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「親」って・・・

適齢期と言われる年齢をすぎてもあまり結婚する気のなかった私。
やっと結婚したが、今度はなかなか子宝に恵まれなかった。
電車で見かけるマタニティマークをつけている人が羨ましくてうらやましくて、全くの他人なのに恨みそうになったこともあった。(ごめんなさい。。)幸せそうなふっくらしたお腹が、背中を反らせて歩く姿が、神々しかった。毎日朝電車に乗るたびに自己嫌悪とモヤモヤとイライラに包まれてた。

やっとやっと授かったが今度は流産してしまった。

人生色々あるなぁ。でも妊娠できるからだなんだな。
この流産の経験をいずれ誰かの役にたてられたらいいな。なんて考えたりしていた。

翌年、流産手術をした日と同じ日に妊娠が分かった。

「あぁ、神様っているんだな」「大事に大事にしていこう」「この子は運命の子だな」

などと思い、全くの他人を恨みそうになっていた自分を恥ずかしく思う。。自分勝手なもんだ。

それから数ヶ月は本当にかけがえのない時間だった。お腹に誰かいるというのは想像していたよりも面白くてときにしんどくて、生きているんだという実感がヒシヒシとするものだった。幸せそのものだった。

その子は何ヶ月も逆子で、いっつも頭が上にあった。なおるかな~と、重いお腹のまま逆立ちしてみたり、本に書いてあることを色々実践してみたが、横には向きを変えるけど、頑なに頭を下にすることはなかった。予定日間近になり「施術してなおしますか?」と言われたが、へそのおが首に巻き付いたりするリスクや施術しても逆子のままの可能性はあります。と言われた。


その前の月に私は大切な友人を亡くした。出産で。なんの問題もないはずだったのに、緊急帝王切開をし、産んですぐに赤ちゃんを残して逝ってしまった。未だにどうして亡くなったのかよくわからない。


流産といい、友人の死といい、人生何が起こるかわからない。

そのようなこともあって、なるべくリスクは下げたかったので、「そのままでいいです」と言って帝王切開で出産することになった。

人生初めての出産&手術は思っていたものとはだいぶ違っていた。
映画やドラマでも普通分娩だけじゃなく、帝王切開の場面とかあって欲しかった。

普通に歩いて病院に入り、荷物を部屋に置いたら手術着に着替える。そしてまた歩いて手術室に入る。「はい、このベットに全部脱いで横になってくださーい」

ぜんぶ? 全裸?

当たり前のように看護師さんたちは和やかにカチャカチャしながら促してくれるけど、その中で全裸。。

毎月股を開いて検査したりエコーを撮るのにはなれたけど締めは全裸なのか。

こどもを産むって・・すごいな。

まぁ、全裸といってももちろん上から何か毛布らしきものをかけてくれるし、胸より下は私からは見えない。「何か聴きたい音楽とかありますか?」と言われたが、こちらは初めてのことに戸惑いすぎて大丈夫です。と答えるのが精一杯だった。「大丈夫ですよ~もうすぐ赤ちゃんに会えますよ~」みたいなことを言われたが、後は言われるがまま。まな板の鯉とはまさにこのことなんだな。

麻酔をしているので、痛くはなかったが、それより初めての我が子の誕生に立ち会いたい!と強く願った、血を見るのが苦手な旦那様の方が若干心配だった。すごく顔がこわばっている。まな板の鯉よりこわばっている。

私を担当してくれたのはいつも検査してくれた担当のお医者さん。40代くらいの男の先生だった。
あとはベテランそうな看護師さんたち。

意外と和やかに始まったと思う。
クラシックを聴きながらどきどきしていると何かがお腹の上で始まっていてどんな赤ちゃんかな。。などと余裕だった。

・・スポン!っと聞こえた。確かに聞こえた。

・・・・・・

「フギャ、ふぎゃふぎゃ~」
わぁ産まれた!旦那さんは感無量な様子。

ただ、ここら辺からだんだん記憶が曖昧。

今までの余裕がぶっ飛んだ。あれ?体に痛みがあるような・・・?これ痛いよね?

ほら死ぬほど痛い!何これ?私やばいやばいやばい!!
「痛い痛い痛い~~~!!!!」

「ほ~ら産まれましたよ~かわいらしい女の子!」
本当にうれしかった!!!本当に。私赤ちゃんを産んだんだ。命なんだな。と思った。

ただ。痛みは喜びとは全く別。

「お母さん、赤ちゃんも見てるから頑張りましょうねえ」この言葉ははっきりと覚えている!
そうだ!お母さんになったんだから、頑張ろう(キラキラ)!とは断じてマジで思えなかった。ごめんなさい。

自分の赤ちゃんが私を見ていて痛みがなくなるのであればそりゃ見ていて欲しいが、そんなことは全くない。
産まれたてホヤホヤの目もあいていない赤ちゃんがお母さんを見る余裕があるもんか!
そんなことより痛い!そしてどんどん痛くなる。

え?麻酔は?

痛すぎて意識が朦朧としてきて目をつぶりそうになったら「はい、目は開けててね~」

ねえ?麻酔は?

「お父さんに、もう少しいてもらいますかぁ?」
えぇ~~~~・・・今?それ? 
私今痛いの。本当に~~~!!麻酔はーーー?麻酔はどうした!!

出産時、痛みがあるときは大好きな旦那にだって優しくできない!と聞いたことがあるので私は精一杯の優しさを振り絞って言った。

「どっち・・でも・・いいです・・」

後はお腹を元に戻すだけなので、じゃあお父さんはいったん外で待機してもらいましょうか。ということになったらしいが、もうそんなことより痛い。

どうやら子宮収縮が早めに?始まってしまったらしく超絶痛い。早くなんとかしてくれ。

「どんな痛みですか?」「生理痛みたいな痛みですか?」

は?
そんなわけないじゃん!医者でしょ!

と心の声を察してくれたのか、ベテラン看護師さんが「そんなわけないでしょ💢」とピシャリと先生に一喝してくれた。「あぁ・・それより痛いか・・・・」と先生は人のお腹を縫ってるのかとにかく作業しながら言っていた。
そのあり得ない状況がちょっと面白かった。もちろん気絶しそうなほど痛いので、笑えないが、面白かった。
あんなに死ぬほど痛い中でも面白いと思えてしまうのは我ながらすごいな。と今でも思う。

ただ、尋常じゃない痛さに私は大騒ぎしている。

後で知ったが、このときから義両親が手術室の外で待機していてくれたらしく実の母は私の騒ぎっぷりにちょっと恥ずかしかった様子。

なんとか無事に手術を終え病室へ戻るときとてもきれいな青空だった。
「あぁこの子には自然界にあるものの名前をつけたいなぁ」と思った。




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