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#86 時を歪める蝶の雫

「どっちにしても、私が学校に一緒に行くのは
ちょっと良くないんじゃない?」

「そんなことないよ。みんな自由に来るもん。」

「そうなんだ。じゃぁ、今度お邪魔してみようかな。」

Sophiaは
それを聞いて嬉しそうにニッコリと笑顔になった。


「そういえば、今までに
森の女神様の棲む場所に行った人はいるの?」

「いるよ!
真っ白の樹や蔦が絡んんでいる建物があって、
建物の中は朝も夜もずっと明るくて
女神様の長い髪には葉がたくさん付いていて
とっても美しいんだって。」

「すごく素敵な場所なんだね!
いつか見れたらいいのになぁ…」


森の女神様の話を聞いていると
私の肩に何か雫が落ちてきた。

それを見たSophiaは、
その雫の出どころを目で追って上を見た。

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「あ!やばい…!
移動した方がいいかも!」

Sophiaは急いで近くの木の下に走った。
私もそれに続いた。

振り返ると先程まで二人で屈んでいた
拓けた場所の辺りに十数匹の蝶が飛んでいた。

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「どうしたの?」

「あれ、時を歪めるの。
あの蝶が落とす雫はね、時間をおかしくするの。
雫、かかっちゃったね?」

言われてハッと空を見ると
さっきまで明るかった真昼間の空が
夕暮れの赤い空になっていた。

「雫がかかっちゃうと
その人のいる時間がおかしくなっちゃうの。
私もかかっちゃった。」

「そうなの?
Sophia、学校の時間は大丈夫?」

「うん。もう行かなきゃ!
またね、M.ちゃん!」


Sophiaは慌てて森のさらに奥へ駆けて行った。

私も扉へと急ぎ、街に戻った。

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街も夕暮れの空だった。

急いでOliviaに会いにカフェへ向かった。


広場の中心辺りまで行った時、
カフェの中からOliviaが勢いよく出てきた。

彼女は、2組ほどになった客に背を向け
外をずっと見ていたようだった。


「M.ちゃーん!
やっと来たわね!!」

「Olivia、遅くなっちゃった!」


カフェの中に入り、Oliviaの父 Gregoryに挨拶をし
Oliviaとカウンターの席に座った。

2組の客も、楽しく話し込んでいて
給仕の必要は無さそうだった。

私は妖精の棲む森へ行って
時を歪める蝶の雫にかかってしまったことを
Oliviaに話した。

「そうだったの。
今日は休日だから、お昼はずっと忙しかったわ。
少し落ち着いてからは
ずっとあなたが来るのを待ってたの。」

「ごめんね。
もう少し早く来るつもりだったんだけど。」

「それがね…
今夜は、団体さんが来るのよ。
結婚式のあとのカジュアルディナーとかって
言ってたわ。
だからパパが朝からピリピリしてて。」


Gregoryは厨房に引っ込んだままで
中で忙しなく動いている音がしていた。

「私もそろそろ準備しなきゃ…
テーブルを動かして、簡単に飾り付けて、
食事の準備…あ、お会計ね!」


1組の客が会計を済ませ、
Oliviaはそのテーブルを片付けた。

そしてカウンターの中に入り私に言った。

「M.ちゃん、もっとおしゃべりしてたいんだけど…」

「団体さんの準備しないと、だね!
Gregoryさんも忙しそうだし、頑張って!
またフクロウ送ってくれる?」

「もちろんよ!
フクロウは明日中には送るわ。
またすぐに来てね!」


私は自分の世界へ戻った。




これが時を歪める蝶の雫
かかった時のおはなし。
続きはまた次回に。


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