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【体験談】例の光沢のある虫は滅べばいい。

夜の1時。
眠気を待ちながら目を閉じていると、枕の後ろの壁に飾ってある絵から「カサカサ」と音がしやがった。

僕は耳を疑った。
本来なら、僕以外の生物が存在しない我輩の部屋から「カサカサ」なんて音がするわけがないからだ。
絵が勝手に動いたなら、まだ、トイストーリー感があって許せるが、残念ながら僕の部屋の絵は動かない。

僕の脳裏には一つの可能性しか浮かばなかった。

布団を跳ね除ける勢いで、ベッドの足側からダッシュして部屋の電気をつけた。

そこにおったのは、想像通り、光沢のある例の虫だった。
もうお分かりだろうが、僕は虫が非常に苦手である。注射よりも。あるいは、富士急の戦慄迷宮よりも。もうほんとに嫌いだ。
そのため、名前すら言いたくないのだが、先ずはそのネーミングと容姿について少し愚痴りたい。

おい、だれだよ、あんな名前つけたやつ。なんで、ただでさえ恐ろしい虫なのに、あんな可愛くもない名前をつけたのだろうか。あの名前のせいで余計に醜さが増す。なんか、「ぷぷりん丸」とか「ぱおぱお虫」とか「マロンストロベリー丸」とか、可愛い名前に改名した方が絶対にいいと思う。バランスを取るために。
また、あの虫と近い名前のやつをあげると、「ゴブリン」がある。ゴブリ。3文字も一致している。近い名前がゴブリンって絶対醜いやん。ゴブリの時点でもうなんか気持ちが悪い。名前決めたやつ出てこい。濁点が多いんだよ!!

そして、せめてビジュアルがマシュマロならいいのに。あの見た目は全てがおかしい。もはや拍手喝采するほどの気持ち悪さである。仮に、白い長方形のマシュマロのようなフワフワの物体であるならば、「あ、またマシュマロちゃんが来たー。もう、仕方ないなぁ」で済ませられるものの、あのビジュアルはもう手のつけようがない。ちなみに、うちの父親が「触覚がなければカナブンだよ。」と言っていたが、ほんとに的外れもいいとこである。虫について勉強して出直してほしい。

うん、話を戻そう。
僕は、それを見て全身から汗が噴き出た。

キングサイズだったのだ。
人間の身長で表したら185センチくらいだろうか。僕の好きな俳優・竹内涼真くらいの身長だろう。いや、ちがうこいつは竹内涼真ではない。
そもそも、彼らの世界にイケメン、ブサイクという世界観はあるのだろうか。「あ、あの彼、光沢がすごいわ!素敵!」などの思想があるのだろうか。あれ、ひょっとして、いまここの部屋にいるこの虫は、虫界の竹内涼真なのか?
僕は、そんな狂ったことを考えるほど錯乱状態だった。

普段なら、誰かにお願いして、天国に送ってやるところなのだが、今は深夜だったから、僕が戦うしかなかった。
僕は掃除機を取りにダッシュした。

手にしたのは最新のダイソン。
それを手にした瞬間、怖いものはなくなった。

どこからでもかかってこいや。
一瞬で吸い込んでやる。
と思いながら、自分の部屋に入る。

だが、突然電気をつけたからなのか、奴は隠れてしまっていた。僕は間違っても踏まないように剣道で培ったすり足で部屋を移動し、掃除機の先端でいろんなところをつついた。

しかし、全然見つからなかった。
ほんとに姑息な虫である。

なぜ、神はこの虫だけにこんな頭の良さを与えたのだろうか。小学校の時だれかが、「飛ぶ時にIQが200超えるらしいよ」とか言って、僕は震え上がった。てか、今もその情報の真偽は知らないから、信じている。調べたくもない。

また、僕が中学生の時、塾でその虫が現れ、先生に頼んで抹殺してもらおうとした時。
いつもクールでいい匂いを放つ慶応のイケメンな先生が駆除スプレーを持って、奴に噴射した。その瞬間、その虫は突如として飛び、先生の顔面へ体当たりした。そして、服にくっついた。
いつもクールなイケメン先生はゾウより大きな声を出して、アメリカのラッパーの5倍くらい頭を振りまくった。

そんな姿をみて、やはりIQ200なのかもしれない。と僕は思った。いや、今も思っている。
うん、話を戻そう。

そのように人智を超えた知能を有する奴が、僕の部屋でかくれんぼを始めたのだ。
僕vs奴だった。
そう考えると勝てるわけがない。

気づけば3時になっていた。
2時間かくれんぼ。2時間!!!
もう、まじでどこを探してもでてこないのだ。
明日学校なんですけど!?!?
授業中に昼寝をして、「昨晩虫と戦ってて、寝てしまいました」という言い訳で許されるほど、世界は甘くないんだよ!

僕はもう怒っていた。
僕がドラえもんだったら、すぐに、もしもボックスをだして存在を消すのに。と思った。
しかし、叶わない。

時刻、3:30
僕は諦めた。敗戦である。

だが、奴がいる部屋のベッドで寝るなんてことは絶対に考えられない。寝ている間に体の上に乗られてフラダンスでもされようものなら、全身が鳥肌だらけになる。寝れたものではない。
枕に奴が昇ってきても眠いから気にしないというような狂った神経をもっているうちの父親と僕は違うのである。

僕はリビングのソファーで寝た。
「今頃、部屋でフンでもしてないだろうな」と考え始めたら眠れなそうなので、明るい音楽を聴いて寝た。

次の日。

1日学校で過ごし終え、夜の20時に自分の部屋に久々に入室した。手にはもちろんダイソン。

扉を開けると、そこに音はない。

静かだ。
いや、静かにすんじゃねーよ。「カサカサ」って言ってくれよ。頼むよ。お願いだから。三百円あげるから。

僕はすり足で、部屋のソファーに腰をかけて、
今度は静かにしてみることにした。
押してダメなら引いてみる。向こうが逃げるなら、そっけなくしてみる。恋愛の駆け引きと同じである。知らんけど。

黙ってスマホをいじりながら、向こうから近づいてくるのを待った。
だが、しかし!
三十分が経過したのに出てきやがらない。
段々とイライラしてくる。

なにか僕が嫌なことしましたか?
部屋に来なければなにもしないのに!!
森の中で静かに暮らしてくれよ!!
お願いだから。枯葉を静かに食べていてくれよ。な?絶対そっちの方が幸せだって。
と思っても通じないのが、言語の壁。ほんにゃくこんにゃくで一言「出口はあちらです」と言えたらどれほどいいことか。

再び僕は部屋中を探し始め、カーテンを開けた。すると、なんと、窓が半開きで開いていて、網戸に「ぱおぱお虫」がくっついていたのです!!!

みぃーつけた。とばかりに歓喜して、光の速さで窓を閉じた。だが、閉じただけでは、一生網戸と窓の間に鑑賞物のように存在することになる。言っとくが、お前は美術館の展示品ではないのだ。

すぐに網戸のない方の窓を開け、網戸を動かして、逃げられるような隙間を作り、放置した。
数時間後、窓を見ると奴はいなくなっていた。

僕の脳内では、花火が打ち上がった。
綺麗な花火だった。

最後に一言だけ言わせてほしい。

次また入ってきたら容赦はしない。
怖い思いをしたくなければ、二度と入ってくんな。いや、入ってこないでください。
宜しくお願い致します。

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