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渾然一体となる客と主人の関係性

誰もが意見を発信できる現代社会には、低俗な批評家がのさばっている。何よりも問題視すべき点は、多数派の意見が専門家の意見よりも正当性を持つという風潮であると考える。

客の意見が膨れ上がった社会では、数に従属しなければならない。

心身の成長期にそんな社会に生きた我々は、見えない客に目をつけられないように、同じような意見を発信し、同じような服を着て、同じような建築作品を量産することが社会を生きる処世術として習慣化されているのである。

今の格闘技界でプロの興行よりも素人の喧嘩に毛が生えたような興行の方が視聴数を稼いでいること、若者が映画・テレビよりも素人がつくるYouTubeを見ているという社会に対して不安を持たなければならない。理由は客が価値基準の判断を大衆に委ねることに慣れてしまい、プロのつくったものとアマチュアがつくったものの区別がつかなくなっているのからである。

そんな客に近未来の建築家が媚びて、ファスト建築のようなものが立ち並んだ町は地獄絵図である。

建築家は大衆に抗い客と主の関係を保たなければならないと考える。

現代建築には洗練された静けさを感じる。これがデザインの成熟の賜物であるならば文句はないが、客と主の立場反転現象の初期症状であるならば危機感を抱かざるを得ない。

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