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もう一度。【ショートショート】

深夜のバス停。満月ガスとバスの往復が一枚綴りになった切符を握りしめる。

「あんたもこのバスに乗んの」
女がぶっきらぼうに話しかける。

「だったら何」
俺はガン飛ばしてそう答えた。

「このバスの行先、分かってんの」
「あぁ」
女はそれ以上何も聞いてはこなかった。

到着したバスへ乗り込む。
前方へ座った女は車窓を物悲しそうに眺めていた。

元よりこのバスの噂は知っていた。
一度だけ望む幻が見れるガスとそこへ向かう唯一のバスがあると。

噂では、満月の夜にだけ発生するガスで満月ガスと呼ばれていた。

俺はここに一縷の望みをかけていた。
俺のせいで死んだ妹に会うために。

「なぁ、沙耶、悪かった。全部俺のせいだ。俺がお前を親父おやじから守ってやれなかったから」

俺がもっと強ければ。
俺にもっと勇気があれば。

後悔は募るのに、親父を殺すことはできなかった。
せめて母が生きていれば少しは違ったのかもしれない。

俺はもう一度、沙耶にちゃんと謝りたい。

あの女も俺と同じだろうか…




【410字】


《今回のお題》

たらはかにさん(毎週ショートショートnote)
▶︎【満月ガスとバス】という裏お題でショートショート


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メインの小説はどうでしたか。

この後にデザートでもいかがですか。

ということで、私がこれを書くに至った経緯や意図、その時の思いや感情などを知りたいと思った方はぜひ以下リンク先の『小説(裏お題)のストーリーができるまで。【デザート】』を読んでみてください。

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蒔倉 みのむし
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