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Q太郎
2022年3月14日 08:27
一ノ瀬あかりが手紙で示していた住所までの時間は、電車で約一時間掛かった。頭の中で、あいつが暗い、山の奥へと消えていく姿が頭から離れない。荷物は何も持たず、背負っているものをすべて脱ぎ捨てて。まるで舞うように。そのイメージを否定するように首を横に振る。電車に乗っているこの時間が、煩わしかった。ようやく最寄り駅に着き、携帯のマップ案内で山のスタート地点まで来た。「おいおい、ここを
2022年3月9日 07:14
「ねぇ天野。好きな天気は?」 一ノ瀬あかりは、一緒に砂場で遊んでいる天野ゆずるに声をかけた。「好きな天気?」そう聞かれたゆずるは少し考え答える。「晴れ」ふーん、とあかりは驚きもせずに返した。そして、また砂をかき集め、山にしていく。いつまで経っても、ゆずるからの質問がないので、あかりは自分から話しかけた。「私はね、雨」「雨?」ゆずるは手を止めて、あかりの顔を見る
2022年3月3日 08:15
一ノ瀬が消えた。どうやら、失踪したらしい。それは平日の午前中に起こった出来事だった。朝起きて、学校の準備をし出発をした。いつも通り。授業を受け、帰寮して、進路に向けて配られた用紙を書く。しかし、手が付けられない。頭の片隅には、疑問の影。それが顔を出したとき、頭痛がする、最近はずっとそんな毎日の繰り返しだった。学校に向かう途中の駅の改札で、「帰ろう」。そう思った。何せ今日は頭痛