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テレビについて⑤「文化資本としてのバラエティ」---- 関ジャム完全燃SHOW

   日曜日の夜にぼんやりとして見ていて、そんなに熱心な視聴者でもないので、申し訳ないし、「関ジャニ∞」のファンでもないから、あんまり語ってはいけないかもしれないけれど、でも、時々、とても感心する番組がある。

音楽についての「教養」

 「関ジャム完全燃SHOW」は、そんなにはっきりとした記憶でないのだけど、始まった頃は、もっと「関ジャニ∞」が、音楽的に活躍するような場面が多かったと思うのだけど、メンバーが脱退したりすることもあったせいか、というよりは、おそらく長く続いていく中で、いろいろな企画が立てられた結果だとも考えられるのだけど、結果として「音楽について」様々な情報を伝えてくれるような回が増えているような気がする。

 例えば、矢沢永吉が、あの独特で魅力的で、思わずモノマネしたくなるような語り方はいつもと変わらないものの、楽曲をどう考えて制作しているか、について、かなり掘り下げた話もしていた。

 少なくともテレビでは、自分が情報に疎いせいもあって、こんな話を聞いたことがなく、それはNHKのEテレのような内容でもあって、他には、音楽を聞いている時に、どうしても耳に入ってきにくいベーシストや、リズムを刻むドラムの特集などもしていた。

 約1時間の番組で、視聴者として、そこまで深く理解できないとは思うのだけど、音楽的な教養がある人にとっては、画面を通してとはいえ、演奏もしてくれているので、もっと得るものが多いと思う。

番組としての蓄積

 番組は2015年からで、バラエティでもあるのだけど、「音楽について」、かなり正面から取り組んできている蓄積があるせいで、矢沢永吉のように、レジェンドと言われるような大物ミュージシャンも、複数回登場し、その度に、「音楽について」、おそらくは他の場所ではあまり語られないことも話す、といった好循環が生まれていると思う。

 関ジャニのメンバーだけではなく、そこに古田新太がいて、さらに上の世代の「聴き手」としての役割も果たしているから、ただ、昔を懐かしむだけでもなく、今、売れている音楽だけを追っているような印象も薄くなり、歴史にも、今にも、適切な目配りをしているように思う。

 自分が中年となり、今の音楽への触れ方について、戸惑うことも多くなっているから、こうした心地よい距離感を作ってもらって、ありがたい気持ちになる。

「年間ランキング」

 この番組は、毎年、年頭にその前年の「音楽ランキングベスト10」を発表し、それについての解説がされるプログラムが繰り返されている。こうしたランキングは、「誰が選ぶのか」というのが、とても重要なのだと思うけれど、ミュージシャンというプレーヤーと、音楽プロデューサーが並んで、それぞれの選択が重なったり、もしくは同じ楽曲でも違う言葉で語られたりするのは、とても新鮮だった。

 さらに、自分にとって、知らない音楽を教えてくれるのは、やっぱり嬉しい。
 リーガルリリーも、アラバマシェイクスも、toeも、長谷川白紙も、恥ずかしながら、この番組がなければ、知らないままだった。

 基本的には「ドレミファソラシド」しかないのに、新しい音楽が生まれ続けてくることは、いつもとても不思議だけど、おそらくは、こうした番組では、新しさを分かりやすく紹介してくれていると思われるので、私のような素人にも飲み込みやすいと思っている。

 だから、「年間ランキング」は、結構楽しみにもして、歳を重ねると、だんだん気持ちも下り坂になっていくのだけど、そこで紹介された自分が知らない音楽を聞いてみると、少しでも気持ちが「新しくなる」のを感じることがあるから、ありがたい気持ちもある。

音楽プロデューサー

 このランキングの時に、ここ数年の「レギュラー」になっているように見える音楽プロデューサーが2人いる。

 一人は、いしわたり淳治。その実績は画面に文字として並んでいて、だから、こうした人の凄さみたいなものは、本当の意味で分からないと思いながらも、選ぶ曲、さらには、そのコメントに対して、高いプロフェッショナル性を勝手に感じている。

 そして、いしわたり氏は、家で妻と番組を見ながら、失礼ながら「ほめわたり」と呼んでいるほど、音楽に対してとても肯定的な言葉を連ねてくれていて、説得力とともに、どうホメるのか?という予想をしながらも、それを上回ってくるので、それも含めて、感心している。

 おそらく、いしわたり氏も、自分にとって、納得がいかない楽曲に対しての厳しさはあって、選ばないような音楽に対しては、かなり苛烈な見方をしている可能性もあるが、テレビ画面では、いつも穏やかに、時には熱をこめて音楽を紹介してくれている。

音楽プロデューサー 「蔦谷 好位置」

 ランキングで、「レギュラー」のように見えるもう一人の「音楽プロデューサー」と紹介されているのが、蔦谷 好位置だった。

 この名前を知った時に、ものすごくシニカルか、もしくはとんでもなく自信がある人なのだと思った。それは、今は、「ツタヤ」と言っても、そんなにピンと来なくなってしまっているのかもしれないけれど、駅前にあって、CDなどの販売もレンタルも行って、音楽業界にとって、今より重要な位置にあったと思う。

 だから、この「蔦谷 好位置」という名前は、「ツタヤ いいポジション」に聞こえ、それはエンターテイメント業界では、おそらくは、もっとも多く言われる単語でもある「売れる」ということともイコールに思え、その名前には、「売れればいいんだろ」というような微妙な怒りや、もしくは「売れることは簡単だ(質も担保しながら)」といった自信にも感じ、そして、どうやら「売れる」ことも実績を積んでいることに、凄みを勝手に感じていた。

 ただ、この番組を見ていて、その言葉は、視聴者としては、特にその音楽的な技術についてのことは、実は全部は分からないのだけど、蔦谷氏の語りの熱量によって、「この曲はすごいんだ」と思ったりできるし、その他の話も、ほぼ音楽の質について、に聞こえていた。

 さらに、今回、検索しただけなのだけど、「蔦谷 好位置」氏の本名は、蔦谷 恒一だと知った。こんな偶然と、その偶然を自分の力に変えたことに改めて凄さを感じた。

蔦谷好位置 2020年ランキング1位の選び方 

 2020年のランキングは、蔦谷好位置氏、いしわたり淳治氏、そして現役のミュージシャンとして川谷絵音氏が選んだ。そして、私にとって、今年も様々な新しい音楽を教えてくれて、それは、どこか気持ちが少し「新しく」なるような気持ちにさせてくれたのだけど、蔦谷氏が選んだ1位の選択は他の2人とは違っていて、やや意外な印象だった。

 蔦谷好位置の1位は、ROTH BART BARON「極彩|IGL(S)」。この曲は全ての祝われなかった命へのレクイエムであり、何があろうと圧倒的に生を肯定する応援歌に感じたとコメント

 それは、去年からのコロナ禍の中で、音楽としてのあり方も含めての評価であり、それは、音楽の質という理由だけではなく、大げさに言えば、音楽の使命みたいな部分まで視野に入れての言葉に聞こえ、それが耳に届いた時に、バラエティも、当然かもしれないけれど、文化資本の一つだと思った。




(参考資料)



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