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#毎週ショートショートnote
毎週ショートショートnoteの主宰たらはかに(田原にか)様、創作大賞中間選考2作品がノミネート、おめでとうございます。やはりただのかにではなかったのですね。https://note.com/tarahakani/n/n0d0bcf2814a7
https://note.com/tarahakani/n/ne6b526c866bc
人生は洗濯の連続 #毎週ショートショートnote
5歳の僕は、毎晩おねしょをして叱られていた。ある日母は僕に洗濯機の使い方を教え、そのまま家を出て帰ってこなくなった。
僕は16歳で強豪校の野球部に入った。だがレギュラー陣のユニフォームを洗濯する日々ばかり続いた。
やがて就職した僕は、洗剤のセールスマンになった。そこでは学生時代の経験が活き、トップセールスマンになれた。
僕は職場の同僚と30歳で結婚した。家庭を顧みず仕事に打ち込み、やがて妻
夜からの手紙 #毎週ショートショートnote
ある大店の若旦那。ある日遊廓に初上がりし、つい調子に乗り花魁の機嫌を損ねてつまみ出されてしまいました。不貞腐れ帰る道すがら、どこからか「おいで、おいで」と呼ぶ声がする。若旦那はそちらへと歩いて行きました。
翌朝戻った若旦那、倒れるように眠ってしまいました。番頭がその懐を確かめるとぬらぬらの手紙が一通。そこには「今宵もお待ちしております 河津太夫」とある。
やがて夕暮れ、若旦那はむっくり起き上
バンドを組む残像 #毎週ショートショートnote
14歳の夏休み、俺たちは毎日ダラダラと過ごしていた。ある日友だちのコウイチは言った。「バンドやろうぜ!」
数日後、コウイチは俺たちの溜まり場にドラムセットを持ち込んできた。ヤクザの親父さんに甘えて手に入れたのだ。俺たちが出鱈目にドラムを叩いていると、コウイチの母親がひきつった顔でやってきてコウイチを連れ帰っていった。俺たちのバンド話はそれきりになった。
9月、学校が始まってもコウイチは登校し
#毎週ショートショートnote
毎週ショートショートnoteの主宰たらはかに(田原にか)様、創作大賞中間選考2作品がノミネート、おめでとうございます。やはりただのかにではなかったのですね。https://note.com/tarahakani/n/n0d0bcf2814a7
https://note.com/tarahakani/n/ne6b526c866bc
残り物には懺悔がある #毎週ショートショートnote
秋が来ると、我が学生寮では先輩達が騒ぎ始める。芋煮会だ、さんまだ、焼き芋だ、と。そんなある日、北海道出身の田村先輩は、黙々と鶏の唐揚げを作り始めた。
やがて大量の唐揚げが出来上がり、田村先輩は寮生全員を呼び出して言った。
「食べたまえ」
唐揚げは順調に減っていったが、濃いめの味付けもあり次第に手が伸びなくなった。
それを見て田村先輩は演説を始めた。
「君らは毎日ファストフードを喰い、その工
短歌のようなもの26
先日身内が亡くなり、久しぶりの喪主。葬儀社との打ち合わせ、通夜から告別式。何年振りかで段取りにまごつき、対応する人々は親戚ばかりなのに何故か緊張する自分。何度来ても不思議な感慨に浸るのが斎苑。淡々とお骨を拾う自分に驚く。「千と千尋の神隠し」主題歌、覚和歌子の詩を思い出す。
生きている不思議
死んでいく不思議
ゼロになる身体…
故人の曾孫である二歳児が発する声が、僧侶の唱えるお経と交錯する。
ときめきビザ #毎週ショートショートnote
「おばあちゃん、ずっと眠ってるね。私たちのことわかるかな」
わかってますよ。わかってないのはあなた達。お願いがあるの。あの人を探してほしい、あの人はどんな人生を生きたのか、知りたいの…。
そうしたらある日、私の病室に見知らぬ少年が現れて
「会いたい人は昔の恋人なの?」って尋ねられた。初恋の人なの、私がそう言うと男の子は「じゃあ僕が会わせてあげる。この「ときめきビザ」を使えば、好きな時代や場所に
モンブラン失言 #毎週ショートショートnote
三国製作所は町工場から一流企業へ飛躍を遂げようとしていたが、社長の庄蔵は下町気質が抜けず、その発言は危うさを孕んでいた。
庄蔵の娘で秘書の涼子は、ある日宣言した。「社長の問題発言の度にモンブランをご馳走してもらいます。題してモンブラン失言作戦です!」
翌日から涼子の指摘が始まった。
「受付社員を『案内のおねーちゃん』と呼びましたね」
「親しみをこめてるんだよ」
「ダメッ、モンブラン代を出して
誘惑銀杏 #毎週ショートショートnote
俺は届いたばかりの桐箱を開き、ぎっしり並んだ木の実を眺めた。「誘惑銀杏」。銀杏の名産地祖母江町の名産品。これをみゆきに見せたらどんな顔をするだろう。みゆきとは、俺の幼馴染で今は居酒屋「みゆき」の女将だ。俺は偶然立ち寄った店でみゆきに再会し、すっかり惚れてしまった。それからは、様々な高級食材を店に持ち込み、みゆきの気を惹くことに躍起の日々。
今日も開店と同時に店に入り、みゆきに「誘惑銀杏」を手渡
短歌のようなもの25
映画について、記憶の糸を手繰る。小中学校では学校鑑賞会というのがあって、年に1、2回、暗幕で締め切った体育館で映画を観せてもらえた。よく覚えているのは「ボクは五歳」。吉沢京子に見惚れた「父ちゃんのポーが聴こえる」。
地元の公民館でみたのは「ダンボ」とか「ピノキオ」。初めてのディズニー体験。
夏休みの公園で行われた野外映画会。「ゴジラ 三大怪獣地球最大の決戦」でみたキングギドラの不気味なことと
ひと夏の人間離れ #毎週ショートショートnote
「目標は一か月原稿用紙1500枚。9月には長編を読ませてやるよ!」
7月の終わり、夏休みを前に、大学の文芸サークル仲間の三木は言った。「昭和の大作家は原稿用紙月産1000枚をこなした。この夏、彼らを超える!」
1500枚?とても無理だろ、俺なんか100枚も書けない。人間業じゃない。
「ひと夏の人間離れ」を宣言した三木は、これから一か月山に籠ると言って出かけていった。
そして9月となり、サークルボ
黒幕甲子園 #毎週ショートショートnote
それは夏の高校野球が佳境を迎えた8月、全国の半グレ集団幹部に、発信者不明のショートメール「黒幕甲子園招待状」が届けられた。
「特殊詐欺や強盗に手を染めてるヤツら 自分の手を汚さずに黒幕やってるヤツら 一番ヤベェ奴は誰だ」
そして具体的に、「○月○日の強盗犯 指示したのは○○クンでしょ」などと挑発し、最後はこう締め括られていた。
「誰が真の黒幕か 白黒つける甲子園 舐められたくないヤツはX X日深
短歌のようなもの24
*ヘッダーは、『ノラ猫ポチ(猫の写真だけの場所)』様の写真をお借りいたしました。
2024年8月。何日酷暑日が続くのか。この傾向は今後も続いていく事だろう。真剣にライフスタイルの変更を考えるべきかもしれない。
私の場合もういい歳だし、今の仕事を続けることに相当疑問符がつく。じっくり考えてみたい。
暑さの中体調を崩す人に加え、コロナの罹患者も出て我が職場はてんてこ舞い。自分もなんとか1日を終え
鋭利なチクワ #毎週ショートショートnote
ある所にまじめが取り柄の男がおりました。男の楽しみは週に一度ののり弁。今日もいつもののり弁を買い、食べようとふたを開けたところ、何かいつもと違う。男は弁当の面をじっと眺め、気がつきました。
「磯辺揚げが鋭利なチクワになってやがる!」男は店にとって返しますと、店主に詰め寄りました。
「なんで鋭利なチクワにしたんだ!俺は縦二つ割の磯辺揚げが大好きなんだよ!」すると店主、静かに申し開きを始めました。
非情怪談 #毎週ショートショートnote
台風による停電が長引いていた。買い置きの食料で夕食を取ろうと、家族4人暗いリビングに集まった。蒸し暑い部屋の空気の中、父親である隆はある事を思い出し、非常持ち出し袋の中を探った。
「あったあった。これこれ」隆の手には一冊のブックレットが握られていた。表紙には『非情怪談』とある。
「こういう夜はろうそくの明かりで怪談話をするといいんだ。ゾッとして暑さもしのげるぞ」
妻も子供も最初は尻込みしたが他に
見たことがないスポーツ #毎週ショートショートnote
関東テレビ「新スポーツ検討部会」は、未来の人気スポーツ番組を作ることを目指して作られた。
部会の行われる会議室は、「誰も見たことのないスポーツ」を作る使命感に包まれていた。
意欲ある若いディレクターから幾つも提案がなされたが議論は紛糾。何度も会議を重ねようやく一つの案がまとまり、重役プレゼンの日を迎えた。
「我々が提案するのは『スカイダイビングオセロ』です。黒パラシュートチームと白パラシュー