自転車と、ヘルメット。
中学生になったら、5キロほど先の中学校に行くことになっていた。
そのあたりでは、他に学校もなく、それ以外の選択肢もない。
男子は、坊主頭になり、ヘルメットをかぶり、その頃多かった変速機付きの自転車を購入した場合は、わざわざ、その変速機だけを外した自転車に乗って、通学をしなければならなかった。
すごく嫌だった。
その少し前に、首都圏に転校した。
その後、サッカー部に入ったので、結局、髪の毛は短くしたが、自転車にヘルメットの義務はなかったので、ヘルメットからは逃げられた。
それから、何十年か経って、また自転車でヘルメットをかぶるようになるとは思っていなかった。
自転車の変化
スポーツタイプの自転車は、進化を遂げて、うちの近所の河川敷でかなりのスピードを出していて、いつの頃からは、個人的には「エイリアンタイプ」と呼んでいる不思議な流線型のヘルメットばかりを目にするようになった。
その流れとは別だったけれど、電動アシストの自転車が、どんどん普及して、特に子どもを乗せた女性が乗っている姿が目立ち、そのスピードはかなりのものだったから、自転車自体が、別の乗り物になりつつあるようにも感じていた。
だから、乗り方なども含めて、メーカーなどが研究すれば、安全で、さらに性能をフルに発揮できるのではないかと思っていた。
法律
気がついたら、法律が変わることになっていた。
2023年の4月1日から、自転車に乗るときもヘルメット着用が「努力義務」ということになった。
「義務化」であれば、それは、守るべきルールになるのだけど、「努力義務」という、柔らかく忖度を強要するような、かなりあいまいな基準に、微妙にもやもやしていた。
それでも、ずっと気になっていたし、自分だけだったら、様子を見て、具体的に注意をされたりしてから、考えればいいのでは、とも思っていたが、妻に伝えたら、とても気にしていたので、これは一度は自転車ショップに行って、聞いてこないと、と思った。
自転車保険
ずっと地元で生まれて育った妻にとっては、自転車屋は駅前にあって、空気を入れるサービスまであったらしいが、今は、そういう個人商店ではなく、近くのホームセンターの中にある「サイクルショップ」に行かなくてはいけない。
長く、自転車に乗っていなくて、ここ何年かで、ご近所の方から、不要になった自転車を譲ってもらい、防犯登録もし、妻は傷害保険に加入していたのだけど、私は生命保険だけだったから、いろいろと検討して、自転車保険に入ることにした。
だから、まずは、自転車保険のことを聞いてみようと思って、そのついでにヘルメットのことも考えようと思った。
サイクルショップ
近所のホームセンターの中にある「サイクルショップ」に行った。
いろいろと聞いて、結局、この「TSマーク」にすることにした。
ただ、点検をした上での加入なので、1時間くらいかかると、ショップのスタッフに言われる。
さらには、ヘルメットのことを聞いた。
……努力義務ということなので、正直、実際にどうなるのかはわかりません。そして、罰金などは取られるまではないとは思いますが、それでも、正確には分からないです……。
そんなふうに正直に答えてくれて、だけど、警官に注意されて、罰金を取られたりすることも、まったくないとは言い切れないので、もしも、そんなことがあったら、と想像すると、とても、すごく、嫌な気持ちになるのは間違いないので、やっぱりヘルメットは買おうと思う。
そのサイクルショップでも、ヘルメットはあって、1種類だけ販売していて、約6000円するらしい。しかも、残り一個になっていた。
その値段に、決意がまた鈍り、あと1時間あるので、必要な買い物をしようと、妻と、そこを離れた。
ヘルメット
売り場を、ちょっとウロウロする。ボンドを探していたら、そのそばにヘルメットが並んでいる。そこは、バイクのヘルメット売り場だった。
値段も、3000円台からで、考えたら、ヘルメットであれば、バイクの方が安全性は高いのだから、これでもいいはずだと思ったし、ここには、種類もいくつもあった。
妻と一緒に、試着をしてみる。
文字が入ったのが、ちょっと良かったのだけど、妻には、チャラい、と言われ、断念し、近所の個人商店の八百屋さんが、バイクに乗っている時に着用しているようなヘルメットに、黒と赤があって、両方試して、赤にしようとした。
ただ、その前に、さっき自転車を預けた「サイクルショップ」に、一応確認しようと思った。
小走りで、そのショップに戻り、最初にヘルメットのことを聞いたスタッフがいなかったので、ちょうど、自分たちの自転車の点検をしている、もう少しベテランの男性に聞いてみた。
バイクのヘルメットでも大丈夫なのかを尋ねると、苦笑と困惑の表情で、それでも、答えてくれた。
……重さが違うので、できたら、自転車用のヘルメットを買うことをおすすめします、長く乗るほど、負担が違ってきます……。
それで、その「サイクルショップ」で、一個だけ残っていたヘルメットを持ってみたら、確かに、ウソのように軽かった。
その言葉はありがたく、参考にはして、その上で、またバイクのヘルメットを売っている棚に戻り、妻も試着して、重さも確認し、大丈夫だということだったので、約3000円で購入する。これで、バイク用だから、ということで、警官からダメ出し、ということはあるのだろうか、とちょっと心配になったが、安全性を考えたら、それは、大丈夫だろうと、自分に言い聞かせる。
点検
それから、コンパクトなフードコートで、早めの夕食を食べて、「サイクルショップ」に戻ったら、点検も終わっていた。
……反射板がないので、それを取り付けます。と言われ、その作業をしてもらい、それも含めて、約3000円になった。
あとは点検の上、状態のよくない部分もあったと報告もしてもらい、ただ、その交換をすると1万円程度になってしまうから、とにかく、今のところは大丈夫なので、来年も点検し、保険の更新もするから、その時か。もしくは、その途中で、安全に関わるようになったら、考えようと思った。
なにしろ、自転車の保険にも入れたし、ヘルメットも購入したし、これで、これからも自転車に乗るときは、少し安心は増えたはずだ。
その「サイクルショップ」の、一個だけ残っていたヘルメットは、もう売り切れていた。
自転車とヘルメット
それからは、自転車に乗っている人の姿に対して、より集中して見ていたと思う。
4月に入ってからも、それほどヘルメットをしている人は目立たず、たまにみるのは、高齢者ばかりだった。
時々、ヘルメットを買ったのは、早まったかも、と思う。
買い物も、ヘルメットを持ち歩くことを考えて、なんとなくおっくうになり、自転車を使わず、歩いていた。それでも、図書館の返却日になったので、ちょっと覚悟を決めたような気持ちになり、準備をする。
ヘルメットに、かなり昔にサッカーショップでもらったステッカーをつけたい。
妻と相談して、左側面に貼り始めたら、ヘルメットは、当たり前だけど、曲面で、そのままだとステッカーはシワが寄ってしまうので、妻が、何ヶ所か、カッターで切り込みを入れてくれて、それで、なんとか貼ることができた。
ちょっと違うヘルメットになった。
そして、フィット感を確かめながら、あごひもの長さなどを調整する。
これで、使える。
図書館とヘルメット
ヘルメットの、あごひもを、シートベルトのように「カチッ」としめて、それで、自転車に荷物を載せて、それで、図書館に向かう。
しばらく走ったら、いつもと微妙に違うのに気がついた。マスクをするのを、ヘルメットに気をとられて、忘れていた。
外出する時のノーマスクは、コロナ禍がはじまって以来、初めてだった。
道ですれ違う自転車の人たちは、ヘルメットをしていない。
おそらくは10台以上は見たはずだけど、小さい子どもが二人だけヘルメットをしていた。
自分が先走っているような気持ちにもなる。
図書館にマスクをしないで入ったのも、コロナ禍以来、初めてだった。内部は、スタッフの人たちも含めて、来館者も、みんなマスクをしていて、なんだか後めたい気持ちにもなる。
本を返して、本を借りる。予約していた本も、何冊か来ていた。
それから、また新しく借りるために、館内を回って、さらに借りる手続きをしているときに、ちょうど予約していた本が届いたと聞いて、今、借りようとしていた本を、1冊返して、制限内の12冊になるように調整した。
そして、大きめのバッグの中に本やCDを出したり入れたりしているうちに、サイフを持ってくるのを忘れたのに気がついた。サイフを持ってこないのも、外出する時には珍しかった。
買い物ができないので、家にそのまま戻った。
坂道を下る時、風を切る。
体に感じる風圧だけではなく、これまでよりも、風の音が大きく聞こえるように思う。
もしかしたら、ヘルメットが流線型に近く、しかもなめらかな質感で、まるでビル風のように、そこだけ風速が上がっている可能性はないだろうか。
家のそばまで戻ってきて、自転車でヘルメットをしている人を、今日初めて見た。おそらくは河川敷から走ってきたので、スポーツサイクリストのような人に見えたから、以前からヘルメットをしている人かもしれない。
この記事↑だと、ヘルメットはすごく売れているようだけど、今のところは、それほど多数の人が着用しているような印象は、まだない。
それでも、これから、自転車に乗るときは、ヘルメットを着用することになると思う。
これからの小さい楽しみは、いろいろな場所で、かっこいいステッカーがあった時に、買っても貼る場所がないから購入しないことも少なくなかったけれど、これからは、ヘルメットに貼れる、と思って、買えるようになったことだ。
(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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