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飲食業界のモダナイズへの挑戦

はじめに
このnoteでは、IT業界と飲食業界で事業を展開している私たちが感じている課題や、サービステック事業・飲食事業で実現したいこと、そのためのアプローチについて、代表の大関との対話形式で紹介します。

セカンドファクトリーは、クライアントワークとしてのコンサルティング事業・サービステック事業・飲食事業と大きく3つの事業を展開しています。クライアントワーク事業が既存事業、サービステック事業と飲食事業が新規事業という位置付けです。


IT業界のコンサル企業が飲食事業に挑戦した理由


有馬:
今日は良い機会なので、自分たちの事業について改めて理解を深めたいです。最近ジョインしてくれたメンバーにも知って欲しいですしね。

そもそも、どうして飲食事業に挑戦したのですか?

大関:
本格的に飲食事業に取り組んだのが、ちょうど10年前ぐらいかな。まだまだ、スタートラインに立っただけと思っているけど、2023年3月1日にさくらガーデンもオープンして、飲食事業が2つ目の事業の柱として育ってきた。このタイミングで振り返るのも良いかもな。

3月1日にオープンした府中さくらガーデン

飲食事業への挑戦を決めた頃を振り返ってみると、IT業界・飲食業界のどちらの業界に対しても、違和感を感じてたんだよね。

有馬:
IT業界に対する違和感は、江ノ島で海の家を始めた頃に社長とよく話をしていましたね。当時の記事にも書かれてましたよね。

プロトタイプとして取り組んだ海の家の事例と当時の記事
https://www.buildinsider.net/column/oozeki-kouji/001

Build Insiderオピニオン 2014年6月

大関:
そうだね。当時から考え方は変わってないかな。創業からずっとIT業界で仕事をしてきたわけだけど、誤解を恐れずに言うと、IT業界の傲慢さが気になるようになってしまったんだよ。セカンドファクトリーを成長させるためにも、ITやデザインのプロフェッショナルだけでは足りないということに気がついたタイミングだったんだと思う。

クライアントの事業の成功に伴走するなら、ITやデザインに精通しているということにプラスして、クライアントの事業の本質を理解できないといけないんだよね。IT業界だけにどっぷりと浸かってしまうと、そこら辺のアンテナが弱くなる怖さがあったんだよ。

有馬:
飲食業界に対しての違和感とは?

大関:
ちょうどフードテック関連のクライアントワークが続いていた頃で、飲食業界の経営者の方と話をしたり、現場を体験したりして、飲食業界について知ることができる機会が多かった。で、知るほど理不尽な業界に見えたんだ。飲食業界に従事している人たちの多くが、お客さんに良いサービスを届けることに純粋な喜びを感じて毎日の仕事をしている。IT業界で働いている自分たちよりもユーザーのこと考えて仕事をされていると感じることもあった。でも、そういうサービスを支える人たちの社会的な評価の低さだったり、旧態依然とした業界全体のあり方に理不尽さを感じたんだよな。

有馬:
それまでのセカンドファクトリーと同じようにITとデザインで支援する立場からアプローチする方法もあったと思いますが、自分たちでも店舗を構えて飲食事業に挑戦したすることを決めたのはどうしてですか?

大関:
一番の理由は、”わからない”ってことだね。ITやデザインのプロとしてだけで作るサービスに限界を感じていたし、ペルソナやシナリオを定義することも価値はあるんだけど、現場の実体験に勝るインプットはないしね。

あ、念の為に言っとくけど、マーケットサイズとかも考えてたよ。飲食業界は、人の生活に欠かせない”衣食住”の一つだし、”食べる”っていう漢字は、”人を良くする”って書くじゃん。食事って人をよくすることだと思うしね。UXをやってきたセカンドファクトリーが挑戦すべき業界だと確信してたよ。

飲食業界もIT業界も、本質はピープルビジネス


有馬:
僕はセカンドファクトリーにとっての既存事業(クライアント企業の支援)を担当してきた立場なので、改めて質問させて欲しいのですが、組織を運営していく上で、IT業界と飲食業界の違いはありますか

大関:
違いもあるんだけど、本質は同じだと感じることが多いかな。飲食業界もIT業界も本質はピープルビジネスなんだと感じているよ。IT業界でクライアントワークの仕事をしていても、スキルや経験とかの前にどれだけ自分ごととして考えられるかとか、人としての側面が大切じゃない。

有馬:
そうですね。スキルや知識も大切ですが、後からでも身につけられますしね。それよりも一緒に働きたいと思える人材であるかとか、仕事へのスタンスの方が大切ですよね。

大関:
セカンドファクトリーの既存事業でいうと、デザインやテクノロジーのスキルに価値があるわけじゃなくて、デザインやテクノロジーのプロフェッショナルとして、クライアントの事業に伴走することに価値がある。デザインやテクノロジーは、その手段だと考えてやってきた。

飲食業界も同じで、食べることではなくて、空間やコミュニケーションも含めた総合的なサービスに価値があるんだよな。そう考えると、店舗を支えてくれているスタッフ、事業を展開する企業、お店に来てくれる顧客も満足した状態をつくらないと無理なんだよ。

安直な表現になってしまうけど、”三方良し”の状態だよね。これって自分たちが、IT業界で経営としてやってきたことと変わらない。企業・スタッフ・お客さんが満足できる状態をつくるために経営してきたわけだから、同じなんだよ。自分たちで店舗経営をやってみて、ビジネスの本質は変わらないということが実感できたよ。

有馬:
では、どんなところに違いを感じますか?

大関:
大きな違いは、約束された未来があるかどうかかな。キャッシュフローが明らかに違うんだよね。IT業界は受注したタイミングで、ある程度未来の収益が約束されるけど、飲食業界は、その日に営業をしてみないとわからない。それこそ、天候次第で未来が変わってしまう。約束された未来がないから、まとまった投資をしにくい。飲食業界のDXがなかなか進まない理由のひとつは、こういうビジネスモデルの違いにもあると思うよ。

飲食業界をモダナイズしたい


有馬:
ちょうど飲食業界のDXの話が出たので聞きたいのですが、セカンドファクトリーはサービステックのソリューション提供と飲食業界の企業へのコンサルティング事業も行ってますよね。自分たちで店舗経営をやるだけではなく、飲食業界の企業を支援する事業を継続したのは何故ですか?

大関:
サービステックソリューションや、飲食企業へのコンサルティング事業は、自分たちだけでは実現できない、飲食業界の抱える理不尽さを変えるための活動なんだよね。ITやデザインのコンサルティング事業が、自分たちだけでは実現できない、デザインやテクノロジーで社会を前進させるための活動と考えているのと根本は変わらないよ。

IT業界と比較すると、飲食業界は働いている人の熱意や努力に依存している部分が多い。でも、人口も減少しているし、若い人たちの価値観も変化しているから、このままだと業界全体が持たないよ。

なので、飲食業界も大切な部分は守りながら、時代の変化にアジャストしていかないといけない。最近、”飲食業界をモダナイズする”っていう表現を使っているのだけど、サービステック事業をやっている理由は、飲食業界のモダナイズをデジタルで実現するためだね。自分たちが運営している店舗を実証実験の場として活用することができるから、ITだけの企業が提供しているソリューションとは違うクオリティも出せると思ってる。

有馬:
”飲食業界のモダナイズ”!

キラーワードが出ましたね笑。飲食業界のモダイナイズとは、具体的にどういうことでしょうか?

大関:
企業にも、店舗の現場にも、働くスタッフにも、変化できる余裕がある状態って感じかな。何かを変えるためには、変えられる余裕がないと難しいよね。どんなに優秀なスタッフでも目の前の業務が忙しすぎたら、変えることなんてできないんだよ。”忙しい”という漢字は、”心を亡くす”と書くぐらいなんだからさ。

これも誤解を恐れずに言うと、飲食業界は、過去のやり方を踏襲していて、業務が煩雑になっていることが多いんだよね。業務が煩雑だと、ミスが増える。ミスが増えると店舗の中の人間関係も悪くなる。そうすると、店舗の総合的なサービス品質はどうやっても上がらない。

じゃあ、マニュアル化してミスが起きないようにすれば良いのかというと、過度な仕組みは、変化を生む余白を奪ってしまう。自分たちの店舗経営の経験から、70%の仕組み化と30%の自由ぐらいのバランスが最適だと実感しているよ。

有馬:
70%の仕組み化の部分は、ITやデザインが貢献できることも多そうですね。

大関:
さっき話をした、"店舗の総合的なサービス品質"って曖昧な言葉じゃない。飲食店経営の基本なんだけど、"店舗の総合的なサービス品質"の構成要素は、QSCAHに分解できる。つまり、店舗の総合的なサービス品質を上げるためには、QSCAHの状況を把握している必要があるんだよね。

飲食店経営のQSCAH
・Quality(クオリティー)
・Service(サービス)
・Cleanliness(クレンリネス)
・Atmosphere(アトモスフィア)
・Hospitality(ホスピタリティ)

さらに、F(food:材料費)、L(Labor:人件費)、R(Rent:家賃)といったコスト比率も把握しないとビジネスとして破綻する。なので、自分たちの状況を複数の視点から明らかにして、総合的にバランスを取っていかないといけないんだよ。

店舗の営業もしながら、様々な状況を把握して改善を続けていくことは、人の努力だけでは難しいよ。システムを導入すれば解決できるというシンプルな問題でもないから、ITとデザインにできることがたくさんある。仕組み化できる、Quality(クオリティー)、Service(サービス)、Cleanliness(クレンリネス)は、DXで改善しながら、デジタルではできないAtmosphere(アトモスフィア)、Hospitality(ホスピタリティ)の品質を上げる部分に、働いているスタッフが全力をかけられる状態が理想だよね。それが、自分たちの言葉で言うと、”70%の仕組み化と30%の自由”ってことかな。

有馬:
1095ソリューション(セカンドファクトリーが開発し、自社店舗でも活用している飲食業向けソリューション)も、「自分たちがどんな状態なのか知ることから始める」というコンセプトですよね。POS・OES・アンケート・店舗マネジメントとエッジのアプリケーションを揃えてますが、アプリケーションひとつひとつが価値ではなく、アプリケーション群を業務に利用することで、データが統合されて店舗の実際の状態が明らかになることに本質的な価値があるという考え方ですよね。

1095ソリューション構成図

大関:
このままじゃダメだと気がついている人は多いけど、何から始めて良いのかわからないという飲食業界の方も多いので、OODAループのアプローチを実践できるソリューションには価値があると思ってるよ。

まあ、ソリューションやプラットフォームの紹介は別の機会にしっかりやろう笑。

変わらなくていい企業なんて存在しない


有馬:
飲食事業への挑戦のきっかけを質問させてもらうところから、会話をスタートしましたが、既存事業であるITやデザインの業界への違和感なども伺うことができました。セカンドファクトリーにとってのサービステック事業・飲食事業は、自分たちを変えていく挑戦でもありますね。

ここ数年、評価制度・チーム構成・コミュニケーション方法など、組織を変える取り組みを実施してますが、色々と動いてみて感じているのは、「変えること・挑戦することを、継続できるようにしたい」ということです。これからどんなことが課題になると思いますか?

大関:
安定して継続できるビジネスなんて、もう存在しないからね。今までも同じだったけど、これからはもっとそうなるよ。経営をやっている側からすると、先行き不透明な時代でも、従業員や家族を守っていかないといけないわけで、昔のドラマみたいに経営陣が立派な椅子に座っていられる時代じゃないよね笑。

なので、これからのテーマは2つだな。

  1. 自分たちも含めて、リーディングしているメンバーから率先して変化していくこと

  2. 様々な価値観のメンバーとチームの一体感をつくり、維持すること

どっちもIT業界にも飲食業界にも必要なことだね。気を抜くと、前の状態に戻ってしまう厄介なテーマだから、お互いに気をつけてやっていきたよな。


編集後記 2023年3月

この対談記事は、2022年の年末に行った会話をベースにしています。取締役に就任してからの半年間を振返るための会話だったのですが、自分たちの事業についてあらためて整理できる内容だったので、そのまま記憶の彼方に消えてしまうのは勿体無いと思っていました。(ずっと下書き状態で氷漬けしていました。。)

「セカンドファクトリーさんは、なんで飲食をやっているの?」

これまで何度も聞かれてきた質問です。自分たちでは理解しているつもりでしたが、ちゃんと言語化することに挑戦してこなかったなと反省しています。今回、対談形式ではありますが、ITとデザインのプロフェッショナルとしてクライアント企業の新規事業を支援しながら、自分たちでも飲食事業に挑戦している理由を、少しは言語化できたかなと感じています。

社内向けに書いているところもありますが、社外の方に読んでいただいても、IT業界からみた飲食業界の課題など、参考にしていただける内容だと思っています。

このnoteでは、デザインチームの活動を中心に書いてきましたが、この記事をきっかけにセカンドファクトリー全体のことについても書いていきたいと思っています!長文になってしまいましたが、読んでいただけると幸いです!


最後に、2FCのデザインチームでは、ともに学び、成長しながら、クライアントの事業や組織を前進していきたい、そこに共感いただける仲間を探しています。お気軽に問い合わせください!


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