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2月作品集ー朝井リョウ、茶飲友達、手、サマーフィルムにのって など

ネタばれありますたぶん!

夜空はいつでも最高密度の青色だ

最果タヒさんの映画!ってかんじ。虚無の中の光の話。仕事しても虚しくなるし人は死んでいくし事件や地震が起きて、世の中は不幸なことばかり。それを見てみぬふりできない石橋静河と池松壮亮。斜に構えててぶっきらぼうで情緒不安定なんだけど、人間らしくて、繕ってる感じはしない。から、二人は好き。全体的に死の存在が大きいけど、小さな光を見つけていくしかないんだなと思わせてくれる。キャストが思ったよりも豪華。石橋静河と松田龍平と市川実日子はとわ子メンバーだし。

猫は逃げた

離婚危機の夫婦が猫を飼ってて、旦那さんの浮気相手が猫を誘拐して、それをきっかけに奥さんの浮気相手とも接点を持ち、最終的には猫誘拐事件をきっかけに夫婦の関係が修復するという話。「愛なのに」とセットの映画で、共通点は浮気なんだが、みんな最終的にはおさまるところにおさまるというか、特にそれぞれの主役の瀬戸康史と毎熊克哉はどんなに気持ちをぶつけられても揺らがないというか、どこにあるかわからない感じと、河合優実と手島実優の強引ほどな気持ちが同じだったな。男女のわかりやすい対比なのかも。なんというか、今の自分に入ってくるような気付きはなく、そうかーーーという。オズワルドの伊藤俊介がいいスパイスになってたのはよかった。3つの愛の話は割と好き。最後の4人の掛け合いも好き。誰かを責任の根源にしたいけど、ぐるぐる回ってどこにも着地しない。愛なのには映画館でみたけどもう一度見たくなった。 

サマーフィルムにのって

映画部で時代劇をつくる話。未来で監督はだし(伊藤万理華)の作品が大好きになったりんたろう(金子大地)が一作品目を見るために未来からやってきてっていう話。タイムリープと文化祭とラブストーリーがきれいにまとまってて、完璧な青春もの。。。未来で映画がなくなって動画が長くて5秒ってのは極端だけど近い未来はありそうな。他人の物語に興味がないってことはみんな自分で精一杯ということ?ドクって名前はバック・トゥ・ザ・フューチャーから?どこでビート板はりんたろうが未来から来たってわかったのか?伊藤万理華かわいい、金子大地かっこいい、河合優実のちょいださがかわいき。 

どうしても生きてる 朝井リョウ

短編集。人が死んだ事件を見るとその人の最後のツイートを見つけるのが趣味なOLの話「健やかな論理」。

○○だから××、という健やかな論理は、その健やかさを保ったまま、やがて、鮮やかに反転する。「満たされていないから他人を攻撃する」「こんな漫画を読んでいたから人を殺した」はやが て、「満たされている自分は、他人を攻撃しない側の人間だ」「あんな漫画を読んでいない自分 は、罪を犯さない側の人間だ」に反転する。おかしいのはあの人で、正しいのは自分。私たち はいつだって、そんな分断を横たえたい。健やかな論理に則って、安心したいし納得したい。 れんか だけどそれは、自分と他者を分け隔てる高く厚い壁を生み出す、一つ目の煉瓦にもなり得る。

あるとき何の前触れもなくこの世界から消えてしまいたくなるときがあるように、何の前触 れもなく、この世界にいる誰かを想う自分の存在を熱烈に感じるときがある。いつだって少し だけ死にたいように、きっかけなんてなくたって消え失せられるように、いつだって少しだけ くたって暴力的に誰かを大切に想いたい 生きていたい自分がいる、きっかけなんてなくたって暴力的に誰かを思いたくなる自分がいる。

若い頃に友人と一緒に夢を追いかけててそのときにライブに救われてたけど結婚を理由に諦めて流されたサラリーマンになった話「流転」若いときはとにかく嘘をつきたくなかったけど、嘘をつくことになった。リアル、熱、切実さ、本音、嘘のなさ。私もそれらを抱きかかえて生きてたときあった、でも色んなものに流されてしまっている今。

何もかもが巡り、変わりゆく中で、唯一、誰にも曲げられず、何にも奪われないもの。それ は、その人自身が築き上げた歴史と、そこから手に入れた技術だ。その人が築いた歴史がその 人に宿す技術は、誰にも奪われず何にも削られず、どこまでも伸び、どこにでも届く。文化も 国境も時代も社会も、誰も何も操ることができない弾道で。その事実に励まされるうちは、ライブという場所が大好きだった。その事実に傷つくように なってからは、ライブという場所に行けなくなった

変わりゆくものに自分を託してはいけない。だけど、変わらないものに自分を託し続ける とができる人は、そうしていられる自分の奇跡的な幸福に気づかない。

会社や夫の不正を横目でみながら耐え続けて半径5メートルの悩みが積もってく4人家族のお母さんの話。これは子どものいる家族と夫婦あるあるーってなってあまり残らなかった。

武道館 朝井リョウ

朝井リョウの小説の面白さって、現実との境があやふやになるというか、あーこれあの話だなーってなるところ。朝井リョウさんの話のなかでは割とライトめ。この話はアイドルグループの話で、アイドルでいるために、恋を諦めたり諦めなかったり、本心を失ってしまったり。登場人物に外から圧力かけてる人たちは自分もなりうる。この話はアイドルだけど、肩書きとか役割とか、意外と自分もそういう決めつけてる自分がいるのかもな。 

手 

見終わったときに思ったのは、森くんと別れておじさんグッズを捨てたところの感情の動きは何だったのだろうか。ずっとお父さんと会話や関係がなにを意味してるのか、なぜタイトルが「手」なのかを考えてた。まずひとつめ、さわこがおじさんや森くんに執着?してた根っこにはお父さんがあるのかなくらいしか今はわからず。お父さんと同じおじさんに近づくことで、おじさんを受け入れお父さんを受け入れようとしてた?お父さんの存在については私もややコンプレックス気味なので、それを超えないとわからないことなのかもしれない。
男の人はそこに括ったカテゴリーを見ているのであって、その人を見ていない、みたいなしょうもなさみたいのが根底に流れてた。と思うとさわこが信じたい男の人というくくりで森くんは最後の砦だった?
「手」については映画内でもフォーカスされることが多く、印象的だったのはさわこが自宅のベッドで寝転んでるときのだらんとした手、おじさんたちの指輪をつけてる左手、森くんとつながる手。手から始まり手で終わる。
余談的な話だと、今回映画館でみたが、おじさんばっかりでどういう感想を持つのか気になったというのと、金子大地全般好きだけど、手好きーーってなったwさわこみたいにおじさんを見れたら日常の景色変わりそう。あーあと、監督の松居大悟さん、脚本の舘そらみさん、それぞれ他の作品も知ってるが、二人の作品の全体感がまだわからんってなった。原作があるからかもだけど。 

茶飲友達

「自分の寂しさを人の孤独で埋めちゃだめだよ」「ルールはルールだから」「正しいことが幸せなわけではないんだよ」現代の社会課題と人の孤独を鮮やかにひとつの物語に収束させていた。マナとお母さん、松子さん、かよさん、パン屋さんの息子、妊娠した女の子と、複数の複雑な心境をスッとまとめられてたのもすごい。他の若者たちのストーリーも知りたい。
公的に助けてもらえない、心の孤独を埋めてもらえるのはもっと無理。それを提供していたマナは自分の罪悪感(寂しさというよりは私的にはこっちの言葉のほうがしっくりきた)を埋めていた。私も家族との関係が悪くて外に居場所を求めていたときがあったから気持ちがすごくわかる故に、気付いたらどちらかというとマナの味方になっていた。結婚=家族になるのは辛いときに助けてもらえるから、みたいのはまさにそうであることは確かで、マナとお母さんのストーリー、最後の会話に集約されていた。「なんできたの?」「家族だから」ってところ。私はそのあと家族との関係は良くなって、やっぱり血のつながりは一番脆くない心の拠り所だなと思う。松子さんの最後の「だまされていて良かった」というセリフもよかった。どこかでこのテーマ見たことあるなと思ったら、万引家族か。あとひとつ考えたいのは、橋の上でマナは何を思ったのだろう。

 川っぺりムコリッタ

・白米と漬物とイカの塩辛食べたくなる。でもイカの塩辛の製造現場を見すぎるとちょっとつらい
・人は死ぬことがわかるとどうしょうもなくなって外に出ようとするってリアル
・家族や自分の嫌な過去という逃げられない檻の中にいる松山ケンイチ
・ムロツヨシの穏やかそうななかに時々垣間見える狂気感?がすごい。神は見返りを求める、然り
・個人的にはもっと満島ひかりの味と言葉の出番が欲しかった。完全な私の好み
・最初に見たときにロケ地は空気感的に島か南の方かな?と思って調べてみたら富山県で、そのギャップがなにかを意図してるのかな
・茶飲友達と同じように孤独がテーマで、解決方法として川っぺりムコリッタのほうに答えがある気がした。いつかこういう所に住みたい 

少女は卒業しない 朝井リョウ

そうです、今度映画化する作品。朝井リョウの作品のなかでは割と初期なのかな。なんでこんなに美しい青春を描けるんだろう。取り壊される高校の高校三年生の話。先生に恋していた女子、夢を叶えていく幼馴染に片思いする女子、叶う恋ではないと知りながら送辞で告白する女子、それを見て勇気を出して別れを切り出す女子、障碍者を好きになる女子、好きな人を好きになる人を増やしたくないためにライブで歌わせないようにする女子。みんな、恋が成就してるわけではないのだけれど、キラキラしてるってこういうことか。映画も楽しみ。

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