「やりがい搾取」言葉の危うさ
「雇う側が「やりがい」を強く意識させることで、働き手が低賃金や長時間労働といった環境に順応してしまう。私はこの構図を「やりがい搾取」と名づけました。」
(東京大学教授 本田由紀氏 朝日新聞記事より)
最近よく聞くやりがい搾取。
「やりがい」を盾に、不当な労働条件が横行しているのは悲しいことです。
しかし、この言葉がマウンティングに使われる場面にも遭遇しませんか?
今日は、やりがい搾取と報酬と動機付けについて
1.「それってやりがい搾取じゃない?」
ベンチャーで人事部の立ち上げメンバーとして、「そして20代で役職に就くためにハードに仕事をしたい」と思っていた私には、よくこういう言葉が投げかけられました。
「土日も出勤なんてかわいそう」
「そんなに残業して何になるの?」
「それほど給料もよくないのに、いいように使われているだけじゃん」
私を心配する言葉のようにも聞こえますが、
「私は、機会や経験に価値を感じているから、そう思っていない」と話しても、毎回同じ言葉をかけてくる人がいました。
辛かったな。自分の仕事を馬鹿にされているようで悲しかったです。
「労働条件の良いところに就職するのが勝ち組、しないのは情弱」
「やりがいばかりを書く求人票はブラック」
こんな情報にも、当時はちょっと傷つきました。
2.トータル・リワードという切り口
近年はトータル・リワードという報酬の考え方で、報酬には2種類あると言われるようになりました。
金銭的報酬…直接的報酬(給与、賞与)、間接的報酬(福利厚生社会保障)
非金銭的報酬…仕事報酬(やりがい、仕事の重要性など)、所属報酬(対人関係、経営ビジョン)
金銭的報酬だけではなく、非金銭的報酬も含めて、報酬として考え、社員の動機付け(モチベーション向上)を考えようねという考え方です。
3.マクレランドの欲求理論
達成動機…目標達成へ動機を持つ人
親和動機…良好な対人関係を保ちたい人
権力動機…他者への影響力を持ちたい(責任感がある)人
回避動機…失敗、間違いを避けたい人
ワーママはる#680 みんな大好き動機づけ あなたはどんな動機で動く?
マクレランド氏によって1976年に発表された「マクレランドの欲求理論における欲求のひとつである達成欲求」は、その後アメリカ国務省の委託を受けた研究へと発展し、優秀な人材の行動特性を表す要素として「コンピテンシー」と名付けられたそうです。
参考:https://mitsucari.com/blog/desire_theory/
まとめ
トータル・リワード、
マクレランドの欲求理論(達成欲求)
ここから考えたことは、「やりがい搾取」という言葉は相手の価値観を理解してから使ったほうが良いということ。
冒頭の事例で私が傷ついたのは、
私は達成欲求を大事にするタイプで、さらに非金銭的報酬として「やりがい」や「会社へのロイヤリティ」を強く感じていたからなのだと思います。
同じような状況で、「やりがい搾取」と感じる人もいるのは事実ですが、
見極めるポイントは
・本人はやりがいではない対価を求めている
・支払われるべき対価が支払われていない
かなと思います。
やりがい搾取という言葉がイメージだけで先行し、自分の会社よりも福利厚生の少ない会社に勤める人に対して馬鹿にしたようにこの言葉が使われていることもあるのは悲しいことです。
やりがいを対価に求めるのは馬鹿げたことなのか。
私はそうは思いません。
人はそれぞれに違う欲求や達成感を持っており、そのどれもに優劣はなく、自分に合っているかどうかが大切かなと思います。
また、効率良い仕事の探し方、割りのいい仕事、福利厚生の良い会社への就職をゴールとする前に上記のような観点でご自身のタイプを見極めてみるのもいいかもしれませんね。
同じような経験をされた方、やりがいのある仕事を目指す方のお役に立てたらうれしいなと思います。
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