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ツインテールの天使を殺した

151センチ39キロ、てんびん座でA型の君は黒髪主義者だった。痛むことを知らない艶髪は天使の輪がかかったようで、重たい前髪は眉下で平行に揃えられていた。
確か去年の夏。やけに暑くてどうかしそうな日に僕はどうかしてしまった。君を家に呼び出すのははじめてのことだった。君が僕に対する警戒心など微塵もないことはとっくの前から知っていた。僕ばかりが君のことを知っている。でも君は僕の本名もこの社会のことも知らなかったから、愛情もセックスも知らなかったから、僕は君をぐちゃぐちゃに犯した。ツインテールを掴んで後ろから突く度に君は誰にも届かない悲鳴めいた声を出しながらぼろぼろと涙を零していた。か弱く、折れてしまいそうで何も知らない君にイライラして無性に殺したくなった。もしも、今、目の前で僕に背中を向けて震えている君が死んだら?それも、僕によって殺されたら?ぞくっとした。大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで大好き仕方ない君を殺すことなんて!それを味わったら最後、これを超える快感などこの世に残っていないことはわかっていた。掴んでいたツインテールを急に離してみる。その反動で君の頭ががくりと揺れた。なんて脆く崩れてしまうんだ。もっと喘げよ。叫べよ。ねえ、お願い、お願いだから、社会から隔絶された僕を見捨てないで、白いシーツに落ちた紅い体液を見ないふりして欲望に従った僕を。

次の日、君は自殺した。

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