憧憬

一目見ただけでは、忘れてしまうような子だった。強烈な個性があるわけでもない普通の女の子、俺が彼女に持った印象はそれだけだった。知り合いが参加している劇団に、脚本を書いてくれないかと、依頼されて、その劇団に見学に行ったときの印象だった。演劇が好きではあるんだろう。だが、どこか現実に屈してしまったように見えていた。屈折した人間。俺が、彼女の演技を見て思った印象だ。
俺にどこか似ている。俺は、諦めきれない人間だ。屈折した人間だと評されることは多い。ただ、夢が諦めきれない。私の表現を全ての人に見てもらいたいと、思い続け夢を抱き続けている。
諦めたように見える彼女、諦めきれずアルバイトを続けながら、フリーの脚本家として、知り合いの劇団にしがみつき縋る俺。似ているように見えた、だから彼女が一番輝く役を、作り上げた。これを、理想通りに演じてくれ。俺はそれを見てみたい。普通の女の子が、輝くところを見てみたいんだ。俺はいつの間にか、彼女を目で追うようになっていた。へらへらと笑う姿に、俺があんな風に笑ったのはいつだったかと、思いを馳せる。彼女は、苦しみながらも、負けてたまるかとくらいついてくる。嫌だろうこんな役をするのは。きっとそうだ。そうなるようにしたのだから。辛さの先に、負けず嫌いに見える彼女ならば、輝く道を見つけるそう信じてみたかった。
俺は、思いあがりたかったんだ。俺の脚本で、普通の女の子を輝かせることが出来るのだと言いたかったんだ。彼女は、俺の想像を超えた。普通の女の子、あれは俺にとっては確かに偶像だった。この劇は、足掛けに過ぎない。きかっけは別の事だとわかってしまう。俺の脚本だ。それくらいのことはわかる。
ただただ悔しかった。そして、俺は自分を醜く思った。違う人種だ。全く違った。あんなにもまっすぐだった。純粋だった。清純だった。あれが、俺の偶像だ。
今度は、俺が追いついてやる。あの輝きまで。あの輝きを一層引き立てるために。負けてなんかいられない。あの、輝いてやると目を輝かせ、客席の女の子を見つめる一人の少女に、俺の憧憬すべき偶像に。



どうも初めまして。お久しぶりです。髙木 春楡です。
今回、短編を書き終え、またnoteを書いております。上にあるのは、今回の短編「憧憬」に登場する1人のキャラ(名前も出てなければ、登場すると言っていいのかも謎です)視点のサイドストーリーとなっております。
諦めの悪い男が、1人の偶像を見つけた話ですね。
今回のストーリーとは、正直関係ありません。私の中で、今回の作品は、誰しもが輝けるということを書いたのですが、正直個人的な小説でしかないので、大層な思想とかないです。ない感じの小説です。想いだけの小説なので、届けたい想いとか聞かれると、愛ですとしか答えられないですね。
私は、個人的な愛を小説に乗せていることが多い。それを、皆に読んで欲しい。皆に共感してもらいたいと思っているのだから、大層なエゴイストですよね。
でも、それでいいと思ってます。私の想いは、純粋だと信じてやまないものですから。永遠の愛も、不変の想いもあると思っています。変わらない想いが好きです。だから、変わらないと知って、心持ちが変わるそんなことがあってもいいなと思いながら、最後は書いていました。
珍しく、主人公が女性女の子なので、今までにはない文体になっているのではないでしょうか。
ぜひ読んでいただければ幸いです。

ここまで読んでくださりありがとうございます。
私のくだらない話はこの辺で、偶像シリーズ3作目「憧憬」是非に読んでみてください。それではまた、近況報告で会いましょう。

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