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【短編A】カーテンに絡まる朝が来る  #清世さんに描いてもらいました!

【企画】誰でもない誰かの話

#清世 @会いに行く画家さん

清世@会いに行く画家さんが
参加してくださったのは

【企画】広がれ世界 

短編Aをイメージして描いてくださいました。
この絵を見ていると、男を救いたくなってくる。
自分で書いた物語なのに。

初めて、物語に絵をつけてもらいましたが、
この一枚を見た時には、若干震えました。
ありがとうございました。

清世@会いに行く画家さんの近日開催イベント

【短編A】カーテンに絡まる朝が来る 
…その夢の話…

「ゆきは嘘つきだね」
聞き覚えのあるその声に瞼を開いた。
台風のせいで雨が強く降っている。

窓に屋根にその音は響く。
見覚えのある部屋。
白い壁にアナログの時計。
俺の部屋…。

長く伸びた髪、色白の頬。
ずっと会いたかった人。
「さな…」
嘘つきってどういうことだろう。

「本当にもう誰とも付き合わないの?」
俺の前に座る。
俺はベッドの前でいつの間にか
寝ていたみたいだ。
「さなと付き合ってるけど。」
さなが顔を近づけてくる。
もうすぐその唇が近づきそうなのに。
「それは昔だよ。
ゆきの横にいたあの人は誰?」
顔が離れていってしまった。
「誰?」
「タバコとお酒…香水で臭い女」
「あ、トモコ。」
俺はしまったと思った。
さなの顔が膨れた。

雨の音に混じって風の音も強くなる。

「誰と付き合ってもいいけど、あの人は嫌。」
立ち上がって、窓を開けた。
「どこに行くの?」
「帰るの。バイバイ」
窓の外、ベランダの下、洪水が起きていて濁流。
「待って、さな。帰っちゃダメだ。危ない。」

そう、こうやって止めていたら、
さなは死ななかった。
俺が止めなかったから
さなは死んだ。

鳥の声がする。
瞼が開いて、女の顔が見えた。 

俺はさなの夢を見ていた。

女は俺の方を見て寝ている。
なんで俺の方を見ているんだろう。
その顔をしばらく見ていた。
さなとは顔が全然違う。
美人だけどこの女は、
俺の体にしか興味がない。
俺とする行為だけが
この女が俺に会う目的だ。

女が目を開ける。
「何?私を見てるなんて珍しい」
目を逸らした。
胸に顔を寄せられた。
「帰るところあるの?君?」
「家はある」
「そうじゃない。
ちゃんと心を許せる人いないの?」
いない。
「関係ない、お前には」
俺の服に手をかけて、脱がそうとする。
俺は断らない。
コイツももしかしたら寂しくて
なんでも受け入れる俺を
見つけたのかもしれないから。
「ねえ、君は私といるのは楽しいの?」
首筋に吸い付きながら訊いてくる。
欲求のままそうしているのか、
寂しさからそうするのか。
「…俺は、お前が好きじゃない。」
「知ってる」
「ただ、寂しいだけだ」
「やっぱりそうなんだ。」
「好きだった人が死んだ」
この女にこんな話をしたところで何になる?
俺は、この一言を後悔した。

体を洗うたびに
排水溝に吸い込まれていく汚れ。
俺は、それでも昔の俺には戻れない。
好きな人がいて
その人に素直で幸せだった。

シャワーを浴びるたびに
逆に汚れていく俺の中身を
誰かに変えて欲しい。

空き缶とタバコの吸い殻に
ため息混じりで服を着る女。

「君は寂しいかもしれないけど
私はただ、楽しみたいだけだから。」
そんなこと、分かってる。
「愛も恋も欲しかったら
まともな女見つけなよ。」
財布からお金を渡された。
「そういうのめんどくさいんだよね」

現実離れした光が部屋に差し込んだ気がした。
カーテンに差す一筋の光ではない。
細くて白くて何本も蜘蛛の糸のように。

俺を救うために
さなが垂らした糸なのだろうか。

もう会わないとは口にもしないけど
二度と会うことはないと思う。


雨が降り出す。
いっそ、ずぶ濡れになればいい。
遠い空、雲間から光が刺す。
さながくれた光の糸を手に取って街を歩いた。

#短編小説 #オリジナル小説 #小説
#広がれ世界 #誰でもない誰かの話
#清世さん #みんなで遊ぼう

清世さん、ありがとうございました。

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