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【ポケモン剣盾】「ポケジョブ」で学ぶシェアリングエコノミー

ポケモン最新作「ソード・シールド」には「ポケジョブ」という機能がある。これは文字通り、ポケモンにジョブをこなしてもらうというものだ。ボックス内で眠らせているポケモンたちをガラル地方の地場企業に労働力として提供することで、見返りに経験値が稼げる。さらにはアイテムが貰えたりすることもある。

これはいわゆるシェアリングエコノミーの一種なのではないか、というのが今回の話だ。この記事では現実世界でますます拡大しつつあるこのサービスを、ポケジョブを通じて学んでみたい。

シェアリングエコノミーとは

そもそもシェアリングエコノミーとは何か?

シェアリング・エコノミーとは、2000年台後半以降、スマホの普及と同時に急速に発展した、モノやサービスを共有したり融通し合ったりする仕組みである。

筆者個人としては、個人や法人が所有する資産や労働力などを、それを必要とする人や企業とマッチングし、双方に win-win を実現するサービスの総称...と理解している。

シェアリングエコノミーで有名なサービスといえば、ユーザーとドライバーをマッチングさせるライドシェアサービスの Uber や、旅行客と宿泊先を提供する家主をつなぐ P2P宿泊サービスの Airbnb などだろう。その他にも、グーグルやアリババ、ソフトバンク、楽天なども注目する次世代型ビジネス戦略だ。

上記のサービスは、いずれも余った時間や労働力を提供するユーザーと、そのサービスを享受するユーザーのマッチングがサービスの根幹となる。今回扱うポケジョブも、トレーナーの持つポケモンとジョブを発注した企業とのマッチングを行うという点が共通している。次節では具体的なポケジョブの内容を見てみよう。

余談だが、大手コンサルティングファームである PwC は、シェアリングエコノミーの主要業界は以下の 5 つとしている(2014年時点)。元となるスライドはここ

・P2P金融、いわゆるクラウドファンディング
・オンライン人材派遣
・P2P宿泊
・カーシェアリング
・音楽・動画ストリーミング

ポケジョブの内容

では実際にポケジョブの内容を見てみよう。ポケモンセンターの「ロトミ」から、ガラル地方の各企業が発注したジョブの内容を確認できるようになっている。

画像1

画像2

上記画像のように、ガラル地方の各企業が発注したジョブの一覧を確認できる。そして募集内容にマッチするようなポケモンをボックス内から選び、派遣することができる。

ジョブ終了後は評価が発表され、ここで高評価を得ることやジム戦を突破することで、受注できるジョブが増加するようになっている。つまり一種のユーザー評価システムまで備えられており、この点も実際のシェアリングのサービスに近い。筆者個人としてはクラウドワークスによく似ている気がする。

クラウドワークスでは、企業側が発注した案件を各ユーザーがスキルに応じて受注する仕組みになっている。また、過去の受注実績による評価により受注可能な案件が増えていくなど、共通点が多い。

ユーザーが企業にポケモンを提供することで対価を得るポケジョブは、まさにシェアリングエコノミーの一種ではないだろうか。

なぜガラル地方にシェアリングの流れが生まれたのか

つづいて、ガラル地方にこのようなサービスが発生した原因をそれっぽく考察してみる。

そもそも現実世界でシェアリングエコノミーの追い風となった原因は何だろうか?参考文献を元にまとめると、以下の 4 点に集約されるようだ。

・世界的な都市部への人口集中により、住宅費や駐車場代が高くなった。そこで、自分が使用しない時間は貸し出すことで経費削減に繋げる人が増加した。
・環境問題と資源の有効活用の意識が高まった。
・アメリカではオバマケアにより、フリーランスという働き方が増加した。
・2008 年の世界金融危機により、失職・収入減に苦しむ人が増加。自分のモノを貸し出したり、節約のためにレンタルで済ませるようになった。

上記の理由を元に、ガラル地方の場合に当てはめて考えてみると、以下の 3 点の理由が挙げられる。

①人口分布が都市部に集中しているから

中規模以上の都市では、人口が少ない町のように放し飼いにする訳にも行かないポケモンたちが大量にボックス内に余っており、有効活用したいと考える人が多いのだろう。まぁ人口が都市に密集しているのはポケモン世界共通だけれど。

②自営業・フリーランスに近い業態の人が多いから

ガラル地方をはじめポケモン世界は、人口の割に明らかに企業が少ないように見える。また、ガラル地方では、他の地方ではほぼ見られなかった飲食店や美容院、レコードショップや屋台などが散見される。

したがって、多くの人々は自営業やフリーランスに近い業種の職業で生計を立てていると考えられる。もちろん、トレーナーは言わずもがなだ。安定した収入が得られる層は少なく、数少ない資産であるポケモンを活用したいと考える人が多いのだろう。

③経済不安のリスクが大きいから

ガラル地方では地方全体のエネルギー産業がナックルシティ一箇所に集中しているという。エネルギー供給源の分散化が進んでいないのであれば、天変地異やポケモンの暴走などで急に供給が絶たれるかもしれない。

つまり、深刻な経済不安が生じるリスクが大きいと言えるだろう。こういった地方であれば、不測の事態に備えて遊休資産を活用したいと考える人が多くても不思議ではない。

おわりに:ポケモン世界の未来

制作側が意図したかどうかは不明だが、現実世界の傾向がポケモン世界に反映されているとしたらかなり面白い。主人公が使用している端末もスマホに似ているし(少なくともルビー・サファイアの頃とは別物)、次回作あたりではウェアラブルデバイスになっているかもしれない。

今後の展望として、Amazon を模した EC サービスの登場が望まれる。「きずぐすり」やモンスターボール類などの消耗品のオンライン注文&配送サービスがあったら、トレーナーたちは喜ぶだろう(筆者も喜ぶ)。

現実世界ではドローンによる即時配達が可能になるか安全面の問題など含めて注目されている。だがポケモン世界では適当なひこうタイプのポケモンを用意すれば、すでにサービス提供は十分可能だろう。あとはフレンドリィショップの企業努力に期待するしかない。

アニメ作品などでは近未来感のあったポケモン世界だが、ゲーム内では現実世界の進歩が少しずつ取り入れられているのかもしれない。今後の動向にも注目したい。

参考文献

宮崎康二「シェアリング・エコノミー--Uber、Airbnbが変えた世界」日本経済新聞出版社

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