はじめの一歩の嬉しなみだ
これから書くのは最近あったとっても嬉しくて感動して涙がボロボロとまらなかった話だ。
学童保育所でアルバイトをしていた時のこと。
学童には今、四年生のダウン症を持った女の子がいる。彼女はたくさん遊ぶし、たくさん食べるし、何より笑顔が本当にかわいらしいのだ。
そんな彼女がはじめて私のあだ名を大きな声で呼んでくれたのだ。とってもかわいい笑顔を私に向けながら何度も呼んでくれた。たいした話じゃないと思ったならそれでもいい。しかし、私があだ名をはっきりと呼んでもらえるまで2年かかった。いや、たった2年で呼んでもらえたのなら奇跡かもしれない。顔は覚えてもらえても、名前を呼んでもらえることはなく、いつも「うーうー」と私を呼んでいた。いつかは私のあだ名を呼んで欲しいと思っていた。だから突然その日がやってきて驚いた。赤ちゃんがはじめて言葉を口にした時の驚きと嬉しさに似ているのかもしれない。
しかし、それだけではない。はじめて意味をしっかり理解してひらがなの文字を書いたのだ。彼女がはじめて書いたのは彼女のかわいらしい名前だった。たった2文字、されど2文字。私の目の前で丁寧に一生懸命に書いて見せてくれた時、本当に嬉しくて鼻の奥がツンとしたと思ったら大粒の涙がこぼれていた。立て続けに私の名前までしっかりと書いて見せてくれた時には号泣していた。丁寧に色濃く書かれた私の名前は、なみだで視界が霞んでいてもしっかりと見てとれた。きっと今までで1番、自分の名前が綺麗に書かれた瞬間だったと思う。
鉛筆も持てず、症状が少し重めの彼女は文字もうまく書けず、言葉もはっきり喋れないし、おむつもつけている。それでも文字を書く練習も、言葉の意味を理解して発することも、お姉さんパンツの練習も時々反抗しながらもコツコツと積み重ねている。そんな彼女の努力している姿は私にいろんなことを教えてくれる。″私も頑張ろう″と気持ちを律してくれるのだ。彼女は生まれつき持った障害を克服するのではなくて、うまく付き合っていくことを目指している。世の中には障害を持っている人に対して
″普通じゃない″
って決めつけてかかってくる人はたくさんいるけど、
″あなたが思っている普通って意外と普通じゃないことの方が多いよ″
って声を大にして伝えたい。だってさ、みんながみんな同じなわけがないんだよね。たくさんの個性や文化が混じり合って世界は毎日新しい変化を遂げて形作られているだと思うんだよね。
彼女に、はじめて会った2年前は小さすぎる背丈に大きすぎるランドセルが背負えなくてしゃがみ込み、お迎えの帰り道は20分で帰れるところを1時間以上かけて歩いたことを今でも覚えている。でもさ、帰りの道をいかに早く歩くのかが問題じゃなかったんだ。どれだけゆっくり時間を使ってもいいから一歩一歩を踏みしめることが大切だったんだと気づかされた。彼女にとって毎日が新しいことに溢れたものであり、その一つ一つがはじめの一歩に繋がっているのだ。私は彼女のはじめの一歩に寄り添っていられることに胸が熱くなり、これからも嬉しなみだを流すだろう。
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