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セシボンといわせて(六日目)

〈六日目〉

 朝、母がおっかさんを見かけて声を掛けたが、さっと逃げたという。台所の窓の 辺りには黒がいたらしい。
 今日は黒と茶トラだけがずっと庭で遊んでいた。


 今朝もケージ周りが段ボールの屑だらけで、羊の人形も床に落ちている。羊も少しはセシボンの気晴らしになっているのだろうか、それともイライラを増やしただけかしら。


 水も大半が零れていて、爪とぎも濡れていたので乾かすために出して、トイレも皿類も皆 出して、床の敷物も取り外して。
 さあ、掃除だ!
 掃いて、布で拭き、仕上げにアルコールでも拭いた。 

 二段目の棚板に据えたベッドの隣に缶詰を入れた餌入れを乗せる。それだけで狭い棚板は余白が無くなる。すぐに常は一段目に居るセシボンが、その一段目から前足を伸ばして極く少量、口をつけた。そのまま身体全部を二段目の棚板へ持ってきて背中を山型にし、ベッドの隣の狭い隙間にうずくまるように丸くなる。
「皿の上〰〰〰〰っっ」
 声が漏れて黒猫に訴えてしまう。見事に皿に覆い被さっている。それもウェットフード入りの皿だよ......。猫は狭い所が好き、って聞くけど......、好きなんだ......??
 セシボンが一段目に去ってから、ケージの外側より指を差し入れて、中身をひっくり返さないようにバランスをとりつつ、餌入れの皿を床に下ろした。


 午後、出先から帰宅した母に、猫のケージを掃除してない、と指摘される。

「え!掃除したよ。アルコールで拭くまでしたよ」
 車庫へ行くと段ボールは屑化、柵にはめ直した筈の羊も床にいる。

 再び清掃。そのまま車庫で、母と一緒に趣味事に使用する物などの整理を始める。   セシボンはその間中ずーっと「ンー、ンー、ンー、ンー、」とないている。「ミャーウ」とも、なく。私たちが居るからかエサも食べない。


 夜10時前に母が車庫へ行くと特に変わりなく、ちゅーる2本を食べた、と言う。
 小半時もしてから、趣味事の物を借りたいと電話が入り、探しがてら車庫のドアを開ける。
 水は零れているものの、排泄してあるし、缶詰も食べ、カリカリも食べてある。
 上手にトイレをしてるよ、と母に伝える。床に砂は落ちているが、今までよりずっと少ない。
 母も確認して、本当だね、と返してくるが、電話の返事をする為、そのまま車庫を出て行った。


 腰を低く下げてトイレの始末をしながら、家猫にむいてるよ、ね、などと声を掛ける。 次に缶詰用、カリカリ用、水用と皿類を出そうとした時だった。頭上で猫がガタガタッと動いてケージ全体が揺れた。

 ヤバい!――これは、逃げられる、という感情で――
 思わず、「キャーッ」と叫ぶ。びっくりしてセシボンの方が留まる。もしかすると向きを変えただけかもしれないのに、外に出る隙を窺っているような気がしてならない。
 掃除はまだ、二人で行う方がいいのかもしれない。昼間、一人でもうまくやれたから、いい気になってしまったと反省する。昨日は母がちゅーるをあげている隙に掃除したくせに。
 今度は慎重に作業をし、水と餌やりも終え、ケージの扉を閉めた。それからセシボンになんだかんだ他愛のないことを話しかける。セシボンはひたすら「ンー、ンー、」となき続けていたが、私が喋り続けているので、『もうコイツに言ってもムダだ』と悟ったのか、 クロワッサンの体勢を取り、完全に顔をあっちへ背けて見せないようにされてしまった。



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**1つ前のお話はこちらです↓**


セシボンをまとめました。目次もあるのでお好きな日を選んでいただけます…🐈‍⬛🐈‍⬛↓↓↓🐈‍⬛


☆☆☆見出し画像はみんなのフォトギャラリーより、にきもとと様の作品『 。 』を拝借しております。いつもありがとうございます😊☆☆☆☆☆




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