『故国喪失についての省察 1』より〈12 故国喪失についての省察〉エドワード・W・サイード
「故国喪失(エグザイル)は、それについて考えると奇妙な魅力にとらわれるが、経験すると最悪である」という感傷的な一文から始まるこの表題作は、文学作品などで英雄的にあるいはロマンティックに描かれることが多いエグザイルだが、それを経験した者にとっては癒しがたい亀裂と根元的な悲しみにあふれるという矛盾が指摘される。コンラッド、アドルノ、あるいはマフムド・ダルウィッシュの詩などを論じながら、サイードはエグザイルのネガティブな一面を描いたものとして文学を擁護し、同時にそれは説得力のある