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異世界転移流離譚パラダイムシフター

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数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──
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2020年5月の記事一覧

【第■章】仙郷は此処にあり (3/3)【一歩】

【第■章】仙郷は此処にあり (3/3)【一歩】

【目次】

【老師】←

「どうした。呼吸が乱れておるじゃて。体さばきにも、見てとれるぞ?」

「グヌウ……ギィアアァァァ!!」

 邂逅からしばらくのあいだ、白ひげの翁と漆黒の獣は、苛烈ながら奇妙な組み手を繰り返す日々を送っていた。

 フラミンゴのような片手片足の構えをとった老人は、怪物の怒号混じりの打撃を人差し指一本で悠々とさばいていく。

 背中に回した左手のひらのうえには、釣り竿が乗せら

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【第■章】仙郷は此処にあり (2/3)【老師】

【第■章】仙郷は此処にあり (2/3)【老師】

【目次】

【仙郷】←

「やれやれ。不佞が相手をしてやらねば、気がすまんようじゃて」

 老人は、静かな声音でつぶやく。転倒の衝撃で呆けていた漆黒の獣は、我に返ると、とっさに起きあがり、バネのように跳ねて間合いをとる。

「グヌウウゥゥゥ……」

「御身、そうおびえるな。不佞は見てのとおり、ただの無害な老体じゃて」

 うなり声のよう奇怪な音を立てる無貌の怪物に対して、ようやく釣り人は向き直りつ

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【第■章】仙郷は此処にあり (1/3)【仙郷】

【第■章】仙郷は此処にあり (1/3)【仙郷】

【目次】

【第15章】←

──ピイィィ……ヒョロオオォォォ。

 柔らかい日差しが降り注ぐ蒼い空から、悠々と天を舞う猛禽の鳴き声が響きわたる。周辺には、尖塔のごとき、細く高く直立する天然の奇岩がいくつもそびえる。

 岩山の狭間には、薄絹のようなかすみが満ちて、自生する樹々の緑とあいまって、幽玄な景色を作り出している。

 白い霧の底では、自然の石柱群のあいだを縫うように渓流が清水をたたえ、と

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【第15章】本社決戦 (27/27)【出航】

【第15章】本社決戦 (27/27)【出航】

【目次】

【名前】←

「……ん!」

 コックピットに戻ろうとするリーリスは、出入り口の扉についた小窓、その向こう側に広がる闇のなかに動く影を見る。あわてて、気密ドアのロックを外す。

「帰りの便は、ここであっているかい?」

 照明の落ちた格納庫のなかを船に近づいてくるのは、赤毛のバイク乗り──ナオミだった。リーリスは、扉を大開きにして女ライダーを招く。

「お待ちしていたのだわ! まもなく

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【第15章】本社決戦 (26/27)【名前】

【第15章】本社決戦 (26/27)【名前】

【目次】

【崩壊】←

「アサイラ……龍皇女の言うとおりだわ。まずは、私たちの命を守らないと」

「……言わずもがなだ」

 ひざを突いてダストシュートの底をのぞきこんでいたアサイラは、立ちあがる。かたわらでは、リンカが着流しの乱れと呼吸を整えている。

「ララ。ここから先は、どちらへ進めばいいのだな?」

「まずは、第二ゲートポートに向かって」

 少女を背負いながら問うシルヴィアに対して、ラ

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【第15章】本社決戦 (25/27)【崩壊】

【第15章】本社決戦 (25/27)【崩壊】

【目次】

【瓦解】←

「……アサイラ、もうだいじょうぶだわ」

「ん……そうか」

 青年の肩を借りていた『淫魔』が、自分の足で立つ。

「アサイラのほうだって、あんまり余裕なさそうだし」

「その通りですわ、『淫魔』。我が伴侶は、消耗しています。不要な負担をかけるべきではありません」

「うるさい、龍皇女。あなたに言っているんじゃないのだわ」

 下から突きあげるような衝撃を受けて、その場を

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【第15章】本社決戦 (24/27)【瓦解】

【第15章】本社決戦 (24/27)【瓦解】

【目次】

【蒼輝】←

「貴様……『伯爵』……やめろ……それは、儂の……」

 メインリアクターとチューブに伝導していた赤い光が、消滅していく。人型を保っていたチューブの群れがほどけて、内側から白目をむいた老人の姿が露わになる。

 オワシ社長は、ぱくぱくと口を開きながら、うわ言をつぶやく。見れば、メインリアクターの側面に、『伯爵』の手によると思しき大穴があいている。

「社長。そこの青年の言う

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【第15章】本社決戦 (23/27)【蒼輝】

【第15章】本社決戦 (23/27)【蒼輝】

【目次】

【覚醒】←

『くわっ! この死に損ないめが……げぼ、げぼおッ!!』

「それは、どう見てもおまえのことだろ。クソジジイ」

 龍皇女の尾の骨から削りだされた白刃に、アサイラは神経を集中する。己の丹田の底から大剣の切っ先まで、一体になっている様をイメージする。

「……行くぞ。正念場だ」

 使い手の小さなささやきに応じるように、青年の肉体の奥から汲みあげられたエネルギーが、『龍剣』の

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【第15章】本社決戦 (22/27)【覚醒】

【第15章】本社決戦 (22/27)【覚醒】

【目次】

【放逐】←

「……マスターッ!!」

 声をあげたのは、シルヴィアだった。女たちのなかで唯一かろうじて戦えるだけの余力を残している狼耳の娘は、オートマティックピストルをかまえる。

 トリガーを引くと同時に、パンッ、と乾いた音を響かせて銃弾が発射される。弾丸は、チューブの巨人の頭部、こめかみに命中し、むなしくはじかれる。

『くわアッ! シルヴィア、貴様のマスターは、この儂だ! 駄犬

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【第15章】本社決戦 (21/27)【放逐】

【第15章】本社決戦 (21/27)【放逐】

【目次】

【錯誤】←

「これでいいのね? って……あわわっ!!」

 身悶える浮遊怪魚が、苦痛と憎悪の表情を浮かべ、メロに向かって殺到する。少女の前に、着流しの女と龍態のクラウディアーナが割ってはいる。

「させないのよな」

『その通りですわ』

 首筋から鮮血のしたたる白銀の上位龍<エルダードラゴン>と、リンカの再現出させた『炉座明王<ろざみょうおう>』が、迫り来る巨大怪魚を押しとどめる。

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【第15章】本社決戦 (20/27)【錯誤】

【第15章】本社決戦 (20/27)【錯誤】

【目次】

【試行】←

──ガン、ガン、ガンッ!

 浮遊怪魚の攻撃を紙一重でかわしつつ、シルヴィアはトリガーを引く。銃弾が、くすんだうろこを削り取っていく。

 ミナズキを抱き抱える『淫魔』は、獣人娘の奮闘を見つめながら、拳を握りしめる。額に、汗が浮かぶ。

 シルヴィアは、よく戦っている。だが、相手のタフネスはけた違いだ。単純に見比べても、生身で軍船に挑むほどのサイズ差がある。

「……此方

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【第15章】本社決戦 (19/27)【試行】

【第15章】本社決戦 (19/27)【試行】

【目次】

【消魂】←

『屠れ、『死怪幽魚<ネクロリウム>』ッ!』

 オワシ社長が、吼える。真冬のような冷気が、社長室を満たす。ナオミの暖めていた蒸気エンジンが、ストールするほどの寒さだった。

 やがて、異形の巨人を身にまとう老体と次元転移者<パラダイムシフター>の女たちのあいだを阻むように、おどろおどろしいもやが浮かびあがる。

 意味のわからないうめき声を周囲に響かせながら、死霊の集合体

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【第15章】本社決戦 (18/27)【消魂】

【第15章】本社決戦 (18/27)【消魂】

【目次】

【奮戦】←

「アサイラ、立つのだわ! はやく、起きあがりなさいッ!!」

「グッ、ヌゥ……」

 必死に叫ぶ『淫魔』の声が、アサイラの耳にはどこか遠くに聞こえる。オワシ社長にの見にまとう異形の巨人が、床を踏みしめる振動を全身で感じとる。

 だが、身体が動かない。老体の独演に、野次のひとつでも挟んでやろうとは思っても、わずかな声すら絞り出せない。

 確かに、ダメージは大きかった。だ

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