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閃光花火|連作短編小説

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Base Ball Bearの「senkou_hanabi」という曲からインスピレーションを受け、さまざまな登場人物たちの夏のひとコマを切り取った小説を書きました。
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2021年7月の記事一覧

閃光花火【7】カミサマの采配

閃光花火【7】カミサマの采配

 焼けるような日差しが眩しい。先程から、こめかみから輪郭をなぞるように汗が流れ落ちていく。時折目に入って、涙のようにじんと痛む。
「この回絶対抑えろよぉー!」
 大声を張り上げているつもりだが、俺の喉から出る声はすでに潰れかかっていて、枯れたような叫びにしかならない。それもそのはずだ。試合が始まってから、かれこれ三時間は経過しているのだ。けれど、たとえ声を潰してしまったとしても、俺はきっと声援を止

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閃光花火【6】通り雨と迷子の心

閃光花火【6】通り雨と迷子の心

「おぉーい、あんまりスピード出すなよー」
 はしゃぎながら自転車で駆けて行く部員たちに向かって、片岡秋良は声を張り上げた。その声に気付いていないのか、はたまた気付いているのを承知の上で、なのかは定かでないが、自転車族と化した彼等はさらにスピードを上げて走って行く。そんな姿に呆れつつも笑みをこぼした時、秋良ののろまな自転車の隣に、にゅっと並んでくる人影があった。
「さっすがブチョー、遊びでもちゃあん

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閃光花火【5】向日葵と母娘

閃光花火【5】向日葵と母娘

 私は思わず足を止めた。目的地である病院はもう目の前なのに、信号待ちをしている間に、病院の向かいにある色とりどりの花々が気になったからだ。せっかく渡った横断歩道をもう一度渡りなおし、その花屋へと足を向ける。
 店先には、アサガオやハス、ラベンダーなどが鮮やかに並んでいた。その中でもひときわ目を引いたのが、夏の象徴ともいえるヒマワリの花だった。しかしながら、
「…なんか、思ってたよりも小さい」
 幼

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閃光花火【4】Cold or Hot ?

閃光花火【4】Cold or Hot ?

「うん、味はまあまあね。…あ、でもこれ、冷食だっけ?…子供には、あんまり食べさせたくないわねぇ」
 聞いてもいないのに自ら専業主婦だと名乗った女性は、試食品を口にするなりそう言って笑った。人を揶揄っているような意地悪な気持ちが、笑みにあらわれている。ささくれ立つような感情が胸のあたりまでせり上がってくるのをどうにか抑えつつ、「まあ、お子さんのことを思うと、手作りにはなかなかかないませんよねぇ」と、

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閃光花火【3】タナボタの遠吠え

閃光花火【3】タナボタの遠吠え

「一点だ、まずは一点。この回、必ず追いつくぞ!」
 阿久津の力強い言葉に、円陣を組んだ全員が大きな声で応える。乾いたグラウンドに汗が流れ落ち、幾つもの染みを作った。
 七月最後の日曜日は、笑えるくらいの快晴だった。試合が始まった午前十一時半の時点で気温はすでに三十度を超えており、正午を過ぎた今はさらに暑さが増している。この暑さと緊張、そし興奮から、先程からやたらと喉が渇く。攻守が入れ替わるタイミン

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閃光花火【2】競泳と秘密のゆくえ

閃光花火【2】競泳と秘密のゆくえ

「五十メートル一本勝負!最下位は罰ゲーム、好きな人暴露な!」
 突拍子もない提案がプールに響き渡り、僕は思わず耳を疑った。水面から顔を上げた瑛斗も「はぁ?」と言いたげに、ポカンと口を開けている。そんなようすを気にも留めず、提案者である夏生はなぜか照れ臭そうに笑っていた。
 夏休みが始まってから、市民プールに通う毎日が続いている。メンバーはもっぱら、クラスメイト兼、同じスイミングスクールに通う倉持瑛

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閃光花火【1】Summer of Task

閃光花火【1】Summer of Task

「あーもう、わからないーッ!」
 大きく嘆きの声を上げながら、倉持紗恵は勢いよく机に突っ伏した。模範の答えに辿り着かないのか、ノートの上には様々な数式と、おさえるべきポイントが記された付箋がひしめき合っている。突っ伏した体制のまましばらくジタバタしてみたものの、誰もおらず静まり返った家からは、当然何の返答があるわけもない。おまけに、ジタバタしたせいで近くに積み上げていた参考書の山が、ずるりと鈍い音

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