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銀河フェニックス物語<出会い編> 第七話(7) 真っ赤な魔法使いはパズルもお得意

<第七話のあらすじ>
ティリーは顧客の希望を叶えるため、天才軍師のアーサーに難問パズルの作成を依頼した。ティリーはレイターとフェニックス号のキッチンで夕飯を作りはじめた。(1)~(6) 

「ほれ、料理はちょっとしたコツで変わるんだ。あんた、右足をちょっと後ろに引いてみな」
「右足?」

 レイターが言う通り調理台と並行に置いていた足の位置を変える。
 本当だ、包丁が使いやすい。
「すごい」
 思わず感嘆の声が出る。

「ま、ガキだから仕方ねぇな」
 レイターの言葉にカチンときた。

「ガキじゃありません。料理が下手なだけです。何度も言いましたけど、わたしたちアンタレス人は十六歳は成人なんです。結婚だってできるんです」
「ほう」

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 しまった、余計なことを言った。
 結婚なんて例を出さなきゃよかった。
「ティリーさんの気持ちはありがたく受け取っておくよ。俺との結婚を考えていたとは・・・」
「ちがいます!」
「悪いが俺は特定の女性とはつきあわねぇ主義なんだ。残念だったな」
「残念でも何でもありません!」
 アーサーさんがこっちを見て笑っている。恥ずかしい。

 二人のやり取りを見ながらアーサーは思った。レイターのあんな表情を見るのは久しぶりだ。

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 ティリーさんと初めて会ったのはここフェニックス号のリビングだった。
 その瞬間、似ていると思った。
 レイターは即座に否定した。
 だが、私のファースインプレッションは間違っていない。

 約束の日曜日。
 本社の駐機場でレイターがフェニックス号に試乗船のアラマットを積み込んでいた。
 ペーパードライバーのティリーはその様子を見ながら感心していた。
 銀河一の操縦士はいつ見ても腕がいいわ。

 フェニックス号に乗り込むと、居間のソファーに白衣を着たアーサーさんが座っていた。
 わたしはあいさつした。
「お忙しいところすみません」
「こちらから言い出したことですから、気になさらないでください。それより、問題を作ってみました」
 アーサーさんが楽しそうにタブレットを操作した。

 図形の問題だ。

「これが自分の中では一番の良問です。この図の中にある三角形を十個探してください」
 不思議な幾何学模様だ。じっと見つめる。
 レイターも問題をのぞき込んだ。

 小さいもの、大きいもの次々と三角形が見つかる。けれど、七個から先が見つからない。

「ヒントはこの辺りです」
 アーサーさんが示したヒントの辺りを見ると急に視界が広がった。

 八個目、九個目がわかった。あと一つ。

 見つけた、と思うと、さっきすでに見つけたものだ。
 わかりそうで、わからない。
「全体を見るようにしてみて下さい」
 アーサーさんの声にかぶせるようにレイターが叫んだ。 
「十個目見つけた!」

 悔しい。と思った瞬間に見えた。大きな三角形が。
「わかったわ!」
 思わず膝を手で打ちたくなった。爽快だ。どうして今まで気がつかなかったんだろう。
 でもこれ、ヒントが無ければかなりの難問だ。

「もしくはこちら」
 次の問題をアーサーさんが示した。これも面白い。

「こんなものも作ってみました」
 次から次へとアーサーさんがパズルを提示する。

「あんた、いくつ作ったんだ?」
「とりあえず百問だ。まだいけたが、キリの良いところでやめておいた」
「すいません」
 驚きながらわたしは頭を下げた。
 いったいどのくらいの時間と手間を取らせてしまったのか。何時間、いや下手したら一日じゃ終わらない。

「ティリーさん、謝ることないぜ。こいつ、こういうことやるの大好きだから。あんた、楽しかっただろう?」
 アーサーさんが笑顔で答えた。
「ああ、つい時間が経つのを忘れてしまった」
「ちなみにどのくらいかかった?」
「問題はすぐ頭に浮かぶんだが、解答含めて文字におこすのに手間がかかった。二十分ぐらいか」
「・・・」
 もう、わたしは何も言えなかった。

 本物の最終兵器だ、この人は。    (8)へ続く

ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」