皮膚科
昨晩は、
結局全然眠る事ができなかった。
最近私を取り巻く憂鬱の雲は
夜だけでなく朝からやってくる。
2年半前、
就活真っ最中。
なにもかもが新鮮で、
働く大人は皆キラキラして見えた。
実現可能性よりも、
夢を持っている事が素敵だと言われ、
やる気とパワーがみなぎっていた。
しかし
最近はどうか。
顧客のクレーム対応、
社内から降りてくる厳しい売上目標。
成績=自分の価値。
「困ってる人を元気にしたい」
小さな頃に思った気持ちは、
いつしか消え、
余裕すらなくなっていた。
PM14:50
皮膚科。
平日のこの時間でもかなり混んでいる。
2.3ヶ月前、
腕に蕁麻疹が出た。
なにかのアレルギーだろう。と特に気にもしていなかったが、
最近は
お腹や胸あたりにもできるようになり、
気になって行く事にした。
こういう時の女性医師は
原因不明な病状に加えて
男性医師に体を見られるのか。。と言った
W不安を感じなくて良い。
受付を済まし、
ソファに座る。
おばあちゃんの家にあるような
重くて分厚い木のドア。
立派な銅の取っ手が付いていて、
張り紙が貼ってある。
「急にドアが開いて危険です!
ドアの側で遊ばせないでください」
ぼーっと張り紙を見ていると、
がちゃっという音共に勢いよく開くドア。
中から
横で大きく三つ編みをした
女性医師らしき人が数枚のカルテを持って出てきた。
「林さん」
はい。という声で
隣に座っている赤ちゃんを抱っこした女性が 立ち上がる。
すかさず、
三つ編みの女性が荷物を持ち、
いいですよ、とニコッとドアを開け、患者の女性が中に入る。
こういう事なんだよなぁ。
ふと、自分の余裕のなさを痛感する。
反発心の中に潜む劣等感。
人との接触を避け、
傍若無人にふるまう。
まるで、言葉を覚えて行動範囲が広がった
3歳児のようだ。
「島さん」
はっとして立ち上がり、
診察室へと向かう。