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「東京ドーム○○個分」という「広さの表現方法」について。

 テレビを見ていたりすると、広い場所を映す映像とともに、「ここは東京ドーム〇〇個分」という表現はいまだにあって、聞くたびに微妙な違和感がある。

違和感の種類

 一つは、関東ならまだしも、関西以西の広い場所についても、「東京ドーム」が使われるのだけど、でも、それは「甲子園」や、九州ならば「福岡ドーム」(正式名称は、変わることもあるので、表記に迷いますが)といった施設名を使ったほうがいいのではないか、といった違和感を抱いてしまう。

 もう一つは、それと似ているのだけど、アフリカ大陸のとても広い国立公園などを表現するときに「東京ドーム〇〇○個分」と表現されるのを聞いたときは、あまりにも関係ないような気がして、そのときも違和感があった。

 インターネット上では、その「東京ドーム何個分」というような言い方がうっとおしいとか、おかしいといった声もあって、だけど、いまだに、その表現が多く使われている印象がある。

「東京ドーム」以前の歴史

 この広さの基準を「東京ドーム」とする方法は、主にテレビで見てきたと思うのだけど、その歴史は意外と長くて、「東京ドーム」の前は、同じ場所に「後楽園球場」があって、それが広さの基準として使われていた。
「後楽園球場〇〇個分」という言い方だった。

 どうして「後楽園球場」が広さの基準になったのか。

 ここからは推測になってしまうけれど、かなり昔からの、いろいろな歴史的な事実からみあっているのではないか、という印象がある。

「後楽園球場」は、プロ野球チーム「読売ジャイアンツ」の本拠地だった。

 野球は日本では特別な時代が長かった。特に、「読売ジャイアンツ」は、長嶋茂雄、王貞治、を代表として、すごい選手を揃え、1965年から1973年まで、9年連続日本シリーズ優勝を続け、それは「V9」といわれた。

 日本の高度経済成長は、1954年から、1973年といわれているから、その後半の約10年と、ジャイアンツの黄金時代が重なり、その人気が高いだけではなく、その時代を生きた人たちにとっては、野球チームを超えた象徴になっていたように思える。

 そして、今では考えられなくなったけれど、ゴールデンタイムに毎日のように野球の試合(ナイター)の生中継をテレビで放映していた。それも、ジャイアンツ戦を中心に生放送をしているから、よくテレビ画面で目にするのは「後楽園球場」ということになる。

 そんな、おそらくは今以上に「なじみ感」のある場所だったから、たぶん、自然に広さの基準として定着していったのだと思う。

 それに、これも推測だけど、読売ジャイアンツは読売グループであり、そのグループ会社である日本テレビは、民放では最初に放送を始めたはずだから、もしかしたら、それもあって「広さの基準は後楽園球場」を言い始めたのかもしれない。

「東京ドーム」の象徴すること

 その「後楽園球場」の同じ場所に「東京ドーム」ができたのが1988年だった。
 それは、のちに「バブル経済」といわれる絶頂期と重なり、さらに、その「東京ドーム」の構造は、「エアドーム」といわれるもので、それが意味を強くした可能性もある。

 その構造は、さらに昔のことになってしまうが、1970年の大阪万博の時に、初めて人類が月に行った宇宙船や月の石まで展示していて、入場まで何時間かかかる人気パビリオンのアメリカ館の構造も、エアドームで基本的には一緒だった。「東京ドーム」は、当時では最新の構造といわれていたが、アメリカ館とは、その見た目も、一見すると、かなり近いものだった。

 1964年東京オリンピック1970年大阪万博は、高度経済成長と重なり、それはスポーツイベントや文化イベントを超えた象徴的な意味を持っていたと思うし、それを今だに忘れられないから、21世紀になっても、東京オリンピックと大阪万博を開催したい人たちが、一定数いるのかもしれない、と思う。

 その象徴的なイベントで、有名パビリオンであったアメリカ館と似ているように見えた「東京ドーム」は、その高度経済成長の時代を覚えていて、1970年の大阪万博も記憶しているある年代にとっては、「後楽園球場」に続いて、特別な意味を持つ、象徴にも見える存在だったかもしれない。

 さらに、期せずして「バブル期」の記憶とも重なり、だから、「広さの基準」として、「後楽園球場」の後を「東京ドーム」がスムーズに引き継いだのだと思う。


「サッカー場」という基準

 この番組内↑で、北海道の西洋わさび田の広さを表現するときに「サッカー場いくつ」という言葉を選択したのを聞いた。

 サッカー場の広さは、施設によって、随分と幅があるはずだから、そう言われても、ちょっとピンと来にくいかもしれない。

 ただ、それは「東京ドーム」という基準の象徴性や、強い意味が特に通用する世代が、おそらくは中高年以上だとすれば、次の新しい「広さの基準」を表すものとして「サッカー場」を持ち出してきたのも、わかる気がする。

 たとえば、スペインのバルセロナには、FCバルセロナの本拠地でもあるカンプ・ノウというスタジアムがあり、同じ「サッカー場」であっても、バルセロナ市民や、世界のサッカーファンにとっては「カンプ・ノウ何個分」という広さの表現は、すごくわかりやすいものだと思う。


 これまでの日本国内での「広さの基準」であった「東京ドーム」に匹敵するような象徴的な建造物は、これからサッカー場になるのか、それとも別の構造物か、もしくはもっと別のものを「広さの基準」にするのかはわからない。

 いずれにしても、そろそろ「東京ドーム」だけが、「広さの表現方法」になっていた時代は、終わっていくような気配はしていて、それが、時代が変わっていく、ということだと思う。



(参考資料)



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