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#読書
三月某日 書く速さ、読む速さ
「あれはゆっくり書かれた本だから、ゆっくり読めばよいと思う。」
谷崎潤一郎の『細雪』について、尊敬する先輩がそう言った。
彼は文学の愛好家であり、同時に物語の書き手でもある。
本は読み手一辺倒、表現も発想も世界観も乏しいわたしからすれば、到底思いつかない文学の楽しみであった。
七月某日 ミステリーがお好き
中学生頃まではミステリーが好きで、読むものの半分くらいは人が死ぬ話が占めていた。
ある時、一篇毎に死んでいる「人」は、まさに今、目の前にいる生身の人間と同一のものとして描かれているのだと気がついた。
それ以来、人が死ぬ話は少し苦手だ。
六月某日 教材としてのヴァージニア・ウルフ
私の出身高校は英語科の癖が強い。
必ずと言って良いほど、長文読解の教材が「イギリスの」有名作家の小説になる。例えば私の在学時には、サマセット・モームやロアルド・ダール、ジェームズ・ヒルトンの作品を取り扱った。グレートブリテン島の外の作家はトルーマン・カポーティ唯一であった。
今年度の題材はヴァージニア・ウルフらしい。ひょんなことからテキストを頂いて目を通したが、読後感の悪いこと悪いこと……。詳細