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銀河フェニックス物語<出会い編>  第一話 永世中立星の叛乱 (32)

第一話のまとめ読み①(1)~(10)   ②(11)~(20)   ③(21)~(30)
永世中立星の叛乱 (31)

「ラールゼットは爆破します。あなたの部下とともに私が向かいます」

n31アーサー正面スーツ前目真面目

 御大自ら現場に乗り込むと。 

 話を聞いていた部下のヤンが手を挙げた。
「隊長、俺がトライムス少佐と爆破に向かいます。この方は信頼できます」
 俺の右腕、近衛副隊長だったヤンにそこまで言わせるというのに興味がわいた。お手並み拝見といくか。

「わかった。協力しよう」

「何だか艦をぶっ壊すほうが面白そうだな」
 レイターが不満げにつぶやいた。
 この男はよくわからないが、ラールゼットさえ爆破してもらえれば我々はそれでいい。
 我々を利用するというのなら、こちらも連邦軍を利用させてもらうだけだ。

 そして、ラールゼットを再度製造させないために、集中電算室から軍艦の情報を回収しておくことは俺たちの利益にもなる。

* *


「お、いい匂いじゃん」
 レイターは突然帰ってきてフェニックス号のリビングに顔をだした。
「レイター! 大丈夫? 心配したのよ」

 フレッド先輩が声をかける。
「とにかく戻ってこられて良かった。本社から帰還命令が出たよ。仕事は終わりだ。こんな状況だから契約に関して我々の責任は問われないそうだ」
「そりゃ良かったな」

「なあ、君の腕なら空港の管制がなくてもここの高重力圏を出られるだろう」
「まあな。銀河一の操縦士だし、この船5S-Lだから」
「そうか」
 フレッド先輩もわたしも期待をこめてレイターを見た。

「ただ、こんだけの高重力ぶち破ると管制できなくなって、しばらく他の船が出られなくなる」
「こんな状態だ、他の船に構っていられないぞ」
「ばーか、宇宙航空法違反取られる」
「宙航法違反なんて君は年中してるじゃないか。ここへ来る時だって君はどれだけ違反したんだ。僕は知ってるぞ。速度オーバーは当たり前、侵入禁止区域も航行していたじゃないか」

 そうだったんだ。わたしは全然気づかなかった。
「俺は捕まる違反はしねぇの。銀河一の操縦士が免停なんてことになったら恥ずかしいじゃねぇかよ。ま、この船にいる限り安全だから飯にしようぜ」

 「ティリーさんと俺は半熟、フレッドは固焼き、と」
 レイターはわたしの炒めたハムとたまごを使って手早くハムエッグを作った。

 フレッド先輩は何も言わずに食べ始めた。
 作ってくれたレイターには悪いけどいろいろなことがありすぎて食欲が無い。

「とにかく一口でいいから食べてみな」

n28下向き@下向き微笑

 気は進まなかった。
 けど、レイターのめずらしく優しい声につられて口にした。

 不思議だった。食べたいという気持ちは無いのに一口食べたら、次から次へと口に入れていた。
「ティリーさんの炒めてくれたハムは美味いねぇ」
 わたしが炒めたからじゃない。レイターが作ったからだ。
 半熟の加減が絶妙だ。

 味わう余裕なんてないと思っていたのにおいしい。

 朝、軽く食べてから何も口にしていなかったことを思い出した。
「食べられる時に食べとかねぇと人生損するぜ」
 そう言ってレイターはウインクした。     (33)へ続く

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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」