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「ちいさな惑星〜循環するわたしたち〜」 トークライブ 書き起こし

山形ビエンナーレ2020で公開された、山形県鶴岡市にある「やまのこ保育園」の1年間を追った茂木綾子さん監督のドキュメンタリー「ちいさな惑星 〜循環するわたしたち〜」映画に合わせて、芸術祭初日9/5にオンラインで行われた山形ビエンナーレの芸術監督・医師の稲葉俊朗さん、園長の遠藤綾さん、監督の茂木綾子さん、三者のトークライブが行われました。映画もこのトークイベントも素晴らしい内容でした。

私は、やまのこ保育園に子どもを通わせている保護者でもあるのですが、ドキュメンタリーでの視点も、普段なかなか垣間見ることが出来ない保育園での日々暮らしの様子も、そしてコロナ禍の中でどの様な開催になるのか予想がつかなかった「山形ビエンナーレ2020 いのちの学校」という取り組みやコンセプトも、保育とかアートとか枠組みとか取っ払って、未来への示唆に溢れていて、多くの刺激をもらいました。ひとまず冒頭部分だけでもnoteに載せてみたいと思います。

映画もトークもYouTubeで無料公開されているので、ぜひたくさんの方に見ていただきたいです。

やまのこ保育園は、「やまのこ」の保育者(やまのこでは保育士として働くスタッフを資格名ではない名前で呼びたいという思いから「保育者」と呼んでいる)も現在募集している様です。記事の下に、直近あるイベント、各メディアでのインタビュー記事などリンクを記載しておきます。関心を持たれた方は、ぜひそちらもご覧いただけると嬉しいです。

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0. 映画予告編:


1. 映画本編:「ちいさな惑星 〜循環するわたしたち〜」(40min)


2. トークライブ: [稲葉俊郎 × 茂木綾子 × 遠藤綾トーク「子どもと共に暮らしの未来を探って」

稲葉俊郎 × 茂木綾子 × 遠藤綾トーク
「子どもと共に暮らしの未来を探って」
9月5日(土)15:20-16:00
出演)
- 稲葉俊郎(医師)
- 茂木綾子(写真家/映画監督)
- 遠藤綾(やまのこ保育園 園長)

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https://youtu.be/Y7qnxNIemK8

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稲葉:こんにちは皆さん。今「ちいさな惑星〜循環するわたしたち〜」という映画を見ていただいたと思うんですけれども、ここからは、この映画監督である茂木綾子さんと、この映画のテーマになったやまのこ保育園園長の遠藤綾さん。そして私、山形ビエンナーレ芸術監督である稲葉の司会、この3人で対談をスタートしたいと思います。


僕も今、初めて見させていただいて、本当にいろいろなんていうか、考えさせられるっていうかですね、いろんな思いがいっぱい湧き巡ったんですけど、本当にいろいろなことを感じたんですけど…。この「ちいさな惑星〜循環するわたしたち」って、「循環」って言葉が出てたと思うんですけど、この自然界っていうのは、本来すべて、生も死も、人間も人間以外も全てが循環しているんですけど、なかなかそれが分かりにくくなったというか、それがセクション化していって、壁とか溝とかいろんなものを複雑に張り巡らされてわからなくなっていて…。でも、実は自然界というのは、その間を本当に針の糸を縫うように巧妙に常に循環していて、子どもたちと一緒に、なにかそれを探すっていう感じが、僕はしましたね。

だからその循環しているこの世界そのものを、別に分かろうと分かるまいと、それは常に自然界というのはもう何十億年の規模でそういうことを繰り返していて、それがいかに隠されたとしても、それを共に探しに行くっていうことが、結局子どもの教育だったり、大人の教育でもある。そういうことをすごく感じましたし、幼稚園とか保育園っていうのは結局、従来だと大人が子どもに教えるみたいな構図とかあったと思うんですけど、そうじゃなくて同じ地球に生きる人間として、共に「謎」とか「神秘」とかそういうのを探す「場」としての保育園であり学校である、そういうような印象を受けて、実は山形ビエンナーレ2020というのも、実は同じような思いで作ってるところがあるんですよね。

「いのちの学校」のコンセプトで書いてあるとこは、皆さん読んでいただけると嬉しいんですけど、そこにも「私たちは生きることを自由に追求する場が必要である」っていうことを書いていて、僕はそれは医師として医療現場に働く人間としても思ってるんですけど、それはある時には学校であったり、あるときには病院であったり、ある時は町であったり、あるときには保育園だったり、ある時には芸術祭だったり、そういうことなのかなって僕は思ってまして、この芸術祭の初日で、こういう一見すると芸術祭っていうと、こういうものがあまり取り扱われないような傾向にあるというかですね、これを映画という文脈の中で、一応かろうじて取り上げられることが出来るんですけど、僕は、本当にこういうことを含めて芸術祭はもっと広く扱う必要があると思っていたので、とっても素晴らしい映画だなと思いました。

あと一つ付け加えて思ったのは、「今を幸福に生きる人たち」と言うことが保育園のテーマであったと思うんですけど、それがまさに「遊び」だなって思いました。「遊び」と「仕事」と「儀式」みたいなのが円環構造で繋がっているという生き方を僕も目指していて、その儀式の要素ですね、映画の中でいわゆる「異界」、異なる世界と繋がる通路としての儀式のようなものが、保育園の日常の中に自然な形で忍び込んでいて、そういうのを僕はすごく素晴らしいなと思いましたし、保育園とか幼稚園とか学校とか、そういう枠にはまらず、何か僕らがどういう社会とかどういう場を生きていきたいのかと言うことをすごく示唆する映画だったなと思いました。

というのが私の長い感想ですけど、ここからお二人に、最初に遠藤 綾さんからどういうきっかけとか、どういう思いでこの保育園というか、この「場」ですかね、こういう場が作られたのかとか、その辺りの経過とか思いをちょっとお聞きしたいんですけれども…

遠藤:ありがとうございます。

すごく稲葉さんの今のお話を聞けてよかったなと思っていました。もともと今の「今を幸福に生きる」っていうのと「地球に生きているという感受性を育む」っていうのは、映画の中でも出てきました Spiber株式会社という会社、企業が保育園を作りたいということであるならば、私たちが Spiberとして作るなら、どういう「場」なのだろうっていうところからスタートしているんですけれども、会社が持っている未来像だったり社会の姿だったり、今どんなふうに見てるのか、みたいなことを踏まえた上で、自分たちが作る場だったり、教育というのが、どんなふうにあったらいいのかなっていうところで考えていって作られてきたということがあります。

一企業が作ってる企業主導型保育所っていう枠組みで作られているんですけれども、自分たちの福利厚生的な保育所というような位置づけからはもう少し広い範囲で捉えていて、やはり今の時代に自分たちが作り上げるものとして、どんな「場」なのかっていうところで作ってきている場所だとは思ってます。

なので、さっき稲葉さんがおっしゃった、保育園とか幼稚園とか、そういうカテゴリーの中に当てはめていくと言うよりは、本当に「暮らしの場」というか、次の子どもたちと一緒に暮らしを作っていく。そしてそれが結果的に「保育園」という枠組みだったというような感じで考えています。

稲葉:この保育園は一般地域に開かれてるってことですか? その企業とその企業の方だけが入れるとかじゃなくて?

遠藤:はい。今半分半分ですね。地域の方が半分で、社員のお子さんが半分っていう感じです。

稲葉:なるほどね、その企業のあり方の一つとしても、家族がいる方も多いわけですし、お子さんもいるし、でもそのことで例えば働けなくなるとか、なんかそういうことが起きることが多かったと思うんですけど、むしろその企業がそういうことも含めて、一つの統合体というかですね、考えてくれるっていうのは、すごく聞けば当たり前のような気もするんですけど、なかなかその当たり前っていうのが今まで出来なかったってことなんですかね。

遠藤:そうですね。企業としてその「働く」っていうことをどのように捉えるのかとか、働きやすさって考えたときに、なんと言うか「サービスとしての教育だったり保育っていうものを求めていくのか?」みたいなことも、全部自分たちがどのように、その社会の中にいるのかっていうことの見方と結びついていると思うんですよね。

なので、自分たちがどんなふうにこの社会の中で貢献していくのかっていうことがベースにあって、全て組み立てられていくような感じですかね。

稲葉:今回、その映画になってるわけですけども、茂木さんはどういう形でこの映画に関わられたのかとか、ちょっとその経緯をお尋ねしたいんですけれども。

茂木:前回の山形ビエンナーレのときに参加していまして、山形の鶴岡で山伏の映像を撮ったりとかで鶴岡に行ってたんですね。遠藤さんとは、偶然以前から知り合いで、私が鶴岡に来てるっていうことで呼んでくれまして、やまのこ保育園にも、撮影のついでに覗きに行ったのが最初のきっかけでした。それでその後、ビエンナーレの会期中かな、遠藤さんも見に来てくださって、私の作品を見てお話してるときに、「映像化してみようか」みたいな話が出て、それが実現できたっていう形です。

稲葉:なんかね映像になると、例えば、説明的になったりとか、それこそこういう保育園なんですよみたいなことを説明するような映像になったりそうしがちですけど、そういうのじゃない視点として捉えられてるから、やまのこ保育園というものが目指している全体像とか世界像っていうのが、すごく良く伝わりますよね。それは茂木さんは、そういうのをやっぱ感じられたからなんですか?保育園のその活動に関して。こう何て言うんですかね、こういう撮り方になったと言うとあれですけど、いろんな要素がかなり入ってますよね、映像の中に…

茂木:そもそも普段から作品作るときにそういうドキュメンタリーではあるんですけど、活動説明するような作品づくりっていうのは、普段からあんまりしてなくて、そこで感じる、その感覚で感じるっていうことを映像と音で伝えられるような作品作りと言うのを普段からやってるので、自分がそこの場に行って、そこにいる人たちと交わったときに、感じたその感覚っていうのをすごく大切にしながら、見た人がその言葉とか文字とかが入ってくると、どうしてもそういうのって強いので、惹きつけられて、なかなか自分で感じるっていうことが後ろが引っ込んでいっちゃうんですけど。そういうものを省いたときにどう感じるのかっていうのを、見た人に自由に感じてもらいたい、体験してもらいたいっていう感じですかね...。

(ひとまず、書き起こしここまで...)

子ども、保育園という場、暮らし、いのち、循環など、様々なキーワードが飛び交った濃厚なトークは、この後も続きます。

9/27 まで、山形ビエンナーレのHPで公開されていますので、ぜひ本編/トークをご覧ください。

やまのこ保育園:関連リンク


2020年10月9日金曜日 19:00〜20:30
オンライン上映会&トーク「いま保育を仕事にするということ」

やまのこ保育園の1年間を追ったドキュメンタリー映像「ちいさな惑星〜循環するわたしたち〜」のオンライン上映会&トークセッションを開催いたします。
子どもを中心にした保育を実践する東京と山形のふたつの保育園、「しぜんの国保育園(東京都町田市)」と、映像の舞台である「やまのこ保育園(山形県鶴岡市)」の園長と保育者が、日々どのようなことを考えながら、保育をつくっているのか。保育に携わる4人の視点を交わらせ、保育の現在地とこれからを探る時間です。
保育に携われている方、子どもの現場に関わっていらっしゃる方、子育て中の方、教育の場作りに関心のある学生の方など、保育や保育園という枠にとどまらず、子どもに関わることに関心のある方、ご参加ください!

開催日時:10月9日(金)19:00-20:30
参加費:無料
https://fb.me/e/1xM8saqcB


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ウェブマガジン「雛形」に、4つの特集記事がアップされています。https://www.hinagata-mag.com/feature/yamanoko


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