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とは言え

「プログラムみたいな人だね」と友人夫婦に笑われた。彼氏は普段温厚だけど、私に悲しみをぶつけられた時には怒りを露わにし、お互いに謝ろうと嗜めても「俺発信の怒りじゃないから俺は悪くない」と言い切る。インプットしたデータによって怒りが出力されただけで、元々そういう仕様だからバグは俺のせいじゃない、俺はシステム通りに動いてる、入力の仕方が悪いからエラーが起こった、みたいなことだよねと、友人は解釈した。そう表現されて合点がいく。彼の世界には彼しかいないのも、彼女だからと言って私が他より特別に扱われるわけではないのも、単に私は彼というプログラムのオペレーターの一人に過ぎないからだ。情緒的な繋がりよりも、「平常であること」「自分にとっての均衡を崩されないこと」をなによりも重んじるのは、エラーが起こること、イレギュラーが起こることが何よりの異常事態で、負荷になるから。私が一人で自由に何をしてようが、悩んでようが、まったく動じず我関せずだけど、感情が自分に向けられた瞬間に「反応」する。均衡を崩す脅威となりうるから。エラーをたくさん起こすオペレーターは嫌うけれど、正常に動作させてくれる人に対して特別に好意的にはたらきかけたりしないのはそういう道理だ。エラーがマイナスなら、正常動作は0でしかない。

近所のカフェで遅めの昼食をとりながら、彼にその話をした。友人夫婦による彼の性質に対する考察結果を伝えると、「そうだと思う」と頷いていた。そこから、いろんな話をした。そのカフェはひと席ごとが広々としていて、隣との席間にもゆとりがあり、チェーン店のわりに居心地がよい。この店で時々彼と向かい合って食事すると、いつも話さないいろんなことを話して、つい長居してしまう。この日も気づけば3時間近かった。

今だと思うタイミングがあり、愛着障害について、初めて具体的にその言葉を出して話した。私は不安型と回避型のミックスであること(特に不安型の傾向が強く出やすい。ネットで検索した不安型の特徴を読んで「1行目からまんま〇〇だね」と笑われた)や、彼には回避型の傾向があり、私は付き合う前からそれに気がついていたこと(これについても納得していた。解説を読んだ本人曰く「わりと安定型でもある気がする。回避型とのバランスは時によると思うけど」)。
それから、二人に備わってる「レーダー」についても改めて話した。彼も私も敏感で神経質なタイプで、見えているものの範囲や聴こえている音の範囲が似ていると以前から感じていたけど、レーダー働かせてる理由は二人とも全然違う。

こんな話もした。この前さ、私にとって愛は行動だけど、あなたの愛は何って話した時にさ、「私と一緒にいるのって落ち着くの?居心地いいの?」って聞いたら、「(私の精神状態が)安定してる時は」って答えたでしょ。あれがね、なんか嬉しかったんだよね。だって、全部好きなんて絶対有り得ないし、嘘じゃん。有り得たとしても、それって何にも見えてない状態で、思い込みじゃん。幻想じゃん。全部好きだって言われるよりも、めんどくさい私も知ってくれていて、そういうとこは嫌いだけど、「それでも一緒にいる」って言われた方が、私は信用できる。本当だなって思う。私も、あなたが私に嫌だなって思ってるとこあるのと同じで、たまにはもっと興味持てよとか、ありがとうって言えよとか、イライラしてるのこえーよとか、思うよ(笑)。けど、そんでも好きだし、一緒にいたいって思ってるよ。その方が本当なんじゃないかなって、なんか思うよ。みたいな話。

見た目はさわやかだし人並みに社交性もあるし基本的には愛想いいし紹介ウケ良さそうだよねえ、紹介で付き合ったこと多いの分かるわ、と言ったら、唐突に「俺を家に例えたら、外観は良い感じなのに間取りにクセある感じかもな」と言われて、クセがあるのを自覚していることにめちゃくちゃウケてしまった。私も家に例えてよと強請ると、「耐震構造に問題あり」。はじめての心地よさを感じた。

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