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なぜ3Dプリンターを使って精霊馬を作ったのか : 意図的にバズらせたツイートの仮説と背景

2019年8月中旬、令和になって初のお盆にこんなツイートをしました。

日本のお盆の文化として、『精霊馬(しょうりょううま)』というものがあります。地域によって微妙に違いはあるようですが基本的には

キュウリとナスを使って作る、馬と牛型の人形のこと。割り箸や爪楊枝を足代わりに刺す。お盆にご先祖様が早く帰ってこられるように、こっちに来るときは馬に乗って。あっちに帰るときはお土産をいっぱい持ってゆっくり帰られるよう牛に乗る。

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諸説あるのでこれは僕の解釈ですが、だいたいこんな感じの文化です。詳しく知りたい人は調べてみてください。作った人形を川に流したり、沖縄はサトウキビをお供えするとか、地域によって違いがあって面白いです。

先程紹介したツイートは、この精霊馬の文化をアップデート(?)したものです。そこそこバズってネット記事にまとめられたり、日テレ『スッキリ』の2019/8/16の放送冒頭でちょびっと取り上げられたりしました。

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このツイートは端的に言えば、バズるように仕向けたものです。1000RTくらいはいくと思ってツイートしましたが、予想以上に反響があって驚きました。

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前置きが長くなりましたが、今回はこのツイートに関して、僕が立てた仮説や背景に関して時系列順で話していきたいと思います。

再現性はたぶん無い話ですが、ツイートをバズらせる方法を知りたい企業の人とかに役立つかもしれません。

ノウハウ記事とかではなく、一個人がバズらせる方法を考えて仮説検証したらテレビにまで取り上げられたという事例として、参考程度に読んでくださると嬉しいです。

3Dプリンターを使ってみんなを楽しませたい

僕はこの作品以外にも、3Dプリンターを使ってプリンを作ったりしていました。その意図に関してのnoteを読んだことある人はわかるかもしれませんが、僕は3Dプリンターが大好きなのでその魅力や凄さを伝えられるような作品を作りたい、という思いがあります。

なのでまず前提として覚えておいて欲しいのがこのスタンスです。Twitterでバズらせることは目的ではなく、あくまで手段です。

数字ばっかり追いだすと趣旨がブレたり躓きやすいので、まずは大義を掲げましょう。数字はあとからついてくる。

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思いついたキッカケ

この精霊馬の足を3Dプリンターで作るアイデアを思いついたキッカケは、映画『天気の子』です。2019/7/19に新海誠監督作の『天気の子』が公開されてすぐ観に行きました。精霊馬の文化は知識としては知っていたのですが、映画内で精霊馬が出てくるシーンがあり「そういやそんな文化あったなー」と思いました。

映画を見た数日後に、3Dプリンターで次は何を作ろう、季節や時事ネタ取り込んでみたいなーとアイデア出しをしているときに、ふと映画のことを思い出しました。そこから精霊馬の文化について調べているうちに、

精霊馬の足を3Dプリンターでリアルに作れば面白いのでは?

と思いつきました。

まさかのアイデアかぶり

このアイデアを思いついてから、使えそうな3Dデータをthingiverseという、3Dプリンター用の3Dデータをフリーでダウンロードできるサイトで探しました。良さげなやつを見つけて、そのデータを精霊馬用にカスタマイズ、3Dプリントして来たるお盆に向けて準備を整えていました。

新しいアイデアを思いついたときは、まず既にやられてないかリサーチするのが当たり前ですが、この時僕はやっていませんでした。

理由としては、こんな突飛なアイデア誰もやらないだろうという驕りと、自分のアイデアが既にやられていないかリサーチする行為があまり好きじゃない(クリエイターならわかると思います。同じ事例がありませんように、と祈るような気持ちで検索するあの感じ)から敬遠していました。

学校で作業をしているときに、3Dプリントした馬・牛の足を見た友人が、「それどっかで見たことある気がする」と言うので、まさかと思って検索しました。すると、

あった。


ちょうど一年前にやられてた。


がっかりしました。

考えていたことと丸かぶりで、しかも結構バズってるし。

でもある意味、自分のアイデア・仮説は間違ってなかったんだという気持ちにもなりました。同じことをやっても仕方ないので、このアイデアはボツにしようとしたとき、ふと疑問に思いました。なんで精霊馬はキュウリとナスなんだろう?と。

前提を疑う

なんで精霊馬はキュウリとナスなのか、結論から言うと僕が求めていたような答えは得られませんでした。ネットで検索して出た理由は、

キュウリとナスが夏野菜だから。

これだけです。そんなまさか、これだけのはずがないと思って調べ続けましたが、どうやら本当らしい(他に理由あれば教えて下さい)。

夏に多くとれて、一般人でも入手しやすいことから精霊馬に使われだしたそうですが、ビニールハウスとかある現代において最早そんな理由は関係ないだろうと思いました。

だったらこの文化をぶち壊してやろう、今風にアップデートしようと考え、ナスとキュウリ以外で精霊馬を作ればウケるのではという仮説がでました。

このような、そもそもの前提を疑う方法は新しいアイデアを出す上で便利です。なぜこれはこんなカタチなのか、こんな仕組みなのか。前提を疑うことで、今まであり得なかったモノが生まれる可能性があります。ラテラルシンキングという発想法なので気になる人は調べてみてください。

スーパーでモチーフ探し

ナスとキュウリ以外で精霊馬を作るという方向性が決まったので、次は何を精霊馬にするか考えました。頭の中でいろいろ想像したのですが、モノを見ながら考えたほうがいいと思いスーパーへ向かいました。

余談ですが、この精霊馬のためにいろいろな食材をカゴに放り込んでいたら学校の先輩に遭遇しました。カゴの中身を見て「何作るの?」と聞かれましたが、このアイデアについてその場で解説する気力もなく「夏野菜カレーとかですかね…」とはぐらかしてしまいました。先輩ごめんなさい。

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馬と牛を作るので、モチーフを選ぶ基準としてあったのが、なんとなく馬・牛っぽい要素があるというかなりざっくりとした基準で選びました。一応意図を説明していきます。

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「果物」というカテゴリーの中で、馬と牛を表現したくバナナとリンゴを選びました。バナナはバナナボートからの連想で、乗りやすくて早そうだから。リンゴは牛の太くズッシリしたイメージに合うため選びました。目を引く色味という点でも良かったです。

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パプリカはもうなんというか直感です笑 ヘタの部分が力強くてカッコよく、同じ食材でも成熟度で色が変わる特徴が面白いと思って選びました。本質は同じなのに、別物のように見えるというか。やたら筋肉質な感じが気に入っています。

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人参は馬の好物だから。ニンニクは、牛→牛肉→焼き肉→おろしニンニク、という謎の連想から。人参はなんだかモノアイの生き物に見えてきて怖い。

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これはもうただひたすら、RedBull(赤い牛)で牛をやりたかっただけです。対となる馬には、長い缶のモンスターが意外としっくり来ました。「ご先祖さまに翼が授かっちゃう」「爆速で帰ってきそう」というコメントが多かったです。

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ちくわの牛。ちくわの柄が、牛の体の模様と似ていると思って試すと想像以上にハマった。長さ調節のために、おしり部分を少しずつ食べながら撮影しました。

Twitterにあったベストな見せ方

という風に、それぞれいろんなことを考えながら選んだモチーフでした。

良い作品があっても、それをわかりやすく伝えなければ意味がありません。なのでこの作品はTwitterでの見せ方もできる限りこだわりました。

文字情報より視覚情報のほうが伝達速度が早いので、1ツイートの文章量はギリギリまで削って、逆に視覚情報(写真)は最大限詰め込みました。

最初考えていた文章は、140字ギリギリかピッタリで説明を書いていましたが、まぁ読まれないだろうと。Twitterをやっていればわかると思いますが、文章ビッシリのツイートのスルー率は結構高いと思います。主観ですが。

必要最低限の文章量にして、「ネオお盆」というパワーワードに全てを詰め込みました。あとはハッシュタグを使って内容を端的にあらわし、RTいいね以外の流入源も増やす。この辺は、先程紹介した大村さんのツイートを踏襲させていただきました。

画像に関しては1ツイートの情報量を上げるために馬と牛の並ぶ構図にしました。既存の文化をぶっ壊して新しい価値観・視点を生むためにも、1ツイートでなるべく多くのバリエーションを見せる必要があったので。

画像をツイートした際に懸念されるのが、TL上では自動でトリミングされたプレビューが表示されることです。ツイートを開かなくても、パッと見でコンテンツを視認できるように画像の比率や撮影範囲も考慮しました。(参考:【Twitter】プレビュー画像をきれいに表示する最適な方法を探る

上記リンクの記事を参考に、プレビューで全ての画像を同等に見やすいように画像4枚でツイートしました。

あとは投稿時間を少し気にしたくらいです。これは今までの経験による肌感ですが、週末の夜(土・19~21時)くらいがTwitterはユーザーが多く、大半の人は休みでメンタル状態がいいので、リアクションも多く得られやすいと考えました(今回ツイートした日は平日ですがお盆なので例外です)。

上記の見せ方を配慮すればバズる、ということではなく、あくまでノイズを減らしてコンテンツに集中しやすい動線を作ることが大事だという話です。

整っていたシチュエーション

実は、今回このツイートがバズった理由として、「運(タイミング)が良かった」という点が多々あります。だからきっと再現性も無いんです。でもこのタイミングの流れを見極める力を身につけられると、きっと他のことにも役立つだろうなと思いました。具体的にどう運が良かったかというと、

・ここ数年、Twitterでは精霊馬の文化を大喜利的に扱っていた

ここ数年Twitterでは、お盆になるとキュウリとナスを使ってバイクや戦車など、馬・牛以外のものを作る大喜利的な流れがありました。そんな流れがある中、僕はキュウリとナス以外のもので馬・牛を作るという、逆張り的な行為をして目を引くことができました。

・令和初のお盆

元号が変わって初めてのお盆。新しい時代に新しい文化の形を提案できたのもタイミングがよかったです。ネット記事ではこのツイートを「令和初のネオお盆」と簡潔にキャッチーにまとめてくださいました。


他にも要因はいろいろ考えられますが、土壌が既に構築されていて受け入れられやすいという点で、ある程度はバズると予想していました。未来を予測して点と点を結ぶことはできませんが、これまでの点を結んで大きな流れにした感じです(ジョブズ風)。

終わりに

長々と書きましたが結局なにが言いたいのかというと、こんなネタツイみたいなものでも、いろいろ考えてやっていたことを知ってもらいたかったのです。

近年コンテンツの消費速度がえげつなく早く、どんなに面白いモノでも数日経てば忘れ去られてしまうなんてことがザラにあります。

今回のこのような一過性のコンテンツでも、背景を読むことで「こんなのあったな」「そんな意図があったのか」と思ってもらえると嬉しいです。

以上、コンテンツの消費期限を伸ばしたいという延命治療でした。

良いモノ作りたい。

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ラーメンのトッピング代にします。遠隔で僕のラーメンを豪華にしてください!!