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ひと夏の人間離れ #毎週ショートショートnote

「目標は一か月原稿用紙1500枚。9月には長編を読ませてやるよ!」
7月の終わり、夏休みを前に、大学の文芸サークル仲間の三木は言った。「昭和の大作家は原稿用紙月産1000枚をこなした。この夏、彼らを超える!」
1500枚?とても無理だろ、俺なんか100枚も書けない。人間業じゃない。
「ひと夏の人間離れ」を宣言した三木は、これから一か月山に籠ると言って出かけていった。
 そして9月となり、サークルボックスに顔を出すと、ヒゲもじゃの三木がいた。三木は血走った目で、原稿用紙の厚い束を差し出し言った。「読んでくれ。俺の自信作!」
 三木に圧倒されていると、同じ文芸仲間の安田も現れた。安田はニヤニヤしながらペーパーバック3冊を差し出した。「これ、ボクのこの夏の三部作。読んでね」
 三木が叫んだ。「こんなに書けるわけない。お前、アレを使ったな?」
「そう、使いましたよ。でもプロットを考えたのは僕だから。ひと夏の人間離れ、大成功ですよ」
(410文字)

たらはかに様の企画に参加させていただきます。
相変わらず体調は最悪。いっそひと夏、この身体から離れたいぐらいです。



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