記事一覧
祈願上手 #毎週ショートショートショートnote
ある夏の日、めしやを営む熊さんは、町内の神社を参拝しておりました。
「女房が身籠りまして安産をお願いしやす。それとおいらはしがないめしやですが、生まれてくる子の為商売繁盛をお願いしやす」
その後熊さんは苦心して絵馬に願い事を書き込み、奉納をすませました。
それから必死に働いた熊さん、翌年の春、無事赤子を抱くことができました。
「祈願成就のお礼参りに行こう」
早速赤子を連れて件の神社にお礼参り
文学トリマー #毎週ショートショートnote
文学サークル野音では、新入会員の作品合評会を開催した。はじめに「文学トリマー」と名乗った新人が自作朗読を行った。
『文学トリマーの文学トリミング! その1、森鴎外「舞姫」。留学したエリートが調子こいて現地のねえちゃんを孕ませた末に日本に逃げ帰る話って、やり逃げじゃん!
文学トリマーの文学トリミング!その2、芥川龍之介「羅生門」。死体の髪を抜く老婆と、その老婆の服を剥ぐ男の話って怖っ。自分も盗人
記憶冷凍 #毎週ショートショートnote
大手町博士は、長年記憶のメカニズムについて研究を重ねてきた。そしてついに研究の成果を世に問う日がやってきた。
「このサプリAを飲めば、人は短期間で知識を自分のものにでき、学習に時間をかける必要はなくなる。次にこのサプリBを飲むと、脳内知識の優先再生が可能となる。これから人類は冷凍食品のように知識を蓄え、必要に応じ解凍し利用できる。これが「記憶冷凍」です」
「エビデンスはあるのか?」記者の質問が飛
短歌のようなもの15
長年一緒に暮らしている夫婦でも、時々越えてはいけない線を間違って踏み込んでしまうことがあります。良かれと思って言った事が伝わらないもどかしい日を過ごすこともあります。いつのまにか相手の話を聞かず、自分のことばかり話していたことに気づいて愕然とします。
今日はフリーで考えました。
【無題】
聞こえてる聞こえているよ聞いてない聞こえていても聞いていないね
君と僕は好きも嫌いもない存在「よろし
短歌のようなもの14
私はチョコレートが大好きで、特に好きなのがピーナツチョコレート。大袋の安いヤツ。
ある日これが原因で我が家がちょっとした騒動となりました。私がチョコレートを落とし、落ちた場所を見逃してしまったんです。このままだといずれアリさんがやってくるぞ、ということで家具を動かして見たり。結局その日は見つからず、次の日につれあいが発見!カーペットの上で弾んだチョコレートが、床付近に置いてあった半分口の開いた段ボ
放課後ランプ #毎週ショートショートnote
放課後、ボクはいつも理科準備室に忍び込んだ。ボクの通う中学は管理が甘く、理科準備室は放課後も空いたままになっていた。午後6時には警備員が施錠して回る。それまでの時間、ボクだけの空間になる。
ボクは隠しておいたアルコールランプを取り出し火をつける。その後はただアルコールランプの火を眺める。それは何も無かった一日を終える為の儀式。
そうして何日も放課後を過ごしていたある日、恐れていた事が起こった
トラネキサム酸笑顔 #毎週ショートショートnote
今日は学校がお休み。でもパパとママはお仕事でボクと妹はお留守番だ。妹はまだ4歳。今日はぐずってボクを困らせた。そういう時は近くのドラッグストアに連れて行くんだ。
妹は着くとすぐ化粧品コーナーにいく。いろんなビンがあって色もきれい。だからずっと見ている。妹はカタカナが少し読めるので、ポスターや説明の字を声に出して読む。面白いからボクも一緒になって読むんだ。
「プラセンタ」「ぷ ら せ ん た!」
短歌のようなもの11
春になると各局新しいドラマを始めますが、あまり食指がのびません。最近のドラマは仕掛けが多い。タイムリープを使いすぎ。伏線回収、考察動画…お手上げです。
でもですね、先日あるドラマを少しだけみていたら、いわゆるラブシーンがあまりに手垢のついた展開で愕然としました。建物を出ていく男。それを追いかけようとする女。「行っちゃダメ!」という友人。陸橋の上で言葉を交わす二人。立ち去ったと思われた男は、道路
短歌のようなもの10
我が家でもよくお世話になる宅配便。先日も大きな箱を担いで小走りで届けているドライバーの姿を見ました。最近では女性ドライバーも増えていますね。大和運輸(現ヤマト運輸)が個人の荷物を受け付け始めたのが1976年だそうです。その昔宅配便がない頃は、郵便小包か国鉄小荷物しかなかったんですね。国鉄小荷物とは、駅で頼んで指定の駅まで運んでもらい駅で受け取る、というものだったそうですが、私は利用した事がありま
もっとみる春ギター #毎週ショートショートnote
「…少年が目を覚ますと美しい森の中でした。目の前に天使が現れ、少年を森の奥へと誘います。『ボクはどこへ行くの?』少年がたずねると天使は言いました。『ここは音楽の森。君は今からギターの木に会いに行くの』天使の声に手招きされ、少年は森の奥へとすすみました。やがて雲をつくような巨木が見えてきました。よく見ると、その枝から見覚えのある形のものが沢山ぶら下がっています。再び天使の声が響きました。『これはギタ
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