鑑賞ログ「クライ・マッチョ」

220116@グランドシネマサンシャイン池袋

イーストウッド御大の新作。もう92歳だってよ。監督して、主演して、壮大なる自主映画。幸せだよなぁ。ポスターのビジュアルはちょっと意外性がなかった。もうちょっと何かあってもいいような気がする。ま、海外ビジュアルをそのまま踏襲したんだろうけど。

舞台は1970年代のテキサス。元ロデオスターだったマイクは、数日前に悪態をついて自分を解雇した牧場主から「離婚後に元妻と一緒にメキシコにいる自分の息子のラファロを連れ戻して欲しい」と依頼を受ける。自分よりもずっと年下のその男に脅すような形で強引に話をまとめられ、渋々マイクはメキシコに向かう。
向かった先のメキシコでマイクは、素行が悪くて手に負えないと母親に見放されたラファロと出会い、ラファロの相棒であるマッチョという名前の闘鶏とともに、テキサスへ帰ろうとする。
しかし、ラファロは生意気だし、母親の手下のチンピラはラファロを奪還しようとするし、前途多難。果たして彼らは無事帰ることができるのか、という話。

「クライ・マッチョ」って「マッチョ、泣け」でしょ?
情緒的なエモい作品かなと思っていたのだが、想像以上にドライな作品だった。テキサスの砂漠を舞台にした、少年と老人のロードムービー。
前作の『リチャード・ジョエル』はサスペンスよりで、記憶の限りだと青い映像のイメージがあるけれど、今回は全体的には黄色い感じ。

マイクの年齢の設定が何歳なのかイマイチはっきりしないけれど、80歳は越えていそう。大目に見ても、イーストウッドの背はまっすぐじゃないし、足は曲がっているし。でも体は入れ物に過ぎず、魂は年を取らないというのを体現しているとも言えそう。ま、馬に乗るシーンは、思わず「ヲイヲイ、正気か!?」と思っちゃったけど。そして、恋愛的にはいわゆる現役なのかとw。画的にもマイクが紳士で良かったと思った恋愛絡みのシーン。

あと、メキシコからテキサスに移動する中で、やっぱりアメリカ的なものとメキシコ的なものは違って、英語が通じたり通じなかったり、マイクが来ていたデニムのシャツは目立つからメキシコ的なセーターに着替えたりとか、そういう文化の違い的なところも観てて楽しかったなぁ。うっかり犯罪をしていることには突っ込みたかったけど。まあ寓話ということかな。
劇中運転席と助手席が独立したシートではなく、ベンチ式のものになっている車(一つはフォードだったと思う)に乗っていたけれど、ちょっとあの車欲しいと思っちゃったなあ。あんまり見たことない形な気がするけど、日本でも走っていたのかしら。あとメキシカンはアメリカ人のことをグリンゴ(gringo)と言うのを学んだ。

車が出てきて、馬が出てきて、男子憧れの職業はカウボーイで、ゴージャスな女の人が出てくる。なんだか男の子が好きなものを詰め込んだ匂いもするな。一方で、ちょっとした多様性も描いて、人間のダークな部分も描いて、ロードムービーならではの出会いと別れを描く。それは、テキサスに向かう彼らが経験するものだし、彼ら二人もまたそういう関係なのだ。
旅の相棒になる二人は、孫とおじいちゃんの年齢差。それを軽々と超える二人のやり取りもいい。ウィットに富んでるマイクがかっこいいんだよなー。
え、もしかしてこれって年齢差ブロマンスものだったりして…。観客を泣かせにかかる作品ではないけれど、心地のいい作品だった。


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