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社会科学の見取り図

このnoteでは、ニュースや素朴な疑問を社会科学の方法論で考えます。ニュースが言っていることの適否や、「このニュースは、このような見方もできる」ということを示します。少なくとも、その方向を目指しています。

そこで今回は、何を差し置いてもまずは、「そもそも、社会科学の考え方とは、具体的にはどういうものか」。これをお話したいと思います。

本論に入る前に2つ、余談をさせてください。「社会科学は、愉しい」、「難しいことばをおぼえることにこだわらなくていい」の2つです。その後に「社会科学と呼べるのは、基本的には4つの学問だけ」というタイトルがあります。それ以降が、本題です。

それでは、始めます。

社会科学は、愉しい

社会科学という、こんなにも『愉しい学問』(ニーチェ)があるのだから、ぜひ多くの人に、愉しんでもらいたいと思います。自分にあった、好きな学問を、チョイスしてください

難しいことばを覚えることにこだわらなくていい

専門的に学ぶ場合には、「どうしても避けてとおることのできない用語」を覚えておかないと、「その用語を知らない人は、その世界ではモグリ」と言われます。ですからその場合は、専門用語を覚える必要があります。けれども、社会科学を楽しむ場合は、日常用語で事足りると思います。事実、私のこれまでの記事は、取り立てて専門的な用語は使っておらず、ほとんどは、ふつうの(日本語の)国語辞典に載っているものばかりです。

社会科学と呼べるのは、基本的には4つの学問だけ

さて、本論に入ります。

生まれて来た順番にならべると、政治学、経済学、社会学、心理学です。この4つの学問が、社会科学(ソシアル・サイエンス)です。

「社会科学(ソシアル・サイエンス)は、この4つだ」と言い切ったのは、副島隆彦氏です。副島氏の師匠である小室直樹氏は、この4つに加えて、文化人類学を社会科学に加えています。

社会科学は、人を結びつける鎖について考える学問

社会科学を一言で定義すると、こうなります。

政治学は、タテの繋がり(支配-被支配)を考える

紙に人間を、上と下に書きます。その間を鎖で結びます。その鎖について考えるのが、政治学です。中心概念は、権力・支配・被支配・革命です。

経済学は、ヨコの繋がり(財の交換)を考える

紙に人間を、横に並べて書きます。その間を鎖で結びます。その鎖について考えるのが、経済学です。中心概念は、商品・お金・交換です。

心理学は、心と心の繋がり方を考える

自分を中央に置きます。そして、1層目として、周りに多数の人間を描きます。1層目の人たちは、家族を表します。次に2層目として、周りに多数の描きます。2層目の人たちは、家族の外に広がっている、社会にいる人たちです。それぞれの層の、各人たちとの間に、鎖を描きます。その鎖を考えるが、心理学です。心理学の場合、鎖が、垂直方向にも、水平方向にも、斜め上方にも、斜め下方にも、伸びます。中心概念は、感情・発達・行動です。

社会学は、社会生活を可能ならしめる要件を考える

今まで描いた来た人間の絵を、「ぐるっ」を、大きな円・丸で、囲ってください。そして、その円を、「土俵」だとみなしてください。土俵の上に、多数の人間がいる様子を、想像してください。その「土俵そのもの」が、社会学の研究対象です。政治を成り立たせている前提、経済を成り立たせている前提、私たちの心が他の誰かと繋がることの前提。これらの前提について考えるのが、社会学です。中心概念は、共同体・繋がり・相互行為です。

社会学も、人と人を結ぶ鎖を考えることがある

政治学、経済学、心理学では扱えない鎖について考えることは、社会学の特権です。ここに、社会学特有の楽しさがあると思います。たとえば、「社会ネットワーク理論」などは、人間にとって鎖を見出しています。それに対して-有名すぎるので引用するのは気が引けますが-デュルケームの『自殺論』は、たとえ金持ちであっても、社会との紐帯が切れたときに人は自殺することを明らかにしました。鎖が切れたら人は死ぬという、ネガティヴな事実を発見しました。

社会的紐帯が社会科学のキーワード

デュルケムが生み出した(発見した)このタームなくして、社会と世界を考えることはできません。社会的紐帯という概念は、社会科学を考える上で欠かすことができないものです。ざっくりと言い切ってしまうと、今まで述べてきた「鎖」は、社会における、社会的紐帯の様々な在り方です。

権力が人を結びつける、おカネが人を結びつける、心が人を結びつける、ということです。

まとめると

政治学は、「支配-被支配」という上下関係の鎖について考えます。経済学は、「財-お金:その交換」という水平方向の鎖について考えます。それ以外の心理学と社会学は、それ以外の鎖について考えます。

大学とは「大きく学ぶ場所」である

このnoteは、学部学生の皆様に役立つように、書こうと思っています。大学は「大きく学ぶ」ところです。大きく学ぶ時間は、大学時代を除いて、なかなか得られるものではありません。ぜひ、社会科学を大きくそして愉しく、学んでいただきたいと思います。

親愛なるあなた様へ あなた様のサポートを、ぜひ、お願い申し上げます。「スキ」や「サポート」は、大学院での研究の励みになります。研究成果は、論文や実務を通して、広く社会に還元したく存じます。「スキ」そしてサポートのほど、よろしくお願い申し上げます。三國雄峰 拝。