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期待を上回る、ということ

 近くの小さめのスーパーに入って、歩くと、その最も奥の場所にアイスボックスがある。

 その箱には、当然だけどアイスが並んでいて、そのアイスの売れ行きによるのか、区切りの幅が違う。

 広い幅を使って置いてあるアイスは、これまでもよく見たことがある商品だし、自分でも何度も買ったことがある名前のものが積んである。

 だけど、あまり売れないのか、すでにその商品の販売が終了しようとしているのか。どんな事情かただの消費者には分かるわけもないのだけど、すごく細いスペースしか与えられていないアイスがある。

 たぶん、アイスバーを縦にしてちょうど一本くらいの幅しかないから、店内を少し早めに歩いていると、その細いスペースに置いてあるアイスを、本当に見落としそうになる。


アイスの保存期限

 そのパッケージには、「#パン香るアイスバー」というハッシュタグがわざわざ入った言葉まである。

 そのパッケージの絵を見て、あんをはさんだフランスパンの味がすると思って、アイスで、しかもフランスパン?といったことを思って、食べたことがない、と買ってしまい、それもできたら妻と一緒におやつの時間に楽しめたら、と考えた。

 だから二つ買ったのだけど、まだ寒い季節で、それにすぐにすすめる勇気もなかったので、そのまま冷凍庫にしまっていた。それは、ずっとそこにあって、あまり長くあると、妻が消費期限のことなどを心配するので、その時には昔アイスのことで「お客様窓口」で聞いたことを伝えたりもした。

 アイスは、ずっと冷凍庫に保存してあれば、基本的には賞味期限はありません。ただ、停電などにより、一時期でも少し溶けた場合には、少し風味が落ちます。

 昔、空き家になってしまった実家に残されていたアイスについて、電話で聞いて、それが自分のあまり豊富でない知識に加わって、こういうときに繰り返すことになった。

 その言葉に、妻がどれだけ納得してくれたか分からないものの、それからしばらくまだ冷凍庫の中にあった。

 そこには、あまり見たことがない種類のアイスがある。

 そして珍しさが高いほど、手にとって、やっぱり買いたくなって、ちょっと迷って、買ってしまうことが多い。

 今回も、そうして買ってしまった。

あんホイップフランス

 その後、桜が咲いて、夏日のようにやたらと気温が高い日があったと思うと、また寒くなって冬に戻るようなことが繰り返されて、だから、アイスを食べる機会をつかめないままだった。

 そんなとき、ちょっと暖かい日があって、妻が「食べよう」と言ってくれて持ってきたのが、あんホイップフランスだった。

 その味に対して、買った人間の微妙な責任として自信が持てなかったので、なんだか戸惑いもあったものの、今食べないと、もしかしたら夏までその機会がないと思ったので、食べることにした。

 変わった味で、ちょっとうれしくなりたかった、という気持ちだったから、それほど期待もしていなかった。

期待を上回る、ということ

 だけど、先に食べ始めた妻は、思ったより反応が良かった。

「パンの感じがする。 
 なんでだろう----すごい。
 ちょっと柔らかい感じまでする」

 その言葉がかなり意外で自分も食べ始めたら、確かにそうだった。

 アイスなのに、パンだった。もちろん本物のパンと比べたら、まだ差はあるのは当然だとしても、それでもずっと冷凍庫に入っていたアイスバーで、こんな味と感触がしたのは初めてかもしれない。

 パッケージには、フランスパン風コーチング。という表現をしてあって、それは何かを説明しているようで具体的には伝わってこないものの、何しろ、それは商品開発の成果というものだろうと思った。

 そのあとも食べ進めた妻は、中身の「北海道産生クリーム使用のホイップクリーム風アイス」も、さらに真ん中の「北海道十勝産あずきの粒あん」も、おいしいと言っていて、私も印象としてはあんバターのパンを食べている感覚だった。

 アイスなのに、どこか柔らかい感触を味わえるのは不思議だったし、その上で、ちゃんとあんホイップは、その味がしていた。しかも、カロリーも一本あたり151キロカロリーだから、控えめだと思う。

 完全に期待を上回っていた。

 それは意外でもあったけれど、うれしかった。

販売期間

 もしかしたら、このアイスバーは買ってから、日を置かずに食べた方がもっと表面の柔らかいパンの感触が味わえるのかも、と思った。

 だから、それからそのスーパーのアイスボックスを通るたびに、「あんホイップフランス」を探していて、特に細いスペースしか与えられていないアイスを見落とさないようにもしているのだけど、もう販売期間が終わってしまったせいか、あれから見ていない。

 ちょっと残念な気持ちはある。

 ただ、今回も「赤城乳業」の商品だったので、いつも何かを試みている感じは、すごいと思った。




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