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定額制の住み放題サービス "ADDress"

近年、オフィス環境を共有できる「コワーキングスペース」と呼ばれる場が増えてきた。コワーキングスペースでは、異なる職業や仕事を持った人たちが同じ場に集まり、作業場をシェアする。また、起業のときにオフィスを構えるのではなく、コワーキングスペースを利用するという選択肢も考えられるようになっている。

このご時世も相まって、出社して作業をすると言う従来の勤務形式はもはや古いものとなりつつあり、リモートワークという形で働き方が多様化している。

この様に「働き方」に様々な形式が見られる様になった現在、「住み方」にも従来とは異なる新しい選択肢がある。その中で、今回は定額制で全国どこでも住み放題の多拠点コリビング(co-living)サービス"ADDress"についてまとめてみようと思う。

概要

"ADDress"は、株式会社アドレスが2019年4月から提供する、登録拠点ならどこでも住み放題になるサブスクリプション型のサービスである。登録されている拠点は、北海道札幌市や神奈川県の鎌倉、静岡県南伊豆、鳥取、徳島、福岡……と全国各所に展開されており、都内にも2ヶ所の拠点が用意されている。これら各拠点の個室を自由に利用することができる。

働き方の多様化や、さまざまなライフプランに応じた生活拠点の気軽な変更を可能にする。地方にとっては、都市部に集中していた人口の地方への受け皿ができることで、短期的な観光ではなく、関係人口の増加による消費・地域活動を通した地域の価値を高めることにもつながる。

移動しながら生活する人たちをベースにして作り上げる分散型の社会システムのマッチングハブとしての役割を担う。

サービス詳細

月額4万円からで住み放題:
・電気代・ガス代・水道代は全て込み
・敷金・礼金・補償金などの初期費用は一切なしで、何度でも移動OK

生活・仕事に必要なものが完備:
Wifi・個室の寝具・キッチン・調理道具・家具・洗濯機・アメニティが全拠点に完備

同伴者も無料で滞在可能:
家族(二親等 以内)・固定のパートナー1名は追加費用なしで個室利用OK

個室を予約できる:
プライバシーを守りながら長期滞在
※一部の拠点はドミトリーのみ

各拠点は個室を確保しつつも、シェアハウスのようにリビング・キッチンなどを共有する。

空き家や別荘を活用することでコストを抑えながら、リノベーションによる快適な空間を提供し、共有の家具・wifi・光熱費・アメニティや共有スペースの清掃も含めて月額4万円からの低価格を実現。

会員同士の交流や地域との交流の機会も提供し、様々な地域で新たなコミュニティに出会える。少子高齢化の人口減少時代において、移住ではなく都心部と地方が人口をシェアリングする多拠点居住のサービスを低価格で提供する。

利用には事前予約が必要。会員専用サイトから、空き状況やアクセス方法を確認して予約する。なお、予約は3ヶ月先まで可能になっている。

またADDressでは、4万円の料金内で住民登録が可能な専用のドミトリーベッドを契約することができるようになっている。

最近では、ドミトリーベッドを“ホーム”として確保し住民票も置きつつ、さまざまな地方の拠点を転々とするユーザーも増えてきているという。

ADDressの楽しみ方

忙しい暮らしのなかでも生活の質を高めたい人や、自然豊かな環境でリモートワークを行いたい方など、幅広い年代・目的で利用可能。

フリーランサー:
平日はADDressのコワーキングスペースでリモートワークをして、週末はアウトドアを楽しむ1週間が過ごせる。ホテルのように一泊ごとの費用がかからずお得。

シニア:
地元の食材を使って料理をしたり、地元の穴場を散策したりと、夫婦で憧れだった地方での暮らしが楽しめる。観光地ではないのでゆったりと地方の自然な暮らしを味わえる。

ファミリー:
会員家族の利用は無料なので、家族でADDressでの暮らしを楽しむことができる。バーベキューが楽しめる大きな庭がある古民家や温泉付きの家もある。

アクティビティ:
ADDressの家は、山や海の近くも多く、サーフィンや釣り、サイクリングなどさまざまなアクティビティが楽しめる。

交流:
家ごとにさまざまなライフスタイルを送っている人たちと出会うことができるので、毎回新鮮に過ごせる。

ワーケーション:
仕事の時間と場所に縛られないワーケーションという働き方が実践できる。ADDressでリモートワークをしながら、リフレッシュし、生産性も高めることができる。

各物件には個性溢れる地域住人が管理者として担当に付き、地域との交流の機会やユニークなローカル体験、その地に暮らしているからこそ分かる情報を提供する。

サービスの背景

少子高齢化を背景とした空き家の増加が社会問題化している。自宅を所有する高齢者が老人ホームや子供宅などに転居することで空き家の増加傾向は続く見込みだ。

2033年頃には空き家数 2,166 万戸、 つまり全住宅の3割が空き家になると予測されている。さらには、地方から都市部への人口流入が加速しているため、地方の空き家問題は更に深刻である。しかも日本は新築購入の比率が85%以上と、欧米の20%以下と比較すると異常な数値だ。

一方、内閣府の「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」によると、東京在住者の4 割(うち関東圏以外出身者は5割)が地方への移住を検討している又は今後検討したいと考えているとのことだ。特に30 代以下の若年層及の移住に対する意識が高く、Uターンや2地域居住を行ってみたい人は約3割と若者の地方への移住、2地域居住のニーズが高まっている。

また、2011年3月11日の震災以降、IターンやUターン、地域おこし協力隊などの位置付けで、明確な意思を持ち、地方に行きたいと考える人も増えてきているという。

一方で、エリアによっては空き家はあるけど住まいがない、という状態になっている場所もある。一軒家や古民家など、家族世帯が移住するような大きな物件はあるが、単身者が一人で暮らすような家はほとんどない。

つまり、地方が抱える課題と、都心に住む人が持つ地方移住の需要に対して、それらを繋ぐものがなかったのだ。

デュアラーとは

リクルートホールディングスの「2019年のトレンド予測」では、「デュアラー」がトレンドになると紹介されている。

デュアラーとは、デュアルライフを実践する人、「都心と田舎の2つの生活=デュアルライフ(二拠点生活)を楽しむ人」である。ミレニアル世代を中心にシェアリングエコノミーやシェアハウス・コワーキングオフィスへの需要も高まっており、忙しい暮らしのなかでも生活の質を高めたい人や、サテライトオフィスやオフサイトミーティングなど自然に囲まれた仕事をする時間を大切にする人が増えている。そのような背景のもと、”ADDress”は空き家問題の解決と若者の地方への柔軟な居住の受け皿になることを目指している。

一点注意が必要なのは、同じ個室を連続で予約できるのは最長7日間だということだ。週末利用が目的の方ならまだしも、このサービスだけで移動しながら生活をしようと考える“真のアドレスホッパー”にとっては厳しい条件かもしれない。
この制限を設けた理由として、株式会社アドレス代表の佐別当氏は次のように話している。

全国各地の拠点にはそれぞれにいい所があります。しかし、立地的な理由で人気になる物件なども出てくるんです。私たちは、できるだけいろんな人にいろんな場所を体験してもらいたいという思いで、日数制限を入れることにしました。もちろんリピートは可能なので、再度気に入った家を利用することはできます。

しかし、ユーザーは“移動”を余儀なくされ、これは、移住に関心はあるが実行に移せない人たち、つまり従来のデュアラーではない2、30代の人たちにとっては、なかなか痛い出費になるということだ。

そこで、株式会社アドレスはライフプラットフォーム構築のため、JR東日本スタートアップ、ANAホールディングス、IDOMと提携。飛行機・電車・車の移動コストを大幅に下げることで「住まい+移動社会」の実現を目指している。

ANAとの連携では、会員料金に月額2〜3万円を追加することで、全国の指定路線・便に4回乗ることができるサービスの実証実験を2020年1月より開始。

こうなればもはや、地方は「週末のリラックスできる場所」ではなく、「もうひとつの地元」のような感覚になるのかもしれない。そして、その世界観こそが佐別当氏が望む社会の姿なのだ。

参考:
ADDress
最近流行りの定額制住み放題サービス「ADDress(アドレス)」を徹底解説してみた
定額で全国住み放題の多拠点コリビング(co-living)サービスを展開する「株式会社アドレス」を設立。
“全国住み放題”の定額制シェアサービス「ADDress」--2019年4月に開始

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