかからないよう殺菌効果の高い「消石灰」を混ぜたと言われています。

色をつくる

粉のまま先ほどの「消石灰&水」に投下すると食紅がダマになるので、
予め水で良く混ぜておきましょう。

本来は「顔料」がいいのですが、今回はスーパーなどで簡単に手に入る「食紅」を顔料代わりに使います。量は適量で食紅に対して同量程度の「水」を入れてまぜて置いてください。

すべてを混ぜる

画像のカゼインがちょっと水っぽいです。カッテージチーズぐらいの感じがベストです。

 取り出した「カゼイン」と水で溶いた「消石灰」を混ぜ、そこに先ほどの食紅を混ぜて行けば完成です。

食紅は少しでもかなり色が付きますので、様子を見ながら足して行くといいかもしれません。

塗る

市販のミルクペイントに比べて粘度はありません。

手前にあった無塗装のプランターに塗っていきます。理由はわかりませんが、塗った直後は「茶色」なのですが、乾燥し始めると「赤色」に変化していきます。乾いたら軽くヤスって、また塗るの繰り返しを3回ほどつづけます。

消石灰の粒がザラザラとするので紙やすりでスムースにしてあげると
仕上がりがよくなります。
ザリガニのような赤になりましたが、しっかりと着色しつつ表面が硬化しています。
家具などで使う場合は最後につや消しの「ウレタン」を塗ってコーティングするのもよいかもしれません。

まとめ

 今回作ったミルクペイントは「カゼイン」をシンクに流してしまう失敗で耐久性が落ちてしまいました。ミルクペイントづくりのポイントはしっかりと牛乳から「カゼイン」取り出す基本的なところにあります。そこをしっかりと押さえれば失敗はないかと思います。  

 また、余談ですが今回の「ミルクペイント」よりさらに簡素化した塗料で牛乳も使わず「消石灰」に「水」だけを混ぜただけの「White Wash(ホワイトウォッシュ)」と呼ばれる古の塗料があります。「漆喰」に近く安価で簡単に塗装ができるので、19世紀後半からとても人気の高かった塗料の一種です。  
 そんな「WhiteWash」を子供の頃にアニメの中に見ていたという事実を今回のDIYのリサーチから知ることになりました。それは大好きだったトムソーヤの冒険の第二話「ごきげんなペンキ塗り」という神回。

せっかくの土曜日なのに、朝から塀のペンキ塗りだよ。でもいい作戦を思いついちゃった。それはいかにもペンキ塗りを楽しそうにする事で、通りかかる友人たちが次々とペンキ塗りをやりたがるようになるっていう寸法。

トム・ソーヤーの冒険 第2話「ごきげんなペンキ塗り」【公式アニメch アニメログ】

 実はここで出てくる「ペンキ塗り」はマーク・トウェインの原作によるとペンキではなくWhiteWashなのです。トムソーヤはポリーおばさんから「ペンキ塗り」ではなく「WhiteWash塗り」を命じられていたのです。産業革命時代すでにペンキも市販されていと思いますが、まだまだ高価なものだったはずです。「WhiteWash」という記述がその時代の風景を映し出していることに一人ワクワクしていました。

 わざわざ作ることで「ルーツ」を知れるのもDIY。どうでも良い知識がつくのもDIY。ぜひお試しください。それでは次回。

https://www.pbs.org/kenburns/mark-twain/tom-sawyer

 
 

作り方はこちらでも

写真:薮内 努 https://www.instagram.com/yaboo/


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