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冬の或る日

「どちらにしても後悔するよ」

びっくりして、何もこぼれていないテーブルを
ティッシュで拭きとる動きをしばらく続けたあと
窓の外を見た。

冬の陽射しを浴びた山茶花は
奔放に伸びた枝にたくさんの花をつけ
そのほとんどが薄茶色く、終わりを迎えている。

でも綺麗だな、と私は思った。

葉から透ける光りも影も夏に比べたらとても薄くて、
レースのカーテンの向こうのように
少し白んだ世界は
届いた言葉を優しく肯定している気がした。

私が選択で迷う時、不安になる時
成功に執着し失敗を許さないことが多かった。
後悔を恐れた。

だから驚いたのだ。
私が選ばなかった道でもこうして誰かに
こんなはずじゃなかったと悔いた思いを
吐き出す日があるかもしれないなんて
想像もしなかったのだ。

今あの時の選択を間違えていたと俯く日々のその反対は、明るさに満ちていて
迷い落ち込むことなど何一つない
そんな日々であるはずだと。


確かめようがないのに
信じて疑わなかったのは何故だろう。

確かめようがないのなら、
今がいつだって最善なのかもしれない。
絶望にあったとしても
光を見て綺麗だとおぼろげにも思えるのなら。

辛いことや悲しい事が消えて無くなるわけじゃない。
けれど、私が選んだものを後悔する理由はなにひとつないのだと悲しみと共に知った。

世界はただそこにある。

私を否定するのは私しかいないと、気づけた日。

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