見出し画像

VOC分析を活用したCX改善のポイント

前置き

コールセンターやカスタマーサポートの現場に集まる「顧客の声(VOC)」は宝の山とよく言われています。しかし定性データの分析は難易度が高く、なかなか活用までには至らないケースが多く見られます。また元データとなるCRMシステムへの入力情報の品質のバラつきや、偏った層の声しか集まらない、といった課題もよく指摘されています。一方で、近年では電話やメールだけでなく、チャットやSNSなどマルチチャネルを前提としたVOC分析環境が必須となってきており、VOCを取り巻く環境は否が応でもアップデートしなければならないタイミングを迎えていると感じます。

そうした状況の中で、あらためてVOC分析の手法を整理し、活用のポイントをまとめておく事はコールセンターやCSに従事される方だけでなく、顧客の声(VOC)を活用したいたくさんの方にも参考になるのではないでしょうか。

VOCとは?

まずはVOCの定義から確認していきます。

VOCとは、「Voice Of Customer:ボイス・オブ・カスタマー」の略で、「顧客(お客様)の声」を意味します。 VOCには、お客様アンケートへの回答、電話やメールでの要望やクレームなど企業に直接寄せられるものだけでなく、個人のSNSやブログに書かれたレビューなども含まれます。

コンタクトセンターの森

この定義のとおり、VOCとは企業に寄せられるお問い合わせや要望、またはクレームや、個人のレビューまでをも含んだ「顧客体験のフィードバック」であり、自社の製品やサービスの強みや弱み、そしてそれらを改善するためのアイデアやヒントが含まれている情報となります。

企業はこうした「顧客体験のフィードバック」を一次情報として自社のカスタマーエクスペリエンス(CX)の維持・改善・向上を常に行っていきます。

VOCのソース分類

VOC分析を行うためには様々な情報ソースを活用します

一言にVOCと言っても、その情報ソースは様々です。コールセンターでのお問い合わせの対応ログだけでなく、企業に散らばっている様々なデータを集約して分析をしていく必要があります。その上で、自社の製品やサービスの改善や開発につなげる事。更には自社が提供する顧客体験(CX)をより良いものにしていく事が重要です。

VOC分析の活動サイクル

VOC活動

VOC分析の活動サイクルは、3つのステップを踏んでいきます。それぞれのステップについてポイントを解説していきます。

  1. VOCの収集と蓄積

  2. VOCの分析

  3. フィードフォワード(改善活動)

1.VOCの収集と蓄積

VOCを収集していくためには、目的に応じた収集方法を検討する必要があります。CS担当者が受けたお問い合わせについては、対話メモなどをテキスト情報としてシステムに残すだけでなく、コールリーズンや問い合わせ分類といったタグ付けもセットで行う事で定性データだけでなく定量データとしても管理できるようになります。次にアンケート回答などは顧客情報と紐づけをしておく事で顧客属性に応じた細かな分析を行う事が可能になります。
ポイントとしては定性データをただ蓄積するのではなく、目的に応じて定量データとして分析できるように予め設計をしておく事になります。

VOCデータ蓄積のtips:タグ付けの重要性

「マルチチャネル対応をする上で効率的にVOCデータを蓄積していくためにはどうすればよいですか?」という相談を最近よく頂くようになりました。CSの現場ではよくあるのですが、電話の対応履歴管理とチャットシステムのツールが違う事によって、集計や分析に手間がかかるという課題です。

電話、メール、チャットのVOCを統合して収集するうえで意識をしたいのは「問い合わせ分類(コールリーズン)」「問い合わせチャネル」「問い合わせ結果」「VOC区分(苦情/要望/意見/相談/問い合わせ 等)」の定義を揃えた上で、それぞれの対応ログに【タグ付け】を実施する事です。タグ付けを行う事で、チャネルに左右されずに集計と分析をまとめて行う事が可能になります。

2.VOCの分析

VOCを分析するにあたっては、分析目的と分析軸を予め整理しておく事がポイントになります。分析目的については大きく2つに分けて設定します。1つ目が「顧客ニーズの把握」。2つ目が「顧客体験価値の向上」です。

顧客ニーズの把握
顧客ニーズの把握は、究極的には「問い合わせを発生させない」状態を目指す事になります。この目的では問い合わせに至った要因を分析する事で、打ち手や効果的な機能要件を導き出していきます。

顧客体験価値の向上
顧客体験価値の向上を分析目的にする場合、分析者は問い合わせに対する回答が、消費者の事前期待に答えているか?を確認していきます。この分析によってサービス体験や、サポート窓口での応対品質の維持・向上に活かしていきます。

分析軸について
VOC分析を行うにあたって、分析軸を予め決めておく事は分析作業を効率化させるだけでなく、分析目的に応じた現状可視化をし易くします。下図に記したように、システムから取得するデータとVOCのテキストを分析軸に応じた形でカテゴリ分類またはタグ付けする事で、様々な分析組み合わせを可能にします。

VOC分析軸と分析目的の整理

例えばある商品について苦情が多く発生した場合、上記で整理した分析軸を組み合わせる事によって、改善すべきポイントを明確にする事が容易になります。

例えばパスワードに関する問い合わせが多かった場合に、上記の「何を見て」や「何の目的」についてのVOCカテゴリが集計できていれば、どのポイントでパスワードを忘れるケースが多いのか?またどのペルソナにそのケースが多いのか?といった事を明らかにする事ができます。その分析結果を元に「顧客ニーズの理解」を踏まえれば、説得力のあるパスワード復旧のプロセス再検討案を社内にフィードバックする事ができるようになります。

3.フィードフォワードの実際

VOC分析のブレイクダウンとCX改善

上記図は、VOC分析をどの様にブレイクダウンし、改善活動へ活かしていくかを図解したものです。コールリーズンで分類したVOCを「wahat / why」という分析軸で振り分け、更に四象限に当てはめていきます。この四象限は縦軸を「即時性」と「非同期可能」、横軸を「標準対応」と「個別・専門対応」で分類しています。

第1象限:
解決に即時性が求められ、個別且つ専門性の高い要望は「イレギュラー対応」として個別に扱います。あくまで個別対応となるので、改善活動やその後の型化などとは分けて考える領域です。

第2象限:
解決に即時性が求められ、標準対応が可能なよくある要望は「CX改善領域」としてスピーディな改善活動を検討します。こうした問い合わせは事前期待も高く、その後の体験で不満が高まると顧客の離脱を招き易いため、サービス提供プロセスの改修や、対応するオペレーターの応対品質向上などテーマに応じた施策を講じます。

第3象限:
解決までの即時性が低く、標準対応が可能なよくある要望は「プロダクト(サービス)改修領域」として、根本的な不満を解消できるように開発部門やビジネス部門へ改善施策案を提案していく領域になります。

第4象限:
解決までの即時性が低く、個別且つ専門性の高い要望は「ソリューション開発領域」となります。この領域の改善施策は必要に応じて議論を行います。

CS部門においては上記四象限にバケツに分類したVOC分析から、特に「第2象限」と「第3象限」にフォーカスして分析レポートや提言を行っていくのが良いでしょう。

VOC改善プロセス

CSチームや担当者は前述のVOC分析の活動サイクルに沿って、VOC分析から改善を行っていきます。一方で、CXの改善はCS部門だけで実現する事はできません。サービス部門や営業、事業企画や開発など、多くのステークホルダーに改善の必要性を訴えていく必要があります。
そのために必要な事は、検討に足り得る「顧客の声(voc)」であり、Factベースで網羅性のある分析が不可欠になります。

社内を巻き込んだVOC改善プロセス

ステークホルダーを巻き込む形で、VOC活動を社内統合していくためには、下図のような改善プロセス図を用いて関係部署との連携や、定例mtgの開催サイクルなどをオーソライズする必要があります。

VOC改善プロセスの例

1ヶ月の中で、VOCのデータ分析がいつ行われ、そのアウトプットを基にどの様な検討を社内で行うのか?こうした取り決めをCS部門がリードしていく事で、会社全体でVOC活用の有効性を浸透しやすくなります。

まとめ

  • VOCとは企業に寄せられるお問い合わせや要望、またはクレームや、個人のレビューまでをも含んだ「顧客体験のフィードバック」であり、自社の製品やサービスの強みや弱み、そしてそれらを改善するためのアイデアやヒントが含まれている情報

  • VOC分析の活動サイクルは、「VOCの収集と蓄積」「VOCの分析」「フィードフォワード」という3つのステップを踏んでいきます。

  • VOC分析を行うにあたって、分析軸を予め決めておく事は分析作業を効率化させるだけでなく、分析目的に応じた現状可視化をし易くします。

  • CXの改善はCS部門だけで実現する事は難しく、他部署を含めた多くのステークホルダーに改善の必要性を訴えていく必要があります。そのために必要な事は、検討に足り得る「顧客の声(voc)」であり、Factベースで網羅性のある分析が不可欠になります。

宣伝いろいろ

①7/18と7/24にCS担当者のためのMeet Upを開催します!!

お申し込みは下記のリンクから!


②顧客対応の自動化、カスタマーサポートの最適化はチャネルトークで!

近日中に転職エントリ記載予定ですが、この4月からチャネルトークにjoinしております。

カスタマーサポート運用の「あたりまえ」を覆すポテンシャルを持ったプロダクトなので、世の中にどんどん浸透させたいという想いで毎日頑張っております。チャネルトークにご興味ありましたら、ぜひお声がけください!

③コールセンターとかCS全般のコンサル相談もやっております!

コールセンターの戦略設計、顧客対応の効率化、ツール選定などコンサル相談を受付ております。ご興味あれば X(旧twitter)や Facebook等でお問い合わせいただければ幸いです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?