見出し画像

アパレル業界の廃棄問題は核軍縮と同じチキンレースの様相だ

昨今、アパレル業界の廃棄問題が取り沙汰されている。食品ロスも同様に取り沙汰されているが、SDGsなどの流れもあり、議論は盛んとなり、アパレル業界の悪習が際立つ状況となってきた。

今回はアパレル業界の廃棄問題について考察して行きたい。

何故作りすぎるのか

ネット記事に溢れているアパレル廃棄問題。「〇〇億着作って〇〇億着売れ残る」などと言う数値的裏付けは割愛させて頂くが、洋服が作りすぎで余りにあまり、毎シーズン莫大な量が廃棄されているのは紛れも無い事実だ。

それなら何故作りすぎてしまうのか?

まず、根底にあるのはアパレル業界の販売機会ロスに対しての恐れだ。アパレル業界にとって欠品する事は悪であり、売り切れることが無いように仕入れを行う。その考えが根底にある以上は廃棄を無くすのはなかなか難しいだろう。

また、前年踏襲と言う悪習も大きな要因だ。

商売をする上で、前年売上より成長を目指すことは大前提。前年売上から成長するために資金が投資される。仕入れ予算だ。

これはシーズン毎に、もちろん見直しをされて最適なMDにしていく訳だが、アイテムによって増減される事が大半で、総額はそこまで大きく増減する訳ではない。

ただ、それはコンビニの仕入れで弁当が売れ残るから、おにぎりに変えてみるのと同じで、そもそもそのコンビニに食べ物を買いに来る需要が少ないのであれば、売れ残る物のバランスが変わるだけだ。

〇〇億着廃棄する、と言うような状況なのだから、総額自体を減らさずして廃棄を無くせる訳がない。

公共事業でやたらと年度末に道路工事が増えるのも、使い切らなければ、翌年予算を減らされてしまう事にも似ているのかもしれない。

仕入れはSALEありきの量

本来、商売としてはプロパー販売で完売を目指すのが当たり前だが、アパレル業界はそんな事をリアルに考えている人間はいない。

SALEはイレギュラーな事態ではなく、最早当たり前であり、更にSALEで残った場合の販売チャネルとしてアウトレットまでも完備する。アウトレット専用品すら用意される状態だ。

「本当はこんな状態は駄目なんだ」

と、アパレル業界は考えているが、ある一社がこの状況を打開しようとしても、SALEやアウトレットの売上で自社がす取り残されるかもしれないというジレンマがある。

消費者もまた、プロパー価格に対して、

「どうせ下がるんでしょ?」

と言わんばかりに、プロパー価格に対しての不信感やSALEやアウトレットに対しての期待感が浸透仕切っている。

こういった競争に巻き込まれていない会社もある。エルメスなどのSALEを一切行わずアウトレットも無い付加価値の高いブランドだ。

こういったブランドは値下げせずして売り切れもすぐに起きる。だが、高付加価値の為、利益率が高く収益として成立する。

SALEを行わない勝ち組にも、ステータスや付加価値を維持する努力は大変だろうが、不毛な消耗戦ではないことは確かだ。

大半は先に挙げた通り、ジレンマを抱えながら仕入れを行い、販売し、売れ残る。この競争は一社だけの行動では修正されない。大半の会社が「仕入れを減らそう!廃棄を減らそう!付加価値を高めよう!」とまとまって行く事に加え、消費者がそれに納得する必要がある。

核軍縮と同じチキンレース

核兵器など、本当に欲しいと思っている人などいない。莫大な開発費、管理費、何よりボタンを押すだけで地球を滅亡させてしまう程の威力を持つ物など、本心で言えば誰もいらないだろう。

にも関わらず、核兵器を所有する理由は国威をもち、他国を牽制する抑止力が必要だからだ。

アメリカが持つならロシアや中国が持つ。有事の際に、一方的に負けてしまう恐れからだ。

核兵器禁止条約なるものがあるが、国連がリーダーシップを取って、

「核兵器を無くそう!」

と呼びかけるのは、SDGsにも似ている。

結果的に核兵器は全く無くなっていないし、減らすどころか北朝鮮のように核兵器保有を目指す国すらある。

悪いと分かっていながらも、自分の身を守る為に、周りを牽制する為にやってしまう。アパレル業界も同じだ。

核軍縮が進まなければ、いずれ世界が滅亡するように、アパレル業界の廃棄問題が解決に向かわなければ、いずれ破綻する。

どの国、どの人種、どの年代、あらゆる場所で形は違えど同じような事が起きているのかもしれない。

「テスト勉強してない」

と言いつつ、実は勉強していて周りを出し抜くような行為も本質は同じで、自分は勉強していると高らかに言えば、周りが危機感を持ち勉強する。結果的に多くの人間が学力が上がり、良いことしかない。

国連がSDGsを謳うのなら、アパレル経営層が強く賛同し、仕入れを減らして付加価値を高める。消費者が納得してプロパーで買いたくなるレベルにまでだ。

誰がリーダーシップを取り、誰が賛同し追随するのか。それは本当に賛同してるのか。そんな疑心暗鬼がアパレル業界を取り巻く。


このチキンレースの勝者は誰なのか?臆病に残るのが分かっていながらも仕入れ続ける方なのか、勇気を持って仕入れを減らし付加価値を高める努力をする方か。

核軍縮と比較して考えるなら間違いなく後者が勝者になる事を願いたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?