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小説「ターコイズブルーのお月さま」

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高校三年生が部活をしたり、バイトしたりしながら。文化祭で8ミリ映画を上映する青春群像劇の物語です。
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小説「ターコイズブルーのお月さま」3章

小説「ターコイズブルーのお月さま」3章

三章
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2025年10月26日日曜日
俺は、イチノセ・ダイに呼び出されて、廃部したはずの映画研究会の部室にいた。
部室には、俺とイチノセと、カタヤマ・ゲンキとタカハシ・タロウがいた。
サトウは、喫茶店“うみねこ”のアルバイトのために欠席だ。
「今から、コウジがこの前に撮影した8ミリフィルムを上映する。スクリーンないから、天井に画面を写すよ」
久しぶりに会ったイチノセは、廃部扱いだった映画研究部

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小説「ターコイズブルーのお月さま」2章

小説「ターコイズブルーのお月さま」2章

二章
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2025年9月19日金曜日、夕方になると涼しい風が吹いてきた。
制服の上から薄手の白いパーカーを着てサトウは“うみねこ”の扉を開けた。
私服に着替えて、エプロンをつけると、
おじさんは簡単な引き継ぎをサトウにして店を出る。
サトウがアルバイトにくるようになってから、
おじさんは夕方出かけて、近所の子供相手の空手教室を開き始めた。
意外なことにおじさんは空手が得意だった。
サトウは、おじ

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小説「ターコイズブルーのお月さま」一章

小説「ターコイズブルーのお月さま」一章

ターコイズブルーのお月様

一章

俺はスミダ・コウジ17歳、西南高校三年だ。
俺は、幼い頃から毎年夏になるとある同じ夢を見る。
初夏、霧のような雨が降るなかで、華奢な髪の長い女性が背中を向けて立っている夢だ。
年齢は、15歳くらいだろうか。
どこかを見ているのか、目を閉じているのか、
笑っているのか、泣いているのか。
女性の表情はわからない。
背中まで伸びた長い黒髪が時々揺れる以外は、
女性は

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