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乙 まみこ
2021年9月17日 22:45
きっと信じてくれないからまだ誰にも言ってないけれど、あの日から僕は何でもできるようになった。空が濃い灰色に飲み込まれて、急に降り出した雨と激しい雷に屋根がある場所へと急いだ。その途中で空を切り裂くように稲妻が光るのが見えて、思わず肩をすくめてその場で固まった。そう、あの瞬間から僕には不思議な力がついた。いかにもやさしいような顔をした人の、それとは真逆の顔が透けて見えたり、遅刻をしそ
2021年9月20日 21:34
カーテンの隙間から入り込んだ光に促されて目を覚ました。目覚まし時計はまだ眠っている。ゆっくりと両腕を頭の上へと突き出してアタシは伸びをして、ムズムズした頬を左手で掻いた。「痛っ」保湿ケアを怠っていたからささくれでもできていたのかうっかり頬を引っ掻いてしまったらしい。寝ぼけまなこで左手を見た。「爪が…え、毛?」黒い毛並みに白い靴下を履いた猫の手、足?にそっくりなものが目に入った。ゆう
2021年9月27日 22:43
アタシは卓哉の家を出ることにした。猫になったアタシは素知らぬ顔をして卓哉の家でしばらくすごしていた。しかし時々やってくる浮気相手、しかも人間のアタシの親友とのベッドでのソレを寝たふりしてチラ見したり、時には本棚の上からベッドへとわざとダイブしてやったりするのも猫とはいえ、あまりいい趣味とは言えない。いったいいつになったら元通り人間のアタシに戻れるか…もしかしたらもう二度と戻れない可能性だって
2021年9月29日 22:18
うわぁ…慌ただしく玄関ドアから抜けた瞬間にミシっとかすかな音が耳元で鳴り、顔に嫌な感触があった。ゆうべ帰宅した時には何もなかったのに、朝が来るまでの闇の中で彼女(彼?)はせっせと罠を仕掛けたらしい。今さっきメイクを終えたばかりの顔面とブロウしたての髪は思いっきり蜘蛛の巣に捕らえられた。自宅の玄関先で空気をつかむように私は見えない罠を少しずつ解いた。あぁ、週の始まりからなんて朝。キーッ
2021年9月16日 16:48
「ごめん、いろいろと」「他のコとデートしたこと、他のコにプレゼントをあげたこと、内緒で部屋を借りていたことも、ぜんぶぜんぶ、ごめん」僕は彼女に謝った。正直なところ、本当に悪いと思っているのかどうかは自分でもよくわからなかったけれど、今はそういう時だと思い、僕はひたすら謝った。ゆっくりと彼女はひとくち水を飲んだ。僕たちの間でただ空気だけがぐるぐる回っているような時間が漂っていた。許され