旦那さんとの部屋探し
マンションには「ペット可」と「ペット不可」とある。
麻布十番に引っ越す時に、そもそも男2人でOKな部屋を
探し出すこと自体が難しかったのだけど、僕はチラリと
物件情報を見て、そこに「ペット可」の文字を確認していた。
当時はまだペットを飼うという選択肢を、
現実的に考えていたわけではないけれど、
どこかで夢として胸に抱いていた。
そもそも男2人で賃貸契約を結ぶことが、当時は難しくて、
その話を記録に残しておきたい。
僕たちが麻布に居を構える前は、横浜市に住んでいた。
最寄り駅は、日吉という大きな大学がある駅。
旦那さんと出会って、恋に落ちて、一緒に住むことを決めて、
不動産屋さんめぐりをした時に、いつも訊かれたのは、
「ご友人ですか? ルームシェアですよね」だった。
その当時は若かったし、説明する術もわからなかったので、
「そうです」と答えて、不動産屋さんは頷くと、
「では2DK以上の部屋がいいですね」と勝手に決め、
「大家さんが男性2人には厳しいんです」と説明を始める。
「男同士だと友人を招いて、騒いだりしますからね」と
やんわり釘を刺されながら、話を聞く。
「まぁ、そういう年齢でもないですし」と笑いながら言うと、
不動産屋さんは頷いて、「こことか、どうでしょう」と
間取りを見せてくれた。
旦那さんと僕にとっては、今住む部屋が4つ目の住処なのだけど、
最初の2軒は、そんな感じだった。
「ルームシェア」という名目で、2つの部屋があるタイプ。
横浜を出て、麻布十番に住もう、と決めた時、
やはり町の不動産屋さんに飛び込んで、条件を伝える際に、
担当の営業の人は「ルームシェアってことは、2DKですかね」と言った。
でも、麻布十番で、その間取りは、なかなか高い。
予算的には、ちょっと難しい。
「別にこだわりはないんですけど…」と言うと、
その店舗の責任者だというイケメンな男性スタッフが、
「あ、そうですか? そうしたら、いい物件があって」と
パソコン操作をして、間取りを印刷してくれた。
多分、そのイケメンは、僕たちの事情を察したのだろう。
担当スタッフが「え、でも」と言いかけた時に、
「ほら、こことか、いいじゃん」と遮って、
「案内してきなよ」と促してくれた。
それがトメと初めて暮らした家だ。
今、住んでいるマンションの契約をする時は、
「あ、同性パートナーです」と打ち明けてから会話を始めた。
一瞬、不動産屋さんのオフィスの中の雰囲気が止まった気もしたけど、
それは気のせいだったのかもしれない。
僕は努めてサラリと言って、旦那さんもそれをニコニコ聞いていて、
担当スタッフも「そうですか」と言って、書類を取りに行った。
今、時代はどうなんだろう?
仕事柄、ダイバーシティを扱い、法人に向けて語ることもあるけど、
LGBTといわれる少数派にとって、賃貸契約はしやすいのだろうか。
「あ、ゲイカップルです」とカミングアウトして、
「あぁ、では、この間取りはどうですか?」と自然に返す不動産営業は
どれくらいいるのだろうか?(どれくらい見える化されているのだろう?)
とにもかくにも、良い不動産屋さんに巡り合って、
しかも今は「犬もいて…」と事情を伝えることも加わって、
なかなか条件に該当する物件は多くないのだけれども、
満足のいく家に暮らしている。
いつかは、もう1匹、犬を引き取って、
庭か広いバルコニーのある家に住みたいのだけど。
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