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始まらない夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

数年前、離婚も落ち着いて新たな恋を始めたいと思った私は、婚活マッチングアプリを試していました。30代中盤、子どもあり、バツありの私は、同じような方がいそうなマッチングアプリを調べて、インストールしたのです。

そこで年上で、バツありの男性と出会います。メッセージのやりとりもスムーズで、お互いに好感を持った私たちは自宅沿線の駅で会うことになりました。

会話もスムーズで、何時間でも話せる位、会話のテンポの合う人だなと思いました。それから、私たちは、何回も日曜日のランチを楽しむ仲になりました。

ただ、婚活の予定でしたが、私たちが恋に発展する様子はありません。日曜日のランチという健全なシュチュエーション。趣味の漫画や音楽や仕事の話を延々と続ける私たち。完全にその空気に乗り遅れたものだと思いました。

しかし、ある夜、私の妹が私の家に泊まることになり、子どもの世話を任せて、久々に夜外出する事ができました。私は、迷わず彼に連絡を取りました。彼は、美味しいディナーと雰囲気を楽しめるお店を予約してくれて、一緒にお酒を飲みました。いつもの日曜日のランチとは違う雰囲気のお酒です。

私は少し期待していました。彼がこの手をとってくれるかも。何か素敵な言葉を贈ってくれるかも。今夜は、ランチより長い時間一緒にいられるかも…。食事が終わり、店をでた彼は、「帰ろう」いつもの日曜日と同じ口調で告げました。

私はまだ帰りたくありませんでした。彼が手をとってくれなくても、久々の夜の街を楽しみたいと思っていました。でも、それを伝える事ができませんでした。

「帰ろう」

その言葉が世界の全てのように感じられて、全ての言葉を飲み込んで、私は最寄りの駅までひとりで電車に乗りました。最寄り駅の閉店間際のカフェバーで、少しのお酒を飲んで、私はひとり歩いて帰路につきました。

その夜、毎月、遠距離恋愛のように重ねたこのやりとりと逢瀬は、全て恋ではなく友情や親愛の情だということを悟ったのです。私たちは、この後何度逢瀬を重ねても恋が始まらないのだとよく分かったのです。彼のことは好きだけど、私は誰かに恋焦がれたいのです。

その次の日曜日のランチで、私たちの「婚活のための逢瀬」は終わりました。気づけば半年も経っていました。寒い寒い冬の話をしていたのに、遠くに萎れそうになる向日葵を確認できるほど暑い夏の終わりでした。

あの夜がなければ、今も私は、日曜日のランチを楽しんでいたのでしょうか?でも、きっと彼は、恋の相手と出会った時、直ぐに行動を起こせる人だと感じていました。今、彼が素敵な恋に落ちていますように。おやすみなさい。

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