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法人に「2階建ての退職金制度」を作りましょう[Webマガジン002]

はじめにそもそも退職金を貯める手段について考えてみましょう。
この記事には個人や企業を特定する様な内容は含んでおりません。また、筆者個人の考えに基づく退職金に関してのテーマです。ご了承下さい。

現金でのやり繰り

①現金で会社の内部留保にプール

[メリット]
・言うまでもなく最も流動性が高い
[デメリット]
・法人税等が差し引かれた後のキャッシュを原資としてプールしていく

②退職金の前払い⇒積立分、今の給与を引き上げる

[メリット]
・従業員さんの"現在"の生活水準向上
[デメリット]
・従業員さん側は社会保険料負担で約15%、額面からお金が減る。
・会社は社会保険料負担で約15%、給与額面以外にコストが上がる。

公的な退職金制度や、生命保険などを活用する

③公的な退職金制度について

・中小企業退職金共済/
(掛金月額5,000円~30,000円)
(短時間労働者は掛金月額2,000円~4,000円の選択が可能)

・特定退職金共済/各地の商工会議所
(掛金月額1,000円~30,000円)

[メリット]
・掛金が全額損金算入可能

Tips/掛金が経費化出来る事で?
現金で会社に内部留保をすれば⇒法人税等がかかる
給与として退職金の前払いをすれば⇒労使折半で社会保険料がかかる
つまり、経費で貯めるという事は
法人税等や社会保険料による目減り前のお金を貯めるという事

・アルバイト・パートさんの加入可能

・中退共制度⇔中退共制度
中退共制度に加入している企業間を転職した場合に、通算ができる
例えば、中退共制度に加入済の法人A⇔法人Bへの転籍の場合も対応可能

・特退共制度⇔特退共制度
制度に加入する事業所間や、該当所が通算契約を締結している
他の特定退職金共済制度に加入する事業所との間で従業員が異動する場合、通算を申し出れば、通算元契約の退職金を引き継ぐことができる。

但し、特退共団体により異なりますので、条件を確認する必要があります。

・中退共制度⇔特退共制度
特退共⇒中退共への積立金の非課税転移(ポータビリティ)はOK
中退共⇒特退共への積立金の非課税転移 私の住む地域の場合は不可

[デメリット(?)]

・原則全員加入(任意包括加入)

・退職金が会社を経由せず、直接従業員さんに支払いとなる事
(原則、どんな退職の仕方をしたとしても従業員さんの固有の財産になる)

④法人で加入する生命保険

[メリット]
・掛金の一定割合が損金算入可能
保険機能がある為、定年時の勇退以外の健康上の理由で雇用契約の継続が困難となってしまった場合に、掛け金よりも多くのお金を退職金原資として受け取れる

・原則、毎月の保険料の支払い、事故の際の保険金の支払いの他、解約時のお金の受け取り等に全てが法人を経由する
ある種、会社の簿外資産としての機能も有する。

[デメリット(?)]
・多くの場合、掛け金総額よりも保険契約自体に貯まるお金(解約返戻金)は少なくなる。

・正社員、役員にのみ掛ける事が出来る為、パートさんの加入ができない。

・加入には健康状態の診査が必要となる為、加入不可となる方の可能性も考えなくなくてはならない。

退職金を貯める上での3つのお金の考え方

・強制的に天引きされる仕組みを作る
・運転資金(生活資金)と分離させる事
・退職金は賃金の後払いとも言われています。

この後払いを「経費」で貯めていく事によって
会社側のメリット
法人税等の課税前のキャッシュアウト
・社会保険料の支払いコスト増を先送りできる
個人側のメリット
・税制上優遇された退職所得(老後資産)
・社会保険料によって目減りする給与を先送り

出来る等、福利厚生の観点以外の「お金の仕組み」として考えた際にも
会社側、従業員さん側、それぞれメリットがあるというのが私の考える本質です。退職金についての考え方は下記の記事等も参考にしてみて下さい。

今回のテーマ「2階建ての退職金制度」とは?

1階部分/公的な退職金制度

・従業員さんに直接支払われる退職金制度である
中小企業退職金共済/独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)
特定退職金共済/各地の商工会議所

例えば、これらの制度を用いて退職金を貯める際
勤続何年以上、役職は○○以上、賃金は○○以上で掛金は幾ら等
これらはある意味、契約としての退職金の意味合いが大きいです。

つまり、定量評価「数値で表せるものに対する評価」としての意味合いが大きくなってきます。

2階部分/法人で加入する生命保険

法人名義の生命保険
(契約者:会社/被保険者:従業員/受取:会社)

事故の際の保険金の支払い、そして解約時のお金の受け取り
これらは法人を経由する事になります。
そのお金の中から支払う金額は、規定に基づき会社に裁量権があります。

つまり、定性評価「数値では表せないものに対する評価」としての意味合いが大きくなってきます。

これらを掛け合わせて下記の様な「2階建ての退職金制度」を作りましょう

一般的に用いられる福利厚生目的とした生命保険

養老保険などの死亡(高度障害)時に保険金が支払われるもの
解約した時に戻ってくるお金も掛金の100%ではない

実はこの部分が社長がピンと来ない要因では?

極端な話、従業員さんが亡くなってしまう事があれば
有無言わさず雇用契約は終わる⇒福利厚生もその時点で終わり

ところが、従業員さんが
三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)や障害者手帳に該当するなど
闘病をしながら、就業の継続を希望をしている場合は
雇用契約の継続を判断しなくてはならない⇒経営判断をしなくてはならない

休業等の配慮をしながら雇用を継続する場合は
生産性の低下⇔雇用の確保という矛盾に対応しなくてはならない

雇用契約の継続が困難という経営判断の場合は
公的退職金の支給のみで果たせる福利厚生は万全か
毎月積立をしている退職金の積立開始から僅か1年の出来事だったら…

等の要因に企業として対応するには綺麗事抜きにお金が必要です。
この部分を生命保険で埋めましょうというロードマップでした。


まずは会社の退職金制度は勿論ですが、人事評価制度や、私傷病休職制度など専門家のリーガルチェックを経て、整備していきましょう。
その中で生命保険を活用した「2階建ての退職金制度」という考えいかがでしょう?

ここまで読んで頂きまして、ありがとうございました。
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