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断捨離。男捨離。



カーテンの隙間から私を刺してくる光が眩しくて目が覚めた。
部屋を見渡せば昨日の名残りが残ってる。
枕のくぼみがそこに居たはずの君を思い出させる。
冷たい床に素足で降り立ち急いでヒーターの電源を付ける。
起きれば既についていたはずの暖房も私と一緒に起床だなんて、とんだお寝坊さんになったものだ。
君に懐いていた頃は早起きさんだったのになんて微笑する。



タンスを開けて着替えを引っ張り出す。君が私に似合うと選んでくれた洋服ばかりがチラついてどれを着ようにも気持ちがパッとしない。
私よりも上の段の引き出しを開けても空っぽになっている。
これなら新しい服を買っても、しまうところに困らないと思い付いた。
午後は買い物に出掛けようと決める。

顔を洗おうと洗面台に行けばコップと歯ブラシが余計に並んでいるのが目についた。
タオルも色違いが無駄に多い。もう必要ないからと透明な袋に次々と投げ入れる。


喉が渇いていたことに気がついて冷蔵庫を開けてぐったりする。
私が飲まない炭酸飲料と350㎖の缶ビール、君のために作り置きしたいくつものおかずがタッパーの中で眠っている。
分別なんてめんどくさいからまとめて袋に投げ入れる。


キッチンから見える机の上には大人しく置かれた合鍵が1つ。
ひんやりとした鉄の感触に触れて私の心が寒々とした結果を再確認する。
でもこれで一つ無くしても大丈夫だ。


スマホを開けばクリップ止めのトークが1つ残ってる。もう必要ないから消しちゃおう。
見渡せばこの空間に私と君がたしかに時間を過ごしたあとかたが嫌というほどこびりついていた。

君は空っぽになったこの部屋を見て何を思うのかしら。
そんなくだらないことを考えながら玄関先に置かれた3つのこんもりとした袋を眺める。
簡単にまとめられてしまった私と君は大してなにも残さなかったんだろうね。


あぁ、汚いものは捨てたくなるの。
あぁ、すっきり片付いた。
時には断捨離も悪くないのかもしれない。
そして、前向きな男捨離にエールを。


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