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予期しない感動サービス

 先日、ある用事でタクシーを利用した時のことです。

 運転手さんは、60過ぎの男性です。私が行き先を告げると、「のど飴、いかがですか?」と袋からイチゴ味の飴をひとつ渡してくれました。ご自身が気分転換に買ってこられたものだと思います。会議が続いて脳が疲れていたので、甘いものが欲しかったところだったので「ありがとうございます。」と受け取りました。

 「こんなご時世ですから、飴でもなめてゆっくりしてください」と運転手さん。
 そこから会話が弾み、コロナのこと、景気のこと、若い人の生き方、昔読んだ漫画のことなど、いろいろ話をしました。そして、料金を支払い、降りるときに「電車の中で召し上がって」ともう2粒渡してくれました。
 

お伺いすると、元々は飲食店関係のお仕事をされていたそうです。人が喜ぶのをみるのが好きなんだろうなと、その雰囲気でお気持ちが伝わってきました。

 この飴と飴をくれた運転手さんの気持ちが嬉しくて、心に残りました。

 仕事柄、いろんな顧客サービスを気にしてみていますが、やはりこうした「無私の心」「利他の心」から生まれる「さりげないサービス」が心に残ります。乗車時にテッシュを渡してくれるタクシー会社もありますが、あれは会社のルールですから、そんなに感動しません。また美容室などでも「ご自由にどうぞ」というメッセージと共に飴を置いているところもあります。
今回のケースは、運転手さんが自分で食べようと思って買ってきたものを渡したもので、いわゆる「仕組みになったサービス」ではありません。予期しなかったサービスだったら、余計に心に残ったのかもしれません。

 しかし、何よりも嬉しいのは、運転手さんの気持ち。「こんな状況で、きっと、みんな疲れているんだろうな」と思われていたのでしょう。会話も弾むし、少しでも喜んでくれたらという思いから生まれたもので、リピーターを増やそうとか、CSポイントを高めようなどの邪心は一切ない、純粋な「思いやり」だったらから、人の心に伝わったのだと思います。

 今、世の中に多くある、様々なサービスは、「10%割引サービスです!」、「朝食無料サービスします!」、「〇〇の特典付きです!」と、いかに得であるかを訴求してきますが、私はそのサービスを利用して、感動したことはありません。原価をかけて、広告費をかけてされているのに申し訳ないですが、心に残ることはありませんでした。

 今回は、たった数粒の飴。原価にしてみれば、10円もかかっていないものですが、その提供の仕方と提供者の思いで、私には小さな感動が生まれ、思い出に残りました。「集客」のために、インターネット広告でますます「特典サービス」はエスカレートしていくと思いますが、その路線ではない「心に残るサービス」は、「定着」(感動→ファン化)につながるはず。小さな思いやり、些細な気配りなどが、益々大事になるように思います。

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