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鑑賞ログ「逆転のトライアングル」

230822

「ザリガニのなくところ」に出てた、ハリス・ディキンソンが出演。そしてどうやら逆転するらしい。あと、パルムドール作品というのもポイント高いな。ということ鑑賞決定。
イメージとしてタイタニックのハイソな人々が、生き残って労働階級の誰かがのしあがる話なんだろうなと。

男性モデルのカールは、人気女性モデルで人気インスタグラマーでもあるヤヤと豪華クルーズの旅へ。船上には引きこもりの船長や、ロシアの大富豪、武器商人夫婦など曲者だらけ。
船のクルーは、サービス長のポーラ(ビッキ・ベルリン)はじめサービススタッフはモデルのようなビジュアル、清掃係はアジア系の移民的ビジュアル。
格差社会がそのまま移植されたような船だ。
その船が座礁する。
孤島に打ち上げられて生き残ったのはカールとヤヤのカップルとロシアの富豪、ポーラ、清掃係のアビゲイルなど少しだけ。
果たして、彼らの行く末は…という話。

人の存在価値をブラックコメディという衣をまとって問う作品。
冒頭のモデルオーディションのところからいい感じだ。
バレンシアガは高慢な感じで、H&Mはフレンドリーな感じっていう件があって、ちょっと笑っちゃった。確かにハイブランドのビジュアルって笑ってないよね。

ちなみに、原題は<Triangle of Sadness>=悲しみの三角形。これは眉間の別称。そこにシワを入れたり入れなかったりしてモデルは表情を作るという。

作品全体として居心地の悪さがずっと続く感じ。観てはいけないものををずーっと観ている感じ。船が座礁するまではずーっと虫が飛んでいる音もするし。

男性モデルとカールと人気女性モデルのヤヤとの関係は、恋人というよりも、ビジネスパートナーに近い、と売れっ子モデルのヤヤから宣告したのに、いざカールが若く美しい男という存在価値を利用する状況になると、その輝きは崩れ落ちてしまう。
売れっ子女性モデルとして彼よりもずっと多くのものを享受してきたのに。
ヤヤのキャラクターの中に、無垢さを感じさせるのが絶妙。よく、持てるものは純粋さを持っている、富めるものほど純粋、みたいなことが言われるけれど、そんなものを体現している存在なんだな。
精神的には不安定だけれど、存在的には安定感があると言うか。それに対比されるのが、船の上でのトイレの清掃係から一転、漂着した島でリーダーになるアビゲイル。
自分の存在価値の終わりが見えた時、人の本質が見えてくる。

一つの作品の中で、感情の振り幅が大きい。エンタメ的であり、社会批判的であり、お下劣であり、深く考察させられる。(ちなみに、途中で嘔吐シーンが続くのはうげげだった…)
多様性の正体って何?そんなことがモヤモヤしながらも、最後がなぜか腑に落ちるというか、納得できるというか。
そういうところがパルムドールということか?
今回は分かりやすい側の作品が選ばれたのね。

っていうか、調べたら監督のリューベン・オストルンドって「フレンチアルプスで起きたこと」の人なのか!それはそれは…前作の「ザ・スクエア 思いやりの聖域」も観ないといけないな。


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