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封印しないでほしい『ED』のこと。男性ホルモンの話②

さて、男性ホルモンの話①の続きを。今日は、男性特有の悩み「ED」と、長寿遺伝子の活性化についてのお話です。

1.EDは初期の血管病

EDはErectile Dysfunctionの略語で、勃起不全のことを言います。年齢を重ねると起こりうる問題ですが、単に「歳をとったから」起こるというわけではないことをご存知ですか?

実はEDは血管病の前兆なのです。ちょっとびっくりしますよね?

血管の最も内側には、血液を流すだけでなく、伸び縮みして血圧を調整したり、動脈硬化を防ぐ細胞があるのですが(血管内皮機能)、その血管機能は男性の方が女性よりも早く低下するという研究データが発表されています。

男性では41歳、女性では53歳が最もその機能が高く、その年齢を境に低下していきます。男性は女性より一回り程先に血管機能が低下し始めるということです。(文献1)

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そして、下の絵をご覧ください。陰茎に血液を送る動脈が一番細いため、その血管機能低下のサインとしてEDという勃起障害となり、最も早くに現れるのです。

動脈硬化の先駆けとして起こる、最初のシグナル、単に性欲減退と封印しないでほしいのです。(ストレスなど心的要因が要因であるケースもあります。)

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2.ED患者は酸化ストレスも高い
 

さらに、ED患者は酸化ストレスが高い状態であることもわかっています(文献2)酸化ストレスというのは、DNAや体内の細胞が、酸化により損傷を受けていることを言います。

交感神経の緊張(メンタルストレス)、高血糖、肥満、高血圧、腎不全、肺気腫ほか、実に多くの疾患が酸化ストレスから来ているのです。

3.「腹八分に医者いらず」は本当。


この酸化ストレスに大きく関係するのが、「活性酸素」
聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

カロリーを摂取すると、ミトコンドリア(体内の細胞内にありエネルギーを作る働きをもつ)で活性酸素が生まれます。

食べる=活性酸素が生まれてしまう」のです。

2009年に、Wisconsin National Primate Research Centerで、カロリー制限をした猿と通常通りの食事をした猿を比較飼育し、効果を分析したところ、カロリー制限をした猿の方(写真赤枠)が老化を遅らせたという結果がでました。(文献3)。

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●右側がカロリー制限された猿。左は通常食の猿。老化の違いも一目瞭然だ。(写真:Science. 2009 Jul 10; 325(5937): 201–204.)

また、下グラフは、糖尿病、癌、心血管疾患、認知症など、加齢に関連する疾患で死亡した猿の割合を示しますが、カロリー制限された猿(赤線)の方が、カロリー制限なしの猿(青線)よりも、生存率が高く、加齢関連疾患での死亡が少ないことが証明されています。(グラフ:文献4)

食事コントロール猿グラフ(最終2)

こうした結果からも、常に満腹状態になる食事は、活性酸素を増やし加齢疾患を増やすほか、見た目も早く老化する。
一方で、腹八分にし、カロリー制限することで活性酸素は減少し、長寿遺伝子を活性化することができるのです。

もちろんEDの原因にもなる酸化ストレスを減らすことができます
そして、これはEDの改善だけが目的ではありません、自身の体をトータルで健康に保ち、長寿へ導くための確実な方法なのです。

4.まとめ

1. EDは血管の衰えを教えてくれる大事なサイン。勇気を出して病院に相談に行くことで、心臓や脳などの疾患予防につながります。

2. 日常生活で上手にカロリー制限を。活性酸素を減らし、EDほか加齢疾患予防に努め、長寿遺伝子を活性化させましょう

お読みいただいた皆さん、ありがとうございました。直接お会いできない方の方が多いですが、読者さんが1人でも多く、健康に一歩近づいたなら、心から嬉しく思います。ハートマークでイイネ、お待ちしています。

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【参考学会】
『Sunday Wellness Breeze』(セリスタ株式会社主催)「男のアンチエイジング」堀江重郎教授(順天堂大学 医学研究科 泌尿器外科学教授・日本抗加齢医学会理事長)
堀江先生の素晴らしい知見のシェアリングに感謝申し上げます。
【参考文献】
1. J Am Coll Cardiol.1994 Aug:24(2):471-6.
2. J Sex Med.2008 Jun;5(6):1482-91
3. R. J. Colman, R. M. Anderson, S. C. Johnson, E. K. Kastman, K. J. Kosmatka, T. M. Beasley, D. B. Allison, C. Cruzen, H. A. Simmons, J. W. Kemnitz et al.: Science, 325, 201 (2009).
4.Science. 2009 Jul 10; 325(5937): 201–204.

※本noteは私的なメディアであり、勤務先の病院とは一切関係はございません。紹介する商品も販売目的で掲載するものではないことを予めお含み置きください。

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